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【過去編】「愛なんて、もういらないと思っていた――あの日、君に出会うまでは」



春日井真希――40歳。

世間的には、どこにでもいる独身OL。

大手企業の総務部に勤め、堅実にキャリアを積み、

後輩たちからは「春日井さん、頼りになります!」と言われる存在。


だが、彼女の心の奥には、誰にも見せない空白があった。


◆ 家族を知らない少女時代


真希は幼い頃、両親が家庭内不和で離婚。

母親に引き取られたが、母は再婚を繰り返し、

“新しいお父さん”が変わるたび、家のルールも変わった。


夜、部屋で一人、

誰にも甘えられずにこらえた涙。


「……私は、愛されなくても、生きていける」

そう思い込むことで、自分を守ってきた。


◆ 孤独な20代


社会人になっても、恋愛は上手くいかなかった。

「甘え方」が分からず、

付き合っても距離を詰めすぎて壊れるか、

逆に心を開けずに疎遠になるか――


30歳を過ぎた頃には、

周囲の友人が次々に結婚・出産し、

休日にひとりで過ごすことが当たり前になっていた。


誰にも迷惑をかけず、

誰からも期待されず、

ただ、静かに生きていけばいい。


そう思っていた。


◆ あの日、運命の出会い


そんなある日、

真希は市役所のロビーで、

迷子の少年と出会った。


雨に濡れ、

ボロボロのリュック一つで座り込んでいた少年。

――それが、当時10歳の悠真だった。


役所の職員は「児童相談所に連絡します」と事務的に言った。

誰も、彼の寂しさに気づこうとしなかった。


気づいたのは、

かつて自分も同じ場所で泣いていた、春日井真希だけだった。


真希「……ご飯、食べに行かない?」

悠真「……知らない人について行ったらダメって……」


真希「うん、正しい。でも、今だけは、信じてほしい」


◆ 始まった、偽りの家族


その日から、

“仮の保護者”としての生活が始まった。


最初は戸惑いだらけ。

料理も、学校の手続きも、何もかも初めて。


でも、悠真が笑うたび、

心が少しずつあたたかくなっていくのを感じた。


「……ああ、私、こんなふうに誰かを守りたかったんだ」


◆ 境界線の崩壊


少年が成長し、

中学生、高校生になるにつれ、

ふたりの関係は少しずつ変わっていった。


ふとした瞬間に感じる、

母親でも、保護者でもない、

“ひとりの女性”としての想い。


それは罪悪感でもあり、

でも確かに「愛情」だった。


彼もまた、

「母親」ではなく、「彼女」として

真希を見つめるようになっていった。


◆ そして今――


彼の言葉に救われ、

彼の笑顔に癒やされ、

彼の優しさに支えられて、

春日井真希は、

「もう一度、誰かを愛してもいい」と思えるようになった。


彼女は、

40歳にして初めて、

本当に“愛されること”を知った。


でも、その幸せを守るためには、

まだまだ世間と戦わなければならない。


「母親」として、

「彼女」として、

「ひとりの女性」として――


彼女の人生は、

まだ続いていく。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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