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『不能』と『不運』の呪いをかけられた元剣聖の浮浪者、解呪の聖女と出会い無双する  作者: たなか
三章「人々の願いを受けて」

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七話「侵攻」

「では、改めて自己紹介をさせていただきますよ、剣聖殿。僕の名はゼファー。マギステルム魔導師団、副師長にございますとも」


大部屋にて、ゼファーが改まってレオンに向かって挨拶をしていた。腰の位置まで深く頭を下げるゼファー。そして一気に頭を引き上げると、そのまま謎のウインク。そんなに格好良くはなかった。若干引きつつも、挨拶を返すレオン。


「う、うん……ご丁寧にどうも、五代目剣聖のレオンだ。よろしく頼むよ」

「ん~お会いできて光栄ですよ、レオン殿」

「ああ、こちらこそ。……ところでゼファーさん、そのローブは……確か紫は最上位の証なんだっけ?」


レオンはゼファーのローブを見ながら尋ねる。

ゼファーは自分のローブを見ながら答える。


「ええ、そうですとも。十次元に至った者の証ですよ。ソフィちゃんと同じです。おそろっぴだね★」


ゼファーはそう言いながらソフィーに手先を向ける。

ソフィのいつも着ているローブも紫色のローブであり、同じ色合いをしていた。


「はいはい、おそろっぴおそろっぴ。……こう見えて、ゼファー先生は最高位の魔導師だよ。僕の魔法の先生で、変なとこあるけど力になってくれるよ」

「そうなのか。心強いよ、ゼファーさん」

「いやはや、剣聖殿からそう言っていただける日が来るとは、感激ですよ」


そう言いながら両手を振り回しつつ左右に謎の挙動を取り始めるゼファー。

レオンの視線がゼファーを追いかける形で左右に揺れる。


「ちなみに僕の得意分野は補助魔法。副師長なんでね、オールマイティさを求められるんですよ。戦場では色々出来ますよ」

「おおっ。頼もしい」


そこでまた、ゼファーのウインク。もちろん格好良くはないが、そのローブの色味は彼の魔導師としての才覚をこれ以上に無いくらい表していた。

次にセレナがレオンに話しかける。


「お初にお目にかかります、レオン様。ディヴィニア神殿騎士団副総長、セレナと申します。どうぞお見知り置きを」


セレナは深めに頭を下げた。そしてゆっくり顔を引き上げ、その顔をレオンに向けた。

ただの挨拶にも品のある立ち振る舞いに、レオンは感銘を受ける。


「あ、どもども。五代目剣聖のレオンです」


いつも通りあまり剣聖感の無い挨拶であったが、セレナは特に気にも止めず丁寧に挨拶を返す。


「お噂は既にお聞きしております。四天王ザガンを撃破したとの事。素晴らしい戦果に感服いたしました。あの者には我らも手を焼いておりましたが、こうも簡単に破ってしまわれるとは」

「ああ……あいつね。嫌な奴だったな~アレは。ねえ、ソフィ?」

「そうだね、レオンがいてくれて本当に助かったよ。魔法を封じられて酷い目に会ったし、お気に入りの杖もベッタリ呪いくっつけられたし。最悪だったよ」


そう言いながら、ソフィは自分の杖を見る。

セレナもその杖を見ながら話す。


「そんな事があったのですね。奴の呪いは悪魔王と同じく、武器の力すらも封じ込まれるのです。本当に厄介な相手でした。……そういえば武器といえばレオン様。そちらの聖剣、早速使いこなしておられるようですね。ザガンとの戦いにおいても役立ちましたか?」


レオンはセレナの視線を辿り、自分の腰の剣を見る。


「ん? ああ、この剣? めちゃくちゃ役立ってるよ。すごいよこの剣は」


そのまま剣を腰から引き抜き、少し上に掲げた。


「昔も似たような剣はもらったけど、この剣は特に馴染むんだよな。もしかしてこれもディヴィニアの聖剣なのか?」

「はい、聖女であるエステル様の祈りが込められた聖石を嵌め込んだ聖剣でございます」

「へー。この綺麗な石はエステルが作ったやつだったのか」

「その通りです。聖石の加護のお陰でザガンや悪魔王にも封じられる事無く戦うことが出来ます。悪魔王討伐に必ず必要な剣になります」


一同の視線が聖剣に集まる。聖石の放つ美しい光に、皆注目していた。


「昔もらった剣は17年前のクレーターでの戦いで粉々になったんだけど、この剣はそんな事にはならなそうな安心感があるよ」

「ええ。当時の剣の聖石は司祭達が用意したものでしょう。聖女不在の時代でしょうから。ですがその聖石は紛れもなく聖女の聖石。決して呪いを受ける事は無く、砕ける事もありません」

「やっぱ聖女ってすごいな。あの時にエステルがいてくれればあのまま倒せたんだけどな……」

「そればかりは仕方ありません。それもまたグラーティア様のお導きなのでしょう」


レオンは剣を腰に収める。聖石の放つ光は静かに消え、皆の視点が剣から外れる。

次にエルンストがレオンに声をかける。


「レオン、改めてだが、本当によく来てくれた。お前抜きでも勝つつもりではいたが、兵の不安は拭いきれなかった。だがお前がいればもはや勝利は間違いない」

「ああ。全力で戦うつもりだ」

「本当に頼もしいぞ、レオン。……だが、体は大丈夫なのか? 悪魔王の呪いを受けていて力を封じられていると聞いたが」

「そうだな……。一時的な解放は出来ると思うが、基本は一般人以下だ」

「ふむ……」


エルンストは手を顎に当てながら考える。


「しばらくは力を蓄えておくといい。戦場では四方八方から攻撃される。ここからの戦いは今の状態では厳しいだろう」

「ああ……。俺も今の状態で戦場に立つのは危険とは思っている。だが、四天王クラスの奴の相手なら任せてくれ」

「うむ。これから長城東部奪還に向けて進軍するが、大規模な戦闘になる。後方で待機し、必要になったら存分にその力を振るってくれ」


エルンストがそこまで話した時だった。扉の外から誰かが走ってくる音が聞こえた。

そしてそのまま勢いよく扉が開かれた。


「伝令!! 伝令ッ!!」

「どうした、何事だッ!?」

「長城東部の敵軍がこちらに向けて進軍を開始ッ!! その数20万ッ!! 到着は2日後の見込み!! 迎撃の準備を!!」

「何だとッ!?」


その場に居た全員が驚きの表情を伝令の兵士に向けた。



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東部最前線の拠点は慌ただしい雰囲気となっていた。

砦前の開けた広場を目まぐるしく動き回る兵を見ながら、ソフィが呟く。


「まさか向こうから攻めてくるとは思わなかったよ。向こうからしたら長城防衛の方が有利だと思うんだけど……」


ソフィに呟きにレオンが反応する。


「うーむ。攻めてくるタイミングが最悪だな。エステルがいないとなると厳しいな」

「そうだね。……というより、エステルがいないのを何かの方法で知ったのかな?」

「……なるほどな? でなきゃ確かに今攻めてくる必要無いしな」

「解呪のたびにレオンの居場所はバレたとしても、エステルが何してるかまでは分からないと思ってたんだけど……」

「どうやら向こうには何もかも筒抜けっぽいな」

「う~ん……」


頭をひねって考えるソフィ。


「本当は僕達も大森林に向かいたいけど……エステルを信じてこのまま軍に合流すべきか悩むね」

「そうだな……。20万なんて軍をどうやって用意したのか知らんけど、放ってはおけないよな……」


レオンもまた頭をひねって考える。


「けど低級の魔物とかが主力らしいし、俺達がいなくてもどうにかなりそうな気もしないか?」

「そうだね。上級魔族も一体しかいないみたいだし」

「ゼファーさんもセレナさんも強そうだし、勝てそうじゃないか?」

「うん。そんなにピンチでもないかもだね」


緊迫した状況下ではあるが、少しだけ余裕を含みつつ話すレオンとソフィ。

敵軍の侵攻報告の後、詳細を聞いたが数は多くともその質は低く、絶望的な状況でもなかった。

一刻も早くエステルを救いに行きたいソフィとレオンにとっては凶報の中の吉報であった。

ここまで考えると、ソフィは考えをまとめたかのように姿勢を正す。


「よし、僕達は大森林に行こうよ、レオン」

「そうだな、エステルを助けに行こう」


そこまで話したところで、砦の扉が開き、中からセレナが声をかけてきた。


「ソフィ様、レオン様。これからの予定は決まりましたか?」


ソフィはセレナの声に反応し、体をセレナに向けて答える。


「決まりました。僕達はエステルを助けに行こうと思います」

「承知しました。やはりその方がよろしいでしょう。敵の軍勢は我らにお任せください」

「一緒に戦えなくてごめんなさい、セレナさん」

「とんでもございません、ソフィ様。エステル様を何卒よろし……」


突然、セレナが何かを感じ取ったかのように動きを止めた。

レオンがその様子を見て声をかける。


「セレナさん? どうしたんです?」


だが、レオンの呼びかけには答えず、セレナは何か別の事に集中するかのように固まっていた。

レオンはソフィにも声をかけようとする。だが、ソフィも同じようであった。


「ソフィ? どうしたの二人とも。急に固まっちゃって」

「あ、いや……ごめんレオン。今ちょっと、気のせいかもしれないんだけど……」

「ん?」

「今確かに南の方で……」


ソフィは砦を囲む山の方へと視線を向けた。

その山は自分達が超えてきた山だ。

セレナもまた、その山の方を見ていた。

レオンもつられてその山へと視線を向けた時だった。

ゼファーの叫び声が砦の中から聞こえてきた。


「ソフィちゃん!! セレナ!! いるかい!? 今感じたよねえ!! これさあ!! 大魔獣死んだんじゃない!?」


叫び声と共に、ドタドタと扉の近くに駆け寄ってくるゼファー。

セレナのところまでやって来たところで、セレナがゼファーに向けて答える。


「ゼファー様も感じましたか。私もそうだと思います。南からずっと感じていた魔力波動が消えました」

「だよねえ。感じたよねえ? ソフィちゃんもどう?」

「うん。感じたよ。エステル、勝ったんだね……やっぱりすごいや」


感心した様子で山の方を見る三人。

そんな中、一人だけよく分かっていないレオンが困惑した様子で質問する。


「あ、あの、みんなどしたの? よくわからんけど、エステルが大魔獣に勝ったのがなんかわかったってこと?」


困惑しながら問いかけるレオンに、ソフィが答える。


「うん、そうだよ。大魔獣の魔力をずっと大森林から感じてたんだけど、それがたった今消えたんだよ。今消える理由なんて一つしか無いと思う。エステルが勝ったんだよ、あの大魔獣に」

「うおお……さすがエステル。軍隊でも勝てない奴に単騎で勝つとは。本当にエステルは強いな」


レオンもまた感心した様子で感嘆の声を上げる。

皆が感心する様子を見せるそんな中、セレナが喜びの表情で話す。


「やはりエステル様は素晴らしいお方。大魔獣といえどもエステル様に敵う筈が無いのです。思えばあれは私が最初にエステル様と出会った頃。あのお方の才覚は既に英雄と呼ぶにふさわしい程に達していました。あの頃わずか10歳。既にその時点で最高位の魔導師と同等の魔力を有し、誰もあのお方には適いませんでした。そんなお方が大魔獣に負ける筈ありません。そもそもエステル様の行使する神聖魔法というのは神聖魔法の中でも唯一無二の特別な物なのですが、エステル様は歴代の四人の聖女が開発した神聖魔法を全て扱える歴代最強の聖女であってですね、

再誕、聖槍、聖河、解呪の全てを扱えるという究極の」


急に早口で語り始めるセレナを見ながらゼファーが呟く。


「ま~た始まった。聖女オタクなんだからもう。……それで、ソフィちゃんどうする?」


視線をソフィに向けるゼファー。

ソフィは悩む様子も無く即答する。


「軍に合流するよ。ゼファー先生」

「オッケー。よろしくねソフィちゃん★」


謎のウインクと同時に指を鳴らすゼファー。

鳴らしながら、ゼファーはレオンにも尋ねる。


「もちろん……レオン殿も来てくださいますよね?」


ゼファーの問いに、レオンが答える。


「ああ。力を貸すよ。よろしくゼファーさん」


レオンがそう答えると、ゼファー・ソフィ・レオンの三人は頷きあった。

セレナはまだエステルについて熱く語っていた。


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