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第七十三話 人間と魔族

「ここでございます」


 昨日、研究所でこの世界の真実を伝えると言っていたティア。連れてこられた場所は一色の実家よりも一時間半ほど離れたところにある山奥であった。見た目は何の変哲もない山の中で、特に『超文明遺産オーパーツ』らしき存在は確認できない。


「ティア。場所はここであっているということは何か仕掛けがあるということか?」

「もちろんです。少々お待ちください」


 ティアが大きな岩に触ると岩に光が走り、機械音を放ちながら突然動き始める。この岩も『超文明遺産オーパーツ』の一部ってことか。岩が動くとそこには大きな洞窟があり、ティアが中へ入ると電気がついた。明かりに照らされた洞窟内は機械化されており、未知への領域に案内されている気がした。


「ここが研究所の入口って訳ね。こんなところにあったら普通は分からないわよ」

「しかも、ティアが触れなければ開かない仕組みになっているのであろうな。一体どんな謎が待っているのか、わくわくするのだ」

「こちらにエレベーターがございます。このエレベーターで研究所の中枢までご案内いたします」


 俺たちはティアに案内されて洞窟内を進んでいく。何の材質でできてるかさえ予想できない機械の通路は、現代の技術では再現できないことを暗に知らしめているようであった。しばらく通路を歩いていくと、これまた未来の世界にあるような透明のカプセル状のエレベーターが待ち構えていた。

 未来と言っているが、実際は大昔に作られたのだから不思議なものである。エレベーターもこれまでと同様にティアが触れることで全体に光が走り、その扉が開いた。


「本当にSFの世界じゃねぇか。あたいもゾクゾクしてきたぜ」

「それでは乗ってください。中枢まではしばらく時間がかかりますのでお待ちください」


 みんなが乗ったのを確認すると、ティアがボタンを押す。下降するエレベーター。透明なエレベーターの内部からは地下にある研究所の様子が伺える。


「こいつは……すげぇな……」


 語彙力がなくなるほどの壮大な光景。そこは研究所というより、もはや地下にある街のようであった。たくさんの通路や広場、実験場と思わしき場所。到底家庭用品とは思えない機械の数々。おそらくは今までに発見されたことのない『超文明遺産オーパーツ』もあるのだろう。

 エレベータが最下層に到着する。そこまで時間は経ってないと思うのに、既に新鮮な体験が多すぎて混乱しそうだった。しかし、大事なのはここからだ。気を引き締めないとな。


「皆さま、到着しました。こちらが研究所の最下層にして中枢になります。ここには研究所の全てが詰まっております。安易に触れないようにお願いいたします」

「触れるなと言われても何もないぞ」

「……諸君、聞こえているかのぉ?」


 何もないだだっ広い空間に突如として声が響き渡り、ホログラムが出現する。それは、老年のしわが深く刻まれた白髪の研究員らしきおじいさんの姿をしていた。


「あなたが……ティアを作った方ですか?」

「そのロボットは今はティアと呼ばれておるのか。そうとも。儂がティアを作った。儂の名前はワカムラと言う。まずはここに来てくれたことを感謝するぞ。特に儂の子孫である一色くん。よくぞ来てくれた。大昔からここに来るのを待っておったぞ」

「俺の名前は一色直史と申します。ワカムラさん、俺がここへ来たのは自分のスキルの正体を知りたいからです。ワカムラさんは何か知っていますか?」

「なるほど……そう急くでない。儂も久しぶりに人と話すのだ。まずは、儂の世間話にも付き合ってもらおうかのぉ」

「世間話ってのは一体何なんだい?」

「ティアから断片的に情報を聞いておるじゃろう。この世界の成り立ちじゃよ。最初に言っておくが、ティアに与えた情報はかなり間違っておる。いや、間違った情報を教えるようにしておる。何かの誤作動で真実を暴露されるわけにはいかんかったからのぉ」


 やっぱりティアが言っていた情報には嘘が混ざっていたか。でも全てが嘘ではないはずだ。どこからどこまでが真実なのだろうか。


「その、ワカムラさん。この世界に魔族がいたというのは本当なのかしら?」

「本当じゃ。この世界には昔、魔力を持たない人間と魔力を持っている魔族がおったんじゃ。もっといえば、スキルを持たない人間とスキルを持つ魔族じゃな」

「え?」

「じゃが、人間と魔族の見た目は寸分の狂いもないくらいに似ておってな。言語も同じであったのじゃ。そのため、二つの種族間で争いが起こることはなかったんじゃ」


 昔夜月の父さんである龍道さんから聞いた話では、魔力が少ない人間と魔力が多い人間が存在したという話だったはず。いや、魔力が少ない人間が対抗するために作ったのが『超文明遺産オーパーツ』。ならば、道筋は間違っていない。


「ということは、そのことに不満を持っていた魔族がいて、魔力がないことを劣等感に思っていた人間がいた。それで魔力と言う格差を埋めるために人間が作ったのが『超文明遺産オーパーツ』ということですね?」

「左様じゃ。そこで儂を含めた何人かの人間が雷属性から電気と言うものを発見し、エネルギーにできることも発見したのじゃ。そこから長い年月をかけて、『超文明遺産オーパーツ』を発明したのじゃ。ゆえに、儂は『発明王はつめいおう』と呼ばれておる」

「『発明王』……そうか! 『冥王めいおう』と言うのは『人間で冥王・・発明王・・・』という隠語だったのであるな!」

「良く気づいたのぉ。そうじゃ、実際は『発明王』である儂を台頭に『超文明遺産オーパーツ』を発明していき、魔族と対等に渡り合えるようになったのじゃ」


 『冥王』と呼ばれる人物と共に、スキルを持った人間が台頭し始めたというのが一番の嘘だったか。実際は『超文明遺産オーパーツ』が発明された時点で二つの種族は対等になったのだろう。……じゃあなんで、スキルが人間にも現れ始めたんだ?


「ワカムラのおじいさん。それじゃあ、魔族はどうしていなくなったのさ? このまま二つの種族は本当の意味で分かりあって暮らしていったんじゃねぇのかよ?」

「何を言っておるんじゃ。魔族は滅びてはおらんぞ。魔族ならここにおるじゃろう?」

「はえっ?」

「ああ、言い忘れておったのぉ。魔族とは……魔力とスキルを持った人間のことじゃ」


 魔力とスキルを持った人間が魔族だって!?

 それじゃあ、この世界には魔族が存在しないのではなくて、人間が滅んで魔族だけが生き残ったということなのか!?

 それは……ある意味で納得できる話ではある。それなら、なぜ……。


「ちょっと待ってよ!? それってうちらが魔族ってこと!? この世界に生きているのは人間じゃなくて魔族ってこと!? それならどうして人間は滅んだのよ!?」

「簡単な話じゃ。対等になった人間と魔族。容姿もそっくりで言語も同じな二つの種族。二つの種族は恋に落ち、結婚するようになったんじゃ。これが滅んだ理由じゃ」

「滅んだ理由……まさか、人間と魔族が結婚して生まれる子供は全員魔族になるということなのであるか!?」

「君は鋭いのぉ。二つの種族間の違いは魔力とスキルの有無でしかなかった。魔力とスキルがあるものと魔力のないものが交われば、その後の世代には魔力とスキルが宿った人間しかいなくなる。それほどまでに魔力とスキルと言う存在は影響が大きかった。こうして魔族の出生率はいつしか百パーセントになり、人間は滅んでいったんじゃ」


 もはや言葉を失うとかそういうレベルじゃない。鈍器で頭を思い切り殴られたかのような衝撃であった。人間はスキルが宿るようになったわけではない。人間は魔族になってしまったというのが真実であった。


「それで……『超文明遺産オーパーツ』を使う必要がなくなったということなんですね。……正直あまりの衝撃に、どうしたらいいのか分からないですが、この話には納得できる部分があると思います」

「……どうしてワカムラさんは『超文明遺産オーパーツ』にロック機能を付けたんですか? 今では魔力と電気は共存しています。一体どうして……」

「そこなんじゃ。そこが儂がお主をここに呼んだ理由じゃよ一色」

「はい? どういうことですか?」


 不穏な空気が室内に漂う。告げられた真実。声色が変わったワカムラさん。ここに一色が呼ばれた理由。ティア……信じているぞ(中編へ続く)。 

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