第7話「大人の休日デート――誰の目もない世界で、あなたと手を繋ぐ」
◆ 【土曜の朝、ふたりの“日常”が始まる】
「ねぇ悠真、今日は久しぶりにデート、行かない?」
朝食のコーヒーを口にしながら、真希がそう言った。
悠真は、一瞬きょとんとして、
それから、ゆっくりと笑顔を浮かべる。
「……真希のほうから誘ってくれるなんて、珍しい」
「たまには、“年上彼女”としてリードしようかと思って」
「じゃあ、俺は“年下彼氏”として甘え倒すわ」
笑い合うふたり。
どこにでもある恋人同士の会話――
……のはずなのに、
ふたりにとっては、それが「奇跡」だった。
社会の壁を越え、
年齢の差を越えて、
ようやく手に入れた“普通の一日”。
今日は、特別な記念日でもない。
でも、「ふたりが、恋人として街を歩ける日」だった。
•
◆ 【代官山・静かな街並みを歩く】
人混みを避けて、少し落ち着いた代官山へ。
休日のブランチは、カフェのテラス席で。
真希はナチュラルなワンピースに薄いカーディガン、
悠真はシャツとチノパンに、眼鏡をかけて“知的風”演出。
どこから見ても――
「ちょっと歳の離れたカップル」。
いつも職場では“先輩と後輩”、
家では“恋人だけど秘密”。
でも今日だけは、
誰の目も気にせず、
手を繋いで歩いていい。
•
◆ 【すれ違う視線、微妙な空気】
だが、道ですれ違うカップルが
ちらりとふたりを見て、何かを囁き合う。
「……歳の差、すごくない?」
「親子かと思った……」
真希の足が止まる。
手を引いていた指先が、すっと緩んだ。
「……ごめん。やっぱり、私たち、
こうして歩くの……目立つよね」
悠真は、立ち止まった彼女の手を
ぎゅっと握り直した。
「俺は、真希と歩きたいよ。
たとえ、誰にどう見られたって」
「……でも……」
「真希が気にするなら、俺が堂々とする。
だから、ちゃんと手、繋いでて」
彼の声は静かで、でも力強かった。
真希は、
その手を握り返した。
「……ありがとう。
じゃあ、甘えさせてもらうわ。彼氏くん」
•
◆ 【夕暮れ、誰もいない展望台】
日が傾き始めた頃、
ふたりは静かな展望スペースに立ち寄った。
眼下に広がる街、遠くに沈む太陽。
「……こうして景色見るとさ、
真希って“俺の人生の景色”の一部なんだなって思う」
「……急に、詩人みたいなこと言うじゃない」
「だって、本当なんだよ」
悠真は横顔を向けて、
真希の頬にそっと手を添える。
そして、
ゆっくりと唇を重ねた。
人目のない、静かな時間。
風の音、遠くの車の音、
世界がふたりのために静かになった気がした。
•
◆ 【帰り道と、甘い囁き】
駅に向かう途中、
真希がふと呟いた。
「……もし、あと10歳若かったら。
もっと堂々と、恋人って言えたかな」
悠真は笑って首を振る。
「俺は、今の真希がいい。
10歳若くなくていい。
“今のあなた”に恋してるから」
その言葉に、
真希は心の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
•
◆ 【夜、ふたりきりの家で】
玄関を閉める音とともに、
“現実の顔”はもう必要ない。
ソファに並んで座るふたり。
言葉はもういらなかった。
悠真がそっとキスをして、
真希も、何も言わずに応える。
手が触れ、指が絡まり、
唇が何度も重なる。
「……今日は、ありがとう。
“普通の恋人”になれて、嬉しかった」
「普通じゃないから、好きなんだけどな」
ふたりは笑い、
そして、もう一度、
深く、長く、甘いキスを交わした。
夜が更けても、
愛は終わらなかった。
【つづく】
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




