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流転の退紅 白の輪廻  作者: 姫時
1/1

花言葉は...

蝉の声が響く中、公民館からラジオ体操の音楽が流れれていた。第一、第二が終わると六年生がスタンプの準備をしていた。

「終わったよー 並んでー」

6年生は、低学年の見本になるように先頭でみんなと向かい合って体操しなければならない。見本となった6年生は特権が用意されていた。参加した証のスタンプを押せる。大人になったと優越感みたいなものを子供ながらに感じ、六年生は率先して見本となっていた。

自分の名字の入ったスタンプ印鑑や人気キャラクターのスタンプなど様々だ。やはり、行列ができるのは、キャラクターのスタンプである

もちろん「美紅」のスタンプ帳もキャラクターで揃っていた。

「美紅」は、物心つく頃から祖母と暮らしていた。

母親はもともと病弱であり、出産の際に他界。父親は、育児を祖母に任せたまま、蒸発していた。

帰宅すると、朝食が並んでおり、祖母が電話で話をしていた。

「OOのバス停を降りたらいいよ 待ってるよ。」

誰かに道案内をしていたようだ。電話を切り、祖母と食事を始めた。

「そーいえば 誰か来るの?」

「「白夜」から電話だよ。今からバスで来るから降りるバス停を教えたよ。」

「美紅」の従兄弟である「白夜」が、今年は1人で来るらしく、降りるバス停の確認の電話だった。

待ちに待った日である。毎年遊びに来る「白夜」と会うのが、家族の少ない「美紅」にとって夏休みの最大のイベントであった。

それを聞いた「美紅」は、

「もうすぐ着くの!?」

嬉しさのあまり、テーブルから身を乗り出してしまい、お味噌汁をこぼしてしまった。

「バスが来るまで時間があるから、行儀良く食べなさい」

と注意しながらテーブルを拭いていた。

急いで食器を片付け、お味噌汁で汚れたTシャツを脱ぎ捨て、お気に入りのワンピースに着替えた。到着まで時間があるので、祖母とバス停でどのように出迎えをするか計画を練っていた。

到着の時間が近づき、麦わら帽子を片手に玄関と向かった。水筒を差し出す祖母の手を払い、バス停へ走った。

着くと同時にバス停の小屋の影に隠れ、降りてきたところを驚かす計画であった。隠れている数分が何時間も感じるほどであった。

「白夜」が乗ってるであろうバスが近づいてきた。しかしバスは、速度を落とすことなく通り過ぎてしまった。大声をだす為、大きく吸い込んだ息が、ため息となって逃げて行った。

次のバスを待つ間に日差しは強くなり、喉が渇き始めた。水筒を受け取らなかった事を悔やんだが、その後悔は汗と一緒に流れていた。さすがに、日差しと暑さに敵わず、バス停の小屋に避難しようと立ち上がった。

「こそこそ何やってんだよ」

聞き覚えのある声に驚き振り返ると、「白夜」の笑顔と笑い声が響いた。計画通り進まず頬を膨らせたが、すぐに笑顔に変わっていた。

小屋のベンチに腰掛け、「白夜」の水筒を奪うようにお茶を飲み干した。尋ねてみると、バス停を通り過ぎ、反対のバスの待ち時間も長く、延々と続くあぜ道を歩き続けたようだ。どのバス停も同じ作りをした小屋、停留所の名前も地元の人にしか区別ができない名前のばかりである。

「ピンクの花が咲いているバス停っていてくれれば」

降りるバス停だけに、毎年ピンクの花が咲いていた。

水筒を渡そうとした祖母は、こうなる事をわかっていたかもしれない。

一息ついた二人は、祖母の家に向かった。


翌日、いつも同じようにスタンプ待ちの行列に並んだが、この場には「白夜」の姿はなかった。「白夜」の住んでいる所は、ラジオ体操の習慣がないらしい。地域での繋がりが薄くなっているのが原因のようだ。

ラジオ体操が終わり、「白夜」と朝食を楽しみに帰宅した。一緒に食べようと誘ったが、残念な返事が返ってきた。

「ゴメン、先に食べた」

ラジオ体操に行っている間に朝食を済ませていた。

「一緒に朝ごはん食べたかったのに」

「帰ってくるのが遅いんだもん」

2人の会話を聞いていた祖母は、一緒にラジオ体操に参加し、終わったら三人で朝食を取るように提案した。


「取り敢えず、今日はお弁当作るから2人で一本杉まで行って食べたら?」

家の近くに神社がありそこにご神木の一本杉がある、夏でも涼しくみんなの遊び場にもなっていた。

大人は厳しい100段近くある階段を登らなくてはない、地元の子供達はいつも駆け足で登って行った。

案の定「白夜」は1/3のところで息を切らして座り込んでいた。

「だらしないなー」

と呆れながら、「白夜」の背中を押して登り始めた。

登り切ると同時に、ご神木が厳かな雰囲気で2人を待っていたかのように立っていた。

そこから吹く風がとても心地よかった。

「なんで疲れてるの?体力無さすぎ」

「俺は頭脳派だから勉強さえできればいいんだよ」

「勉強より走る方が楽しいじゃん!」

「俺はお医者さんにならなくちゃいけないんだよ」

とおにぎりを頬張りながら話していた。


ツクツクボウシへ鳴き声が変わる時、それは別れの合図であった。

「忘れ物ない?」

「忘れ物しても大丈夫 来年も来るから」

他愛のない会話をしながらバス停へ二人で向かった。

「来年もまた一人で来るかも」

「ピンクの花が目印だからね ここのバス停しかし咲いていないから、注意して探してね!」

と何回も念を押していた。

バスに乗り一番後ろの先で手を振っていた。「紅」もバスが走り出し見えなくてなるまで手を振っていた。

夏休みが終わり、また来年も会いたいと思いながら過ごす日々が始まった。バス停の周りや「白夜」が帰っていった道沿いに「紅」の気持ちを代弁するかのように


白い花「白い彼岸花 」が咲いていた。


ピンク花が咲き、やがて白い花が咲く。

繰り返し続くと思われた... 翌年


ピンクの花「夾竹桃」は咲かなかった


目印を失ったバス停に「白夜」が降りてくることはなかった。翌年も咲くことはなく、同じく「白夜」がおりてくることもなかった。

「白夜」に会えない 会うこと諦めた時


赤い花「赤い彼岸花 」に変わっていた。


そして月日は流れ...

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