第1話「“ママ”って呼ばれても、彼女なんだからね?」
「あー……今日も終わった。さて、帰ろうか」
高槻悠真、18歳。
一見普通の男子高校生――だが、ひとつだけ普通じゃない秘密がある。
それは。
家に帰れば「40歳の彼女」が待っている、ということだ。
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彼女の名前は、春日井真希。
表向きは悠真の“母親”ということになっている。
が、実は恋人――という、世間的には完全アウトな関係。
なぜこうなったのか。理由は簡単。
――昔、親のいない悠真を引き取る形で「保護者」になった彼女と、
年月を経て本当に恋に落ちてしまったから。
……いや、説明すればするほど犯罪臭しかしない。
だが、ふたりにとっては本気の恋だった。
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悠真が玄関を開けると、
キッチンからエプロン姿の真希が顔を出した。
「おかえり、悠真。ご飯、すぐできるから待っててねー」
「いやいや、だからさ……その“母親ムーブ”、家でもやめて?」
「だって周囲にバレたら困るでしょ? 家の中でも徹底しないと」
「……俺、彼氏なんだけど?」
「はいはい、あとで甘えていいから、まずご飯よ」
悠真は心の中で「絶対おかしいよなこの家庭……」と突っ込みながらも、
その料理の香りに胃袋を掴まれて、逆らえなかった。
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食後、食器を洗う真希を眺めながら、悠真はため息をつく。
「……今日、クラスのやつらに言われたよ。
“悠真のママ、超若くてキレイじゃん!”って」
「ふふ、悪い気はしないわね。でも、罪悪感はあるけど」
「罪悪感って、俺と付き合ってること?」
「そうよ。だって、世間的には私……あなたの“お母さん”ってことになってるんだから」
「俺は全然気にしてないけどな。むしろ、堂々と“彼女”って言いたいくらい」
真希は困ったように笑った。
「その気持ちは嬉しいけど……バレたら、社会的に私は死ぬわ」
「……そん時は俺が養ってやるよ。バイトして、頑張るから」
その言葉に、真希はふっと微笑んだ。
「……ほんと、あんたはそういうとこ、ズルいのよ」
•
夜。
リビングで映画を見ていたふたり。
隣同士、ソファでぴったり寄り添い、何気なく手を重ねる。
悠真がポツリとつぶやく。
「……なあ、今だけでいいから、“ママ”じゃなくて、“真希”でいてくれない?」
真希は驚いた顔をして、それから少しだけ照れて笑った。
「……仕方ないわね、特別よ」
そう言って、そっと顔を寄せ――
「……悠真、好きよ」
小さな声と共に、優しく唇が触れ合った。
――が、次の瞬間。
「ピンポーン!」
インターホンが鳴り響く。
「え、誰!?」
「バレた!?」
ふたりは慌てて飛び上がる。
恋人モードは、また封印される――かに思えたが。
悠真は小さく笑って、もう一度囁いた。
「でもさ、こういうのも、俺たちらしいよな」
「……ほんと、もう。バカ」
そしてまた、微笑み合うふたりだった。
――バレたら人生終了。
でも、止められない恋。
彼らの、秘密の日常は続いていく。
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