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第三十四話 強者が集まる敵チーム

「それでは話の続きをするぞ。お前たち、相手チームのメンバーは確認しているな? 今回はその中でも特に要注意と判断した人間をピックアップしていこうと思う」


 競技の人選を決めた俺たちは、相手がどのような人選をするのか、何に気を付けるべきなのかということを話し合うことにした。


「まずは何といっても戦闘ランキング一位の生徒会長、天王寺帝人だ。あいつは【手札公開フルオープン】という情報を公開すればするほど強くなるという能力を持っている。逆に言えば、秘密を抱えていると本来の力を発揮できないということだ。よって、相手チームの人選に帝人は参加していない可能性が高い。作戦を立てれば、自ずと秘密にしなければならないからな。このことから単純な種目、リレーやタイヤ取り、綱引きと言った競技に出場すると思っている。決闘に出場することもほぼほぼ決まりと言っていいだろう。決闘は勝っているチームが先に決め、それを見て負けているチームが人を選べることから、夜月か俺のどっちが当たるかは分からない。お互い気を引き締めて頑張ろう」

「任せてください。もちろん、相手が天王寺先輩だろうと負けるつもりはありませんよ」

「獅子王先輩、個人的な意見ですが、相手は綱引きに上位者を入れてくるつもりはないと思います。流石に和泉先輩の【鍵職人ロックスター】が強すぎますから。それを相手も分かってて、ワンチャンを狙う作戦を立てつつも、勝ちはほぼ捨てているんじゃないかと考えてます」

「僕も八雲くんに賛成だね。今回相手は綱引きには力を入れないと思うよ。柊一さんはどう思いますか?」

「……万が一という可能性を考えたが、それもそうだな。しかし、油断をするなよ。相手の作戦としては和泉のスキルをどう崩すかに力を入れてくるはずだ。必ず勝てるような策を練っておけ」

「もちろんじゃけぇ。まあ、こちらが有利な状況にあることは変わりないけぇのぉ。しっかりと強みを生かせるように出場者全員で策を考えとくけぇ、安心せい」


 これで綱引きの対策はひとまず解決できた。しかし、相手が綱引きに上位者を使わないということはどこかの競技はより厳しくなることが想定される。しっかりと相手の動きに対応できるようにならないとな。

 また、帝人先輩は強い人ではあるが、便利なスキルで何でもできるというわけではない。三種目出るのは別の人になるだろう。その他の人でも厄介で強い人はたくさんいるから、それはそれで大変なんだけどな。


「戦闘ランキング順に紹介していく。次は戦闘ランキング六位の幸村有佐ゆきむらありさだ。幸村は【天与白羅の銀世界ホワイトファンタジー】という氷属性の使い手だ。氷属性の特徴は抑制。魔力で防げるが、一度捕まったら抜け出すのは困難だ。属性攻撃にはしっかりと気をつけろ。それに、【雪】という特殊な氷属性も扱える。【雪】の特徴は堆積。知らず知らずのうちにダメージが蓄積していくから注意しろ」

「幸村は表情の変化に乏しく何を考えているのか分かりづらい。要するに、何の種目に出るのか分からないのが一番怖いところだ。ただし、氷属性は火属性で抑えることができる。柊一がいることと、夜月がいることを考えれば決闘に出ることは考えにくい。私は防衛作戦のどちらかに出場するとは思っている」

「問題はもう一つの方よねー。有佐ちゃんの能力から考えると、障害物競走か騎馬戦の可能性が高いのだけど、意外と天岩サバイバーみたいなものが好きだったりするのよー。彼女、ゲームが好きなのー」

「ゲームのことが好きなら、天岩サバイバーに出る可能性が高いってことかよ。まー、あいつは強いだけじゃなくて頭もいいしよー、ゲームの攻略方法を理解してると思うぜー」

「障害物競走なら停止耐性のある新堂くんが、騎馬戦なら火属性使いの獅子王先輩がいるので、うちは幸村先輩が何に出るかはあまり気にしなくてもいいと思います」

「桜庭の言うとおりだな。それに、幸村と仲の良い保科の意見を信じる価値はある。幸村の対策はここまでにしておこう」


 幸村先輩はシングル。十分に警戒しないといけない相手には違いないが、他に警戒しないといけない相手は多い。それほどまでに相手チームにも強い人が集合している。

 梅雨入りの関係から、体育祭の開催は今週末の土曜日と時間が全然ない。ゆえに、今日中に人選を決めて、明日には同じ種目内の人たちと連携を組み、練習を始めないといけないのだ。


「続いてもシングルだ。戦闘ランキング九位の渡会竜希わたらいたつき。渡会のスキルは【諸行霧状ミストガーデン】。あらゆる物体を霧状にすることができる。また、自分の体も心臓付近以外であるならば霧状にすることができる。当たらなければどうということはないを体現した男と言ってもいい。そして、渡会の霧状には二種類ある。それは、何にも影響を及ぼさない普通の霧か、霧になる前の物体の性質を持った霧の二種類だ。後者の例としては金属を霧状にすると、その霧には電気が流れやすい。魔力弾を霧状にすると、その霧にはダメージ判定があるといった感じだ。幸村が防衛作戦に出るのであれば、決闘に出るのは渡会の方だろう。もう一つの種目は騎馬戦か魔力弾合戦だと推測している。三種目も競技に出るのかは怪しいところだ」

「……魔力弾合戦は適性が多い」

「宮星くんの言う通りです。魔力弾合戦に適性のある人は九頭竜くずりゅうくんを筆頭にたくさんいます。騎馬戦にも適性のある渡会くんは騎馬戦に出ることを優先させられるかもしれません」

「三種目出る可能性も捨てきれませんが、それならそれで相手に手札を使わせたということでいいんじゃありませんの? 予測できる切り札ならなおのことですわ」

「どちらの種目にも俺が出場するから、対応は俺が考えておく。分かっていると思うが、相手がどんなことをしてくるかを把握するのは大事だが、対応に回るだけでは勝てはしない。しっかりとこちらのやりたいことも考えておけ」


 獅子王さんの言うことはもっともだ。対応に回ってばかりだと、やりたいことを押し通らせてしまう。対応が完璧で無ければ、ペースをあっちに持っていかれるだろう。だから、こちらも攻めの姿勢を、やりたいことを考えるのも重要なことである。


「シングルはこれで終わりだが、十位台まではしっかりと出場種目も考えていくぞ。次は戦闘ランキング十三位の九頭竜尊くずりゅうたけるだ。九頭竜が一番厄介と言ってもいい。何なら九頭竜が三種目出る可能性があるくらいだ。九頭竜のスキルは【銃王無人バレットダンス】。いくつもの銃を体の周りに展開するスキルで、全ての銃から魔力弾を放出できる。銃の種類も普通のハンドガンだけでなく、ガトリング砲を扱うこともある。広範囲攻撃でありながら、火力もしっかりとしている厄介者だ。魔力弾合戦と妨害玉入れには必ず出場すると思っているが、防衛作戦でも重宝されるために、三種目出ると俺は思っている」

「かなり厳しいな。魔力弾合戦だとあたいが防ぐ係になるんだろうが、少しの遮蔽物じゃぶっ壊されそうだな。九頭竜先輩の相手は反町のスキルに任せた方が良さそうだぜ」

「なるほど! 俺が魔力弾合戦と妨害玉入れに出場しているのは九頭竜先輩を抑えるためですね! 任せてください!」

「妨害玉入れには俺もいるから、あんまり気負わなくていいぜ。その代わり、魔力弾合戦はてめぇにかかってるからな反町。しっかりと頑張れよー!」

「このように九頭竜の相手は反町に一任している。反町が九頭竜と相対しやすいようにサポートをしてくれ。次は戦闘ランキング十五位の京極大雅きょうごくたいがだ。京極のスキルは【深淵の侵略者アビスシャーク】。荒武と同じで、サメの力を手に入れることができる能力だ。また、特殊な能力である【侵略】を持っており、時間が経つと京極を中心にフィールドが地上から海に侵食される。水中での京極はシングルにも匹敵する。くれぐれも水中に引きずられないように注意しろ」

「力があるスキルですから、京極くんはタイヤ取りに参加しそうですね。荒武くんを加味しても五分五分と言ったところですが」

「こちらは今のところ力で押し切ることしか考えていないので、何か一つ作戦が欲しいと思います」

「夕凪と八雲の言うとおりだな。タイヤ取りの出場者は何か相手を出し抜ける作戦を考えておけ。力だけでの勝負だと五分五分の賭けになる。次は戦闘ランキング十八位の斑鳩未来いかるがみらいだ。斑鳩のスキルは【大都市メトロポリス】というものなんだが、正直良く分からん。これはそのままの意味で研究者でも解明できていない未知のスキルの一つだ。物体の兵器化、機械化、自動化、カスタマイズ、本気を出せば文明レベルを上げれるとまで言われているやばいスキルだ。本人が扱えきれていないのもあってこの順位になっているが、潜在能力的にはシングルはある。また、兵器化したパイプ椅子を愛用することから椅子使いと呼ばれていて、かなりの熟練度だ。斑鳩に関しては今は考えなくていい。しかし、斑鳩に対しては必ず上位者が対応してくれ」


 九頭竜先輩と京極先輩はよく知らないけど、斑鳩は二年生だから面識がある。訳の分からないスキルを持っているが、本人は明るくて気さくな奴だ。最下位で最弱だった俺に対しても優しく話しかけてくれたのをよく覚えている。何でもできるスキルではあるために、何をするかも分からないトリックスターだ。瞬間的な対応力が求められるだろうな。


「十位台はこれで最後になる。戦闘ランキング十九位の千石夏帆せんごくかほだ。千石のスキルは【幾万の鮮血ヴァーミリオン】。自分の血液を操って攻撃するスキルだ。武器にしたり針みたいに飛ばすことも出来る。また、相手の血液にもある程度干渉でき、出血スピードが速くなり、貧血を起こす可能性が高くなる厄介なスキルだ。自分の血を使うという性質上、自分も貧血になる可能性が高い難しいスキルではあるが、その分攻撃力が高い。長期作戦には向いていないため、防衛作戦には出場しないと考えている」

「いやー、これで一段落つきましたか。決闘と違って、考えることが多いので疲れますね」

「全くだぜ。でも、これ終わりじゃねぇからな。五十以内はまだいるし、気を付けるべき一年生も多い。これを短時間で対応しろって言うんだから、生徒会も鬼畜だぜ」

「先輩の出場する種目に上位勢が集まるかもしれませんね。その時は頑張ってください」

「あのな、不安を煽るようなことを言うんじゃねぇよ」

「そうですか。よいしょ、よいしょっと」

「屈伸煽りをするな! 煽り違いだが、どっちも不快だわ!」

「どうですか? これで少しは緊張が和らぎましたか?」

「……ったく、お前なあ」

「八雲、スピーチでも述べたが、失敗を恐れるなよ。負けたからって誰も責めはしない。お前は帝人からの任務も並行していると聞いている。お前の悪いところは厳しくてもキャパオーバーにならずに一人でこなせてしまうところにある。何かあったら周りを頼れ。自分が押し潰される前にな」

「ありがとうございます獅子王先輩。大丈夫ですよ、ちょっと震えてたかもしれませんが、緊張しているわけじゃありません。武者震いってやつですよ」

「そうか。すまない、どうやら俺の勘違いだったらしい。それなら頑張ってもらおうか。俺たち全員と一緒にな」


 帝人先輩の任務をこなしながら、体育祭でも活躍する。先輩方にお前は上位者と言われたときから、俺は期待をされていて失敗してはいけないと焦っていたか。幼馴染の夜月や経験が豊富な獅子王先輩にはばれていたな。ふぅー、落ち着け。緊張して体が強張れば本領は発揮できない。適度に体を緩めながら、頑張っていかないとな。


「ここから先は出場競技は推測せずに、相手のスキルと注意する点だけ伝えておく。まずは、戦闘ランキング二十二位の桐生撫子きりゅうなでしこだ。桐生のスキルは【式折り紙スィンガーディアン】。折り紙を式神として使役する能力だ。桐生も式神のスタイルによってできることが多く、数や攻撃手段が豊富だ。力よりからめ手寄りのスキルのため、柔軟な対応が大事になってくる。数重視の式神には数重視の魔力弾を、単体での式神には強攻撃を用いると対処しやすい」

「紙は薄っぺらくて見えづれぇこともある。死角からの攻撃には気をつけろよなー」

「次は戦闘ランキング二十五位の常盤虎徹ときわこてつだ。常盤のスキルは【造って遊ぼうコースメーカー】。土属性の使い手で、防御よりも繊細な地形づくりと物量で畳み掛ける力押しが特徴的だ」

「……生成速度も速い。要注意」

「次は戦闘ランキング二十六位の吉良綾斗きらあやとだ。吉良のスキルは【変装物質スパイマター】。魔力を色んなものに偽装することができる。偽装された魔力は耐久力以外はそのもの性質を持っている」

「その代わり、構造をよく理解していないものには偽装できないのよー。ドローンなどの操作できる機械に偽装させることが多いから、みんな気を付けてねー」

「次は戦闘ランキング二十九位の鳴海詩織なるみしおりだ。鳴海のスキルは【流動軟体スライムプライム】。スライムを使った攻撃を用いる。スライムは粘着性が強く、よく滑る。触れないように気をつけろ」

「スライムは変形して伸ばすことも出来るけぇ、気を付けるんじゃのぉ。それに、粘着性ではなく、弾力性の強いスライムも使ってくるけぇ、把握しておくんじゃ」

「次は戦闘ランキング三十八位の東乙矢あずまおとやだ。東のスキルは【潜伏する殺意ウェイトアンドシー】。物体や人に殺意を潜伏させ、こちらの注意力を散漫にさせる」

「潜伏させた殺意は人が近づくと自動で飛び出すこともあれば、東くんの任意のタイミングで飛び出すこともあります。東くん自身は気配を殺して隙を伺っているので気を付けてください」

「五十以内は最後になる。戦闘ランキング四十八位の四十万大樹しじまだいきだ。四十万のスキルは【パイオニア】。魔力弾を放ったり、殴った軌跡に攻撃判定が残っているという厄介なスキルだ」

「残せる攻撃判定には限界があり、二桁はいかないとされている。四十万の攻撃した場所をよく覚えておくんだ。また、軌跡には魔力の気配が残っているため、魔力を感知できるように気を引き締めてくれ」

「次は気を付けるべき一年生になる。最初は戦闘ランキング百六十位の楠根直人くすねなおとだ。楠根のスキルは【ちょっと一息コーヒーブレイク】。相手の行動を中断させる能力がある」

「後手に回ると逃げる行動を中断させられるからね。果敢に攻めていくのが大事になってくると思うよ」

「次は戦闘ランキング二百二十三位の大和和晴やまとかずはるだ。大和のスキルは【雨後の空を跨ぐレインボーウォーク】。空に乗ることのできる虹をかけたり、足技が強化されたりする能力だ」

「走ることも速くなりますので注意してくださいまし。基本的に蹴りに注意しておけば、魔力によるブラフには引っかからないと思いますわ」

「いよいよこれで最後だ。最後は戦闘ランキング二百五十六位の烏丸航大からすまこうだいだ。烏丸のスキルは【混ざり合う視点シャッフルウィンドウ】。自分と相手の視界を入れ替えたり、相手と他人の視界を入れ替え当たりすることができる」

「目に頼らず他の感覚に頼れば、スキルは無いに等しいです。また、誰かの視点を覗けるというのは場合によっては利点に働きます。相手のスキルを上手く使いましょう」

「ふぅー、これで終わりね。うちらの手札と相手の手札が出揃った今、また考えることが増えそうだわ」

「何もなければ残りの人選は俺が決めさせてもらう。みんな本当にご苦労だった。この体育祭、絶対に勝つぞ」


 ……本当に、よくもこれほどの強者を集められたものだな。決闘とは違い、多数対多数の戦いが基本になる。普段見つからないメリットやデメリットが浮き彫りに成るだろう。

 俺がこの体育祭で失敗したくないのは、負けることじゃない。帝人先輩が考えたこの体育祭を台無しにしたくないのだ。いつからか、あの人の期待を裏切りたくないと思ってしまったな。大丈夫、俺ならできる。俺たちならできる。体育祭も魔力遺跡の任務も絶対に成功させて見せるぜ!  

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