禁じられた書
おじいちゃんは、魔法使いだ。それもここらでは結構名の知れた。
あいにく父親にも僕にも魔法使いの能力は受け継がれなかったらしい。僕はおじいちゃんといつも練習するけれど、魔法を使えたことはない。魔法の基礎は算数だというので、おじいちゃんの家から帰ると、僕は夕飯まで一人で算数ワークというのをする。よくおじいちゃんは僕の通う幼稚園にきて魔法を見せてくれる。けれど幼稚園のみんなは算数ワークをやっていない。なぜって、それは僕だけに教えてくれたおじいちゃんの秘密だから。
おじいちゃんの秘密はまだまだたくさんある。僕の好きなひかりちゃんにも言ってない秘密。例えばおじいちゃんは歯を簡単に生やしたりできる。例えばおじいちゃんは簡単に髪の毛を生やしたりできる。幼稚園に来るときは歯も生えてるし、髪の毛だってふさふさ。それらがまったくないおじいちゃんを見たことがあるのは僕だけだ。だから誰にも言わない。
だけど、僕でも知ることのできない、おじいちゃんの秘密がある。おじいちゃんの本棚の片隅に、大きな箱で見えないようにかくされた本があるのだ。
「これは、魔法界の禁じられた書じゃ。誰かおじいちゃん以外の者が開いてはいけないし、開けばこの世に大いなる災いが訪れる」
僕はそのおじいちゃんの言葉を聞くと恐怖に怯えた。その日は怖くて寝ることもできなかった。 だけど幾日かたつと、興味が沸いてきてしまい、おじいちゃんに見せてくれるように何度も頼んだ。しかしその度におじいちゃんは拒否した。それからも何度も何度も頼んでようやく
「大きくなったらいいだろう」
と言ってくれた。
そんなある日、おじいちゃんが突然死んだ。
僕は悲しくて悲しくて、ずっと泣いていた。おじいちゃんがまた魔法を見せてくれるんじゃないかと思い、おじいちゃんの部屋で泣いた。
あたりが暗くなり始め、僕は帰らなくちゃいけないと思った。ふと、禁じられた書の存在を思い出し、本棚に視線をやった。とくん、と心臓が鳴るのが聞こえた。見てもいいだろうか。もう僕を止めるおじいちゃんはいない。禁じられた書に手をおく。しかし、おじいちゃんのいっていた「大いなる災い」を思い出し、怖くなってやっぱりやめた。
次の日。やっぱり見たい気持ちを抑えられない一方で、僕は恐怖に打ち勝つこともできないでいた。幼稚園にいってひかりちゃんにそのことを告げると、じゃあ一緒に見に行こうということになった。僕とおじいちゃんだけの秘密が今度は、僕とひかりちゃんだけの秘密になる。
おじいちゃんの本棚の前にたった。
禁じられた書を取り出す。
「いくよ?」
「うん」
僕とひかりちゃんはせーの!の掛け声で、禁じられた書が納められた箱を開けた。
今思えば、その箱に七福神の絵が描かれていたことを不審に思うべきだったのかもわからない。
箱を開けた瞬間、ひかりちゃんはキャッと驚きの悲鳴をあげた。僕は衝撃のあまり言葉を失っていた。禁じられた書は、僕が初めて見たエロ本だった。
ひかりちゃんは禁じられた書を凝視する僕をビンタして帰ってしまった。大いなる災いは、本当に起きてしまったのだ。
一応ミスリードを狙ったのだけど、失敗した。




