表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『不能』と『不運』の呪いをかけられた元剣聖の浮浪者、解呪の聖女と出会い無双する  作者: たなか
三章「人々の願いを受けて」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/44

二話「賢者様」

ザガンとの激闘の後、ソフィの腕の応急処置だけ済ませると、

レオンとソフィはボロボロの様相のまま、崖下を見下ろしていた。

真下に広がる大森林の一点に、きっとエステルはいるのだろう。

だがここから見えるその高さは、今すぐエステルを助けに行こう、と言える様な物ではなかった。

少なくとも、ずっと見ていると目が眩む様な感覚すら覚える程には、途方もない高低差があった。


「これじゃどうしようも無いな……」

「うん……僕もここから飛び降りて無事に済む魔法なんて今は使えないよ……」

「一応、無事なんだよな……? さっきすごい光ってたけど……?」

「多分大丈夫だと思う……」


不安気な表情を浮かべつつも、エステルの無事を願い、二人は崖を見下ろしていた。

ソフィはしゃがみ込みながら下を見下ろして言った。


「問題は……大魔獣の方だと思う……」


ソフィのその言葉に反応するように、レオンは神妙な面持ちで呟く。


「封魔の屍獣……ヴァイルハウンド……」


レオンが語る魔物の名前に対し、ソフィは考え込みながら言う。


「……けど、エステルは聖女だし、アンデッド系の魔物なら相性は良いはず……きっとどうにかしてくれるよ」

「どうにかなるものなのか……? 軍でも討伐諦めたレベルだし、何なら数百年放置されてるヤツだよ?」


そう不安気に語るレオンに、ソフィは更に考えこみながら言う。


「エステルはね、魔法を使う事に関しては天才なんだよ。賢者って言われてる僕よりも何倍も強いと思うよ」

「え、そうなのか? ソフィよりも?」

「うん。僕の得意分野は魔法を創る事だけど、使う事に関してはエステルほどじゃないよ」

「へえ……魔法にはそういう分野があるのか。他でもない賢者がそう言うなら大丈夫か」


ソフィの語る内容を聞き、感心するような表情を浮かべ始めるレオン。

そんなレオンに向けて、ソフィは少し笑みを浮かべながら語る。


「エステルってねえ、魔導師としては世界最高峰なんだよ。最初に出会ったのは5歳頃だったと思うんだけど、もうその時からすごかったよ」

「へえ~。やっぱ天才ってのは子供の頃から天才なんだねえ……ってあれ、なんか似たような話を前にも……」


自慢気に語るソフィの話を聞きながらレオンは記憶を掘り起こす。

エステルもまたソフィを天才と呼んでいたような気がした。

話をまとめると、魔法を使う天才がエステルで、魔法を創る天才がソフィであるという事だと、レオンはそう理解した。

だが、それは今は重要なことではない気もするので、一旦後にして先に進むこととした。


「まあそれなら、俺達はエステルを信じて先に行くしか無いな」

「うん。一旦最前線まで進んで、そこで最前線の軍に頼んで捜索隊を組んでもらおうよ」


ソフィのその提案に、レオンは頷きながら答える。


「そうしよう。早ければ早い程いい。ソフィ、歩けるかい?」


レオンは崖下を覗き込む体制を戻し、ソフィに顔を向けた。

ソフィもまたレオンに顔を向けて答える。


「何とか……。けど、封印のせいでこれ以上の回復が……ひとまず応急処置の魔術は使ったんだけど……」


そう言いながら、ソフィの自分の腕を見る。

先程まで折れていたソフィの腕は首から掛けた布で動かないように固定されており、見た限りでは折れてはいない様に見える。

だが肩から指先に向けて全く力が入ってるようには見えず、少なくとも正常な状態ではないのが伺えた。

時折一瞬指先が痺れる様に震えており、痛々しい様子だった。

レオンはその腕をしばらく見てから、ソフィに提案する。


「この先に中継の砦があるんだろう? そこで治療してもらえないか?」

「うん。マギステルムの魔導師も駐留してるし、直してもらえると思う」

「じゃあ、まずはそこを目標に進もうか。明日には多分着くとは思うけど……」


レオンはそう言いながら視線の先の吊り橋を見た。

吊り橋は比較的新しく、そして頑丈に作られていた。

多くの兵士が渡るために頑強に作られた事が分かる出来合いだった。

とはいえ、遥か高い位置にあるがゆえに、風に煽られ音を立てながら揺れていた。


「ソフィ……あの吊り橋、渡れるかい?」


そう聞かれたソフィは、吊り橋を眺めながら少し自信なさげに答える。


「ちょっと……怖いかも。腕……全然使えないし、それに色んなとこ殴られたせいで足も……」


ソフィはそう言いながら立ち上がると下を向き、自分の足を眺める。

ソフィの足は時折痙攣するように震えていた。

ザガンとの戦いで全身を痛めており、特に地面に投げつけられた衝撃で足腰は限界を迎えていたのだった。

普通に歩くだけならまだしも、風に揺れる吊り橋の上を歩くのは困難の様に思える状態だった。

レオンはソフィの様子を見て、優しく声を掛ける。


「大丈夫だ、俺がおぶっていくよ」

「え、そんな、悪いよ……」


ソフィは顔を上げ、暗い表情を浮かべながらレオンの顔を見上げる。

見上げた先のレオンの表情は明るかった。

ソフィを励ますかのように、明るい口調でレオンは答える。


「大丈夫大丈夫。もし橋から落っこちたら大変だろう。もう一緒に戦った仲間なんだし、気にしないでくれ」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」


二人は吊り橋の方へとゆっくり歩き出し始めた。

吊り橋に着くと、レオンはソフィの前で背中を向けてしゃがむ。


「さ、乗ってくれ、ソフィ」

「うん、おじゃまします」


ソフィがレオンの背中に跨ると、レオンはゆっくりと立ち上がる。

完全に立ち上がり、体制を整えると気合を入れるかのように少し強めの口調で言う。


「よし! 行こうか! ソフィ」

「うん。よろしくね」


ソフィを背負いながら、レオンは吊り橋の木板を踏みしめる。

最初は問題なく進めたが、少し進んだ先で橋の揺れが体に伝わり始め、体も揺れ始める。


「おおお、すごい揺れるな……」

「大丈夫? やっぱり僕降りようか?」

「大丈夫さ、すぐに慣れるよ」


更に少し進むと、やがてレオンも橋の揺れにも慣れ、安定して進み始める。

しっかりと木板を踏みしめながら前に進みつつ、ソフィに話しかける。


「ソフィ、大丈夫かい?」

「うん、大丈夫。ありがとね、レオン」

「ああ。……そう言えば、俺のこと、レオンて呼んでくれるんだな」

「あっ、これは……」


レオンに呼び名について言われ、ソフィは少し恥ずかしがるように呟く。


「その……嫌だったら戻すよ……」

「嫌なわけ無いだろう。すごい嬉しいよ。ようやく仲間って感じがするよ」

「ふふっ。じゃあ、改めて……レオン、よろしくね」

「ああ、よろしく、ソフィ」


お互いに表情は見えなかったが、お互いの柔らかな口調から信頼を感じ取ることが出来ていた。

二人は笑顔を浮かべながら橋を渡った。


渡り始めてしばらくすると、ソフィはレオンの背に乗りながら話しかけた。


「ねえ、レオン。さっきはごめんね、僕全然役に立てなくて」

「そんなことはないさ。ソフィがいたから俺は力を出せたんだ。君がいなきゃやられてたよ」


レオンはそう言いながら、先程のソフィの言葉を思い返した。

ソフィは、邪気の力に押し負ける事無く、自分を信じると強く語り、そして笑顔を向けてくれた。

あの笑顔は、レオンの心の中に深く刻み込まれていた。


「君の笑顔を守りたいと、そう思えたからこそ、俺は力を出せたんだ。生きてと言ってくれた君と一緒に生きていきたいと、俺は心の底からそう思えたんだ」


ソフィはその言葉を聞くと、顔を赤くしながら答えた。


「そ、そうなんだ。ちょっと恥ずかしいかも……。プロポーズみたいなこと急に言わないでよ……」

「……あっ! ごめん、これは変な意味じゃなくてだな……」


プロポーズみたい、と言われて、レオンもまた恥ずかしそうに下を向く。

お互いに気まずさを醸し出しながら、静寂が訪れる。

しばらくして、改めてレオンが切り出すように話し出す。


「……えっと、むしろ俺の方こそごめんな」

「え、なんでレオンが謝るのさ」

「いや、もうちょっと早く力を出してればさ……」


レオンはそう言いながら、背中に視線を向けながらソフィの腕を見た。

ソフィはレオンが自分の腕を見ていることに気付くと、諭すようにレオンに言葉を返す。


「気にしないでよ、僕が弱かっただけだから。情けない所見せちゃって悔しいよ……」

「いやいや、弱くなんてないさ。それに俺だって心が折れそうになってる所を見せちゃったしな。

しかも結局力を出せたのは一瞬だけだったし、また一般人に逆戻りだよ」


レオンは背中に背負っているソフィの足を手で支えつつ、その手に視線を向けた。

手を強く握って力を込めるが、うまく力は入らなかった。

やはり封印の呪いはまた元に戻っており、結局剣技は一切使えず身体能力も変わらず低いままだった。

軽くため息を吐くが、そこでレオンは一つの点が気にかかり、それをソフィに尋ねた。


「むしろさ、ソフィって封印の呪いがかかってるのにどうやって魔法使ってるんだ?」

「あー。えっとね、封印の呪いに対して、封印の呪いをやり返したんだよ」

「えっ……そんな事出来るもんなのか?」


レオンは少し驚きを含ませながらソフィの言葉を聞いた。

ソフィは平静な様子で語る。


「うん、僕は呪いと暗黒魔法について研究してるからね。呪いの解除はエステルじゃないと出来ないけど、逆に呪いをかける事なら出来るよ」

「おお……」

「レオンにかかってる封印の呪いと比べると次元が低いみたいだし、明日には完全に封印出来るかも?」

「すごいな、さすが賢者様」

「えへへ」


レオンに褒められ、ドヤッとし始めるソフィ。

ドヤりながら、レオンに言う。


「あと、レオンにかかってる不運の呪いだけど、同じ様に封印出来ると思う。エステルがいないと5日で復活するんでしょ?」


ソフィのその言葉を聞いた途端、レオンはハッとしたように顔を向けて答える。


「そうだよ! エステルがいないから復活するんだよ! これっ! 助けてくれソフィ!!」

「だいじょぶだいじょぶ、落ち着いて。実際に自分が封印されて分かったけど、お陰で封印をやり返すコツもわかったし、僕に任せてよ」

「ああ……! 救世主様! 賢者様! ソフィ様!」


レオンは神に祈りを捧げるかのようにソフィに言葉をかけた。

ソフィはしばらくドヤッとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ