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『不能』と『不運』の呪いをかけられた元剣聖の浮浪者、解呪の聖女と出会い無双する  作者: たなか
三章「人々の願いを受けて」

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八話「開戦」

2日が経過し、敵軍の到着予想日を迎えた早朝。

砦内の大広間には、各国の士官達と主要メンバーが一堂に会していた。

そんな中、エルンストが静かに、しかし大きく響き渡る独特の声で話し始める。


「これより開戦直前の最終会議を行う。だが既に決めるべき事は全て決まっている。この場は顔合わせも兼ねた指揮系統の再確認のみ執り行うものとする」


士官達の前に立つエルンストの言葉を、全員が傾聴する。


「事前に通達のあった通り、全軍の指揮はグラディオン王国副司令官、ライアスが執る」


エルンストは自身の隣に立つライアスに目を向ける。それと同時に全員の視線がライアスに集まる。


「儂は此度の戦より全軍の指揮権をライアスに委譲し、その補佐に専念する。全軍、ライアスの命令に従い行動を取るものとせよ。ライアス!」

「はっ!」


ライアスはエルンストの呼びかけに答えると、一歩前に出る。


「グラディオン王国軍副司令官、ライアスだ。王国のほぼ全軍に加え、神殿騎士団と魔導師団の指揮も執ることになるが、私は17年前の戦いでも同様の経験がある。此度の戦いにおいても確実に勝利を掴み、そして、長城東部を奪還する。以上だ。よろしく頼む」


その言葉を士官達が頷くかのように深く聞き入っていた。その場にいる皆が信頼のおける者と話す時の様な表情を浮かべていた。エルンストが頷きながら語る。


「うむ。頼むぞライアス。……そして、戦場においての神殿騎士団と魔導師団の直接の指揮は以下の2名が執る」


エルンストがそう言うと同時に、二人の人物、ゼファー、セレナが一歩前に出る。


「魔導師団副師長ゼファー、神殿騎士団副総長セレナ。王国軍の者でもその名を知らぬ者はおらぬだろう。各士官は彼らと連携を取りつつ部隊の指揮を取れ」


士官達の視線を受けながら、ゼファーが話す。


「ご紹介に預かりました、魔導師団副師長、ゼファーです。見ての通りちょっと強い魔導師です。よろしく★」


いつも通りのウインクをかますゼファー。だが士官達の表情はやや緊張があった。そのローブの色を見れば何者なのかが一目で分かるからである。初めてゼファーを見る者は皆、畏敬の念を抱く様な表情を浮かべていた。


「同じくご紹介に預かりました、神殿騎士団副総長セレナです。此度の戦いにおいては王国軍、魔導国軍を全力で支援致します。よろしくお願い申し上げます」


丁寧に頭を下げ挨拶をするセレナ。彼女を簡潔に一言で説明するなら、高貴で美麗な女性騎士。その優美な立ち振る舞いに、士官達の視線と心は奪われていた。

エルンストが二人を見ながら話す。


「うむ。ゼファー、セレナよ。貴公らの支援が我らの命運を分けると言っても過言ではない。期待しておるぞ。……そして次に、もはや改めて語る必要も無いであろう。ソフィ殿。よろしくお願いしますぞ」


その言葉と同時にソフィが一歩前に出る。


「三代目賢者ソフィです。1対1の戦いだと僕は弱いですが、軍隊同士の戦いなら活躍できると思います。頑張りますのでよろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げるソフィ。その振る舞いは年相応の女の子という感じであるが、その場にいる全員が非常に緊張した表情を浮かべていた。この場にいる者はもう既にソフィがどれだけの強さを持っているのかを知っているし、何よりもその目で見ているからだ。ここより手前の山岳砦の奪還、更にその手前の東部前線の戦闘において、ソフィは無類の強さを発揮していたのだ。そんな皆の意思を代弁するかのようにエルンストが話す。


「またあの強大な魔法の数々を見られるのかと思うと、期待と同時に恐怖すら抱いておりますよ、ソフィ殿。本当に凄まじい魔法でしたぞ」

「いえいえ、それほどでは……。でも任せてください、今度もきっと活躍します」

「うむうむ。……ソフィ殿に直接我らの指揮を取っていただく事は無いが、全員、ソフィ殿の指示は何よりも最優先とし、最速で行動を取るものとせよ」


エルンストの言葉に、皆が緊張感を持ちながら頷く。


「上位指揮官は以上となる。三国の軍が揃うのは17年ぶりだが、この通り実力のある指揮官が揃っている。足並みを揃える事は容易であろう」


皆が各々の顔を見合わせながら頷く。エルンストもまたその様子を頷きながら見守る。


「うむ。そして最後になるが……」


エルンストは一人の人物に視線を向ける。それにつられるように、士官達もその人物を注視する。

その人物、レオンは、皆の視線を受けながら一歩前に出て、語り始める。


「五代目剣聖、レオンだ。こうして再び皆と共に戦える事を誇りに思う。知っての通り俺は悪魔王に呪われた身。戦場に立つ事は叶わない。だが……強敵がいるのなら俺はこの剣を取り、必ず倒してみせると誓おう」


確かな意思を感じさせるその言葉に、誰もが期待の眼差しを向けていた。大陸全土で語られる伝説の英雄が眼の前にいるという事実に、誰もが心を躍らせていた。エルンストは満足そうな表情で話す。


「うむ。レオンよ。本当に頼もしいぞ」


場も盛り上がり、笑顔を浮かべる士官達がざわめく中、レオンの隣に立つソフィが小声で話しかける。


「リハーサルやっといてよかったね、レオン」

「ああ……、思ったよりもスラスラ喋れた。練習って大事だな……」

「剣聖って感じでかっこよかったよ」

「へへっ」



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東部最前線拠点から数キロ程離れた地点。そこには、10万の大軍勢が陣形を張っていた。

見渡す限りどこまでも続くその人々の数は、見る者を圧倒する規模であった。


軍の大半を構成するのはグラディオン王国兵士団。剣・槍・斧・弓など様々な武器を使いこなし、圧倒的パワーで戦場を制圧する。

兵士団の後列左翼にはディヴィニア神殿騎士団。神聖魔法と星天術による多種多様な回復・支援を得意とし、前線の部隊に不退の戦闘力を与える。

更に、後列右翼にはマギステルム魔導師団。魔導研究所で培われた世界中のあらゆる魔法を自在に操り、戦場を支配する。

そして、全軍が向く先には、この大軍勢よりも巨大な軍勢、魔王軍。その数20万。まだ遙か先に僅かに見える程度であったが、それでもその数はすぐに分かった。左右に延々と広がって視界の先を埋め尽くす魔物達。遠くから聞こえてくる、無数に重なり合った唸り声。地震の様に揺れ動く大地。

いよいよ、最重要拠点である長城東部奪還の戦いが始まろうとしていた。


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