脳化計画
真社会性――アリ、ハチ、シロアリ、アブラムシのような社会。不妊階層を持ち、性的二型以外に形態が変る。堅固なヒエラルキーを持つ。
「これはいじめではない」
「いじめではない」
「では、なんであるか?」
「正しい社会の実現である」
哺乳類で唯一、真社会性を持つのはハダカデバネズミである。
「本来の自閉症とは違うが、後天的にこころを閉ざすようになるのは、脳の死滅が関係する」
身体性。
脳には身体が不可欠であるという考え方。
人工知能の新しい考え方。
いじめを受けると脳が死ぬ。
根源的な部分が死ぬ。
感情が死ぬ。
「感情はセーフティだ」
「怒りは割り込み処理のようなものだ。ネガティヴ思考を司る脳を停止させるシステムだ」
感情は脳に於ける素晴らしい機構だ。
感情の死。
同じく、根源的な部分には本能がある。本能的な感覚が説明不可能なのは、感情がそうであるのと酷似している。
正しく、
秩序だった世界の実現には、感情の削除が必要だ。
これには副次的効果がある。
ハダカデバネズミは癌になりにくい。これは、性的な興奮がないからではないかと考えられ――、
真の社会性=真社会性 ではないが、
劣等な形質の遺伝=劣等遺伝 ではないが、
だいたい、劣等な形質が優性遺伝だったなら、人類は滅びているだろう。
「人類は真の社会を目指すべき」
「これはいじめではない」
「正しい社会の実現の為の過程である」
「万事、犠牲はつきものである」
トマスモア ユートピア。
そこは、あたかもディストピアだが、しかし、現実がすでに何トピアか?
「ところで――」
「はぁ」
「やはり、暴力なのですね」
暴力革命というが、
新しい社会は常に流血と共にやってくる。
「しかし、完全な序列ある社会では暴力はない」
暴力は平和を生む。
しかし、逆に――。
暴力の起源を知っていますか?
性的に興奮しやすい年齢層――これは男性のみに当て嵌まるのですが、これは暴力事件の数が増えるのです。女性は含まれません。
つまりですね、
暴力と性は不可分なんですよ。
「獣の時代の到来だ」