第3話「PTA会議で、私は“母親役”です……バレたら死ぬ」
ある日、悠真が何気なく言った。
「そういえば、来週PTAあるらしいよ。進路説明会も兼ねてるって」
その瞬間、真希の顔から血の気が引いた。
「……え? ちょ、待って。
それって、親が行かなきゃいけないやつ……?」
「うん。俺、両親いないし、親戚もいないし。……だから、お願い?」
悠真は無邪気に笑った。
――この状況でその笑顔はズルい。
「……この歳で、PTAに参加する羽目になるなんて……」
真希は天を仰いだ。
•
◆ PTA会議当日。
真希はスーツ姿で学校に向かう。
(よりによって平日の昼間に有給を取って)
校門前で、すでに集まっていたお母様方から、
ざわざわとした視線が集まる。
「あら、悠真くんのお母さん? ……若いわねぇ……」
「もしかして再婚後のお母様?」
「えっ、じゃあ産んだの20歳そこそこじゃない!?」
真希(心の声)
――違う、違うから!! 産んでないし、再婚もしてないし、
そもそも母親ですらないから!!!!
必死に笑顔を貼り付けて乗り切る真希。
でも、自己紹介タイムで地獄は訪れた。
「では、○年△組・高槻悠真くんのお母さま、お願いします」
……来た。地獄のターン。
真希「え、えっと……春日井、もとい、高槻真希です……。
い、一応、母親代わりを……やっております……」
一同「「「代わりって……?」」」
空気、フリーズ。
先生「えーと、複雑なご家庭の事情が……あるようで……」
(気を遣ったつもりのフォローが余計に痛い)
真希(心の声)
――もう帰りたい。ビール飲みたい。今すぐ現実逃避したい……
•
やっとの思いで会議を終え、帰宅した真希は
玄関で悠真に言った。
「……二度とPTAなんか行くもんか」
悠真「え、ありがとう。俺、親いないから、マジ助かった」
真希「……だからそれ、笑顔で言われると心が痛むんだけど」
でも、その痛みを抱えてでも、彼の“居場所”になりたいと思ってしまう。
そんな自分を、誰よりも真希自身がまだ受け入れられずにいた。
•
夜。
キッチンで洗い物をしている真希の背後から、
悠真がふっと抱きついてきた。
「今日はありがとな、“お母さん”」
「やめなさい、地雷ワード」
「じゃあ……ありがとな、“真希”」
その声に、思わず微笑んでしまう。
真希「……もう、しょうがないわね」
そしてそっと、またふたりだけのキスを交わすのだった。
――世間の目は痛いけど、
この気持ちは、誰にも否定させない。
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