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番外編⑦:プロポーズ編 ――「あなたの未来に、わたしをください‼︎ この指に通したのは、約束と覚悟」


■“リベンジ”の約束の日


その日は、何気ない春の土曜日だった。


「今日は予定、空けておいてね」


悠真は、1週間前から真希にそう伝えていた。

あの日の“未遂”から、約2か月。

ふたりの関係は変わらぬまま、けれど確かに“想いの深さ”は育っていた。


「……何を着ていこうかな」


朝、鏡の前で口紅を引きながら、真希は小さく笑う。


“今日こそ”、何かが起こる。

いや、“起こしてほしい”。

心のどこかで、そう願っている自分がいる。



■静かな湖畔のカフェにて


悠真が連れてきたのは、都心から少し離れた湖のほとりにある、小さなカフェレストラン。

テラス席からは、水面がゆらゆらと光を反射していた。


「こんな場所、いつ見つけたの?」


「去年の秋に、ひとりで来て……“誰かと来たいな”って思った」


“誰か”が、彼女であることは言うまでもない。


ランチを終えたあと、ふたりはテラスのベンチでコーヒーを飲みながら、並んで座っていた。


風が静かに吹いて、スカーフがふわりと舞ったその瞬間――


悠真が、そっと膝をついた。



■その言葉は、丁寧に、確かに


「真希さん」


「……え?」


「あなたが年上だからとか、上司だからとか、そんなの全部関係なくて。ただ、僕にとっては“世界でいちばん大事な人”です」


「……悠真……」


ポケットから、あの小さな箱が取り出される。

ふたが開き、中にはあの日選んだリングが、静かに収まっていた。


「真希さん。僕と結婚してください」


数秒の沈黙。

涙があふれてくるのが、自分でも止められなかった。


「……やだ、そんな顔で言わないでよ……私、今、すっごく幸せなんだから……」


「……じゃあ、OKってことでいいですか?」


「当たり前でしょ。……言わせないでよ、恥ずかしい……」


彼女が涙を浮かべながら笑った瞬間、

悠真はそっとリングを彼女の薬指に通した。


ぴったりと収まったそれを見て、ふたりは顔を見合わせる。


「……やっと言えた」


「ううん。……ずっと前から、聞こえてたよ。

あなたがくれる仕草や優しさの全部が、“プロポーズ”だった」



■“秘密の恋”が、“未来の約束”になる日


その帰り道。

ふたりはいつものように、人目を避けることもせず、指を絡めて歩いた。


誰かに見られることも、もしかしたらあるかもしれない。

でも、もう怖くなかった。


この手を、放さないと誓ったから。


この先、まだ乗り越えるべきものは多い。

けれどそれでも――


ふたりなら、大丈夫だと思えた。



■そして、その夜


真希の部屋。

指輪を外すことなくシャワーを終えたあと、彼女はふと悠真の背に手を伸ばす。


「ねえ……今夜だけは、“奥さんになる予定の人”って呼んでくれる?」


「……うん」


そう言って彼は、彼女の手を取った。


「じゃあ、改めて――

“僕の奥さんになってくれて、ありがとう”」


「……うん。こちらこそ、“旦那さん”」


肌が重なったその夜は、

言葉よりも、永遠の誓いを深く刻む、ふたりだけの“はじまりの夜”となった。


■帰り道、“夫婦未満”のふたり


「ふふっ……なんか、指に違和感がある。重いってわけじゃないんだけど」


「でも似合ってるよ。……すごく」


車中、薬指のリングを見つめながら、真希が照れたように笑う。


隣の悠真も、いつもの運転席ではない。

助手席の彼女をちらちらと見ては、胸がいっぱいで言葉にならない。


(これから、ずっと一緒にいるんだ)


「……不思議ね。

“結婚してください”ってたった一言なのに、

こんなに世界が変わるなんて」


「変わったのは世界じゃなくて……

僕たちが、その“覚悟”を決めたから、だと思う」


真希はその言葉に、そっと微笑んだ。


「ほんと……ずるいくらい、ちゃんと大人になったわね、あなた」



■“婚約初夜”、ふたりだけの誓い


部屋に入った瞬間、真希はコートを脱いでふと後ろを向いた。


「ねえ。……今日くらい、ちゃんとした言葉で抱きしめてくれない?」


悠真は、迷わず彼女を背後から抱き締めた。


「……俺の奥さんになってくれて、本当にありがとう」


「まだなってないわよ、法的には」


「じゃあ、なる予定の“僕の妻”へ」


ぎゅっと強く抱きしめるその腕に、彼女は体を預ける。

お互いの体温が、触れるたびに重なっていく。


夜、ベッドの中で。


「……この指輪さえあれば、もうあなたは私から逃げられないのよ?」


「逃げません。むしろずっと、捕まえててほしい」


「ふふ……かわいい」


灯りを消す前に、ふたりはもう一度キスを交わした。

静かで、確かで、あの日の“未遂”とは違う、しっかりと結ばれた夜だった。



■朝焼けと、ふたりの未来


翌朝。

カーテンの隙間から差し込む朝陽が、真希の指に光を落としていた。


「やっぱり……この指輪、ずっと見てられるな……」


「変なフェチ目覚めてない? まさか“指輪フェチ”?」


「いや、“真希さんの奥さんフェチ”かも」


「……バカ」


そう言いながら、微笑んだ真希の表情には、

どこか**“不安の抜けた女性”の顔**があった。


(この人と、なら――きっと、大丈夫)



■まだ“秘密の婚約者”だけど


その週の月曜日。

真希は通常通り出社し、

いつもの“クールな課長”の顔を戻していた。


しかし――


薬指のリングだけは、

控えめなデザインながら、確かに光っていた。


(誰にも気づかれないかもしれない。でもそれでいい)


(これは、“私とあなただけの誓い”だから)



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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