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クリスマスデート 千夏の場合 ③



「お待たせしました!」



試着を終えた千夏さんが店から出てきた



「おう。サイズ合ってたか?」


「はい!大変残念なことに1ミリも大きくなってませんでした‼︎」



目元に薄らと涙を浮かべる千夏さん



「ま、まあ大きければいいってわけじゃないんだから元気出せ」


「……はい」



千夏さんは涙を拭いた



「ってもう半分過ぎてる⁉︎」



デートを始めてから約1時間半が経過。蘭さんが待つ場所まで移動する時間もあるので、大体1時間程度しか残されていなかった



「楽しいことをしていると、時間の経過って早く感じますね」


「そうだな」


「……今更ですけど、楽しんでくれてますか?」


「本当に今更だな」


「……今サッと頭の中で今日を振り返ってみたんですが……私のしたいことしかしてなくね?ってなったんですよね……」



今のところ千夏さんは何点か商品を買っているが、湊はまだ買っていない



「服買うことに関しては、遅かれ早かれいかないとと思ってたからちょうど良かったんだよ」


「でも買ってないじゃないですか」


「いいのがないだけだ。ちゃんと俺もしておきたいことだし、ちゃんと楽しんでる。心配すんな」



頭に手をポンと置き、千夏さんの頭を撫でた



「……そういうこと平気で出来るのずるいです」


「なんか言ったか?」


「……髪乱れるからやめてくださいって言ったんです!」


「おっと……そりゃ悪いな」


「もう……」



千夏さんは髪を整え直した



「湊さんはどこか行きたいところはないんですか?」


「ないな」


「ないんですか……」


「あったけど由布子さんと行ってきたから」


「ああ……本屋ですか」



由布子さんと行ったというだけで場所が分かってしまう



「ならまた私についてきてください」


「また服を見るのか?」


「いえ。映画見に行きます!」


「あと1時間半しかないぞ?」


「短編なら40分ぐらいなので見れますよ!」



♢ ♢ ♢



「…………」


「…………」



映画を見終わった2人。ただ映画の内容について話すわけでもなく、なぜか2人の間には距離が出来ていた



理由は映画の内容にあった。短編作が3.4作品出ていたのだが、放映時間的に見られるのは1作品に絞られた。その内容が……Hなもの。いわゆる官能映画と呼ばれるものだった



私も一緒に入場して(幽霊なので無料)映画を見たが……内容はとても面白かった。演出も凝っていた。ただ過激すぎた

普通のカップル同士で入っても、この2人と同じ感じになりそうなほど過激なものだった



「そ、そろそろ蘭の所に向かいましょうか‼︎」


「お、おう……」



まさか最後の最後で距離が開いてしまうとは……



♢ ♢ ♢



「……」


「……」



あれから2人に会話はない。お互いに気まずくて話題を出せないのだろう



「あ……ここ右です」


「そっち左だけど?」


「あ……間違えました」



映画前と今で様子が違い過ぎる2人。倦怠期の夫婦よりも空気が重い



「……なあ。この道で合ってるのか?」


「私が間違うはずないです」


「でもさ……」



湊はその場で立ち止まった。そして千夏さんは周りを見渡した



「あっ……違っ……その……」



ここは街でも有名なスポットの1つ。通称『ラブホ通り』。この道沿いの建物はそういう類の建物がずらりと並んでいる場所だ



「ち、違うんですわ⁉︎あの映画見てムラムラしたからここにきたわけじゃないっす!ここが通り道だからってだけでごわす!」


「そ、そうか……とりあえず落ち着いて語尾直そうな?」



顔を押さえる千夏さん。これは私が乗っ取ってここに迷い込ませたわけではなく、自身の足でここに足を踏み入れていた



今回のデートはなるべく邪魔しないと決めた。それに今ラブホに入られたら蘭さんとのデートが無くなってしまう

最後の番ならやっていたかもしれないけど



「はぁ……あんなの見るべきじゃなかったなぁ……」


「内容は面白かったんだけどな」


「……あんなにガチなやつだとは思いませんでした」



映画の話題を出しつつ、『ラブホ通り』から出る2人



「もうちょっと早く映画の案が出てたらホラーとか見れたんだけどな」


「ホラーなんてもっと嫌ですよ⁉︎」


「苦手なのか?」


「幽霊なんて見えたら心臓止まることは確実です‼︎」



……危なかった。私が千夏さんに能力で話しかけていたら大惨事になっていた所だった



「でも暗いところは好きです。真っ暗は嫌いですが、暗い中に光が少しでもあると綺麗じゃないですか?」


「今みたいにか?」



真冬の17時半過ぎはもう外は真っ暗だ。だがお店の光や街灯で街は明るく照らされる

ましてや今日はクリスマス。そこにイルミネーションという要素も追加されている



「はい……イルミネーション綺麗ですよね。幻想的です」


「いつもの雰囲気と変わって良いよな。俺も好きだよ」


「イルミネーション見る機会とか多かったんですか?」


「全くだよ。ハロウィンもクリスマスも仕事終わったらすぐ家に帰ってたし」


「李華さんが居た時はよく見ていたんじゃないですか?」


「李華はイルミネーションとか興味ないからな。そもそもこういう1年に1度の祝い事みたいなのが嫌いなんだよ」


「そうなんですか……珍しいですね。何か嫌う理由があったんですか?」


「さあ?教えてくれなかったんだよ」


「へー……」


「でもなんでなんだろうな?今更ながら気になったよ」


「聞けるなら聞いてみたいですね」


「……だな」



2人はイルミネーションを楽しみながら、蘭さんの待つ場所へと歩いていった



♢ ♢ ♢



「着きましたよ」



2人は住宅街のとある家の前に到着した



「まさか月代家とは……」



ここは私の実家。そして今現在、蘭さんが居候させてもらっている場所だ



「着きましたのね」



蘭さんが玄関から2人を出迎えた



「ちょっと蘭⁉︎そんな薄着で外出る気なの⁉︎」



蘭さんは冬の夜を出歩くにはあまりに心もとない服装をしていた



「外に出ませんわ。私のデート場所はここですので」


「家でするのか⁉︎」


「いわゆるお家デートですわ」


「アンタの家じゃないじゃん‼︎」



蘭さんのデート場所は家(友達の)だった



「……何するか知らないけど、とりあえず約束通り湊さんは届けたから。湊さん。今日はありがとうございました」


「おう。楽しかったよ」


「私もです!また服選び付き合ってくれますか?」


「休みが合えばな」


「はい!じゃあ湊さん。また明日ーー」


「まだ帰らないでもらえます?」


「えっ?」



帰ろうとした千夏さんを蘭さんは引き止めた



「千夏さんは2階で待っててもらいますわ」


「なんで⁉︎」


「理由は後でわかりますわ。あ、でも私と湊さんの邪魔しには来ないでくださいまし」


「じゃあなんで呼び止めるのよ……」


「2階に初芽もいますし、後から由布子も合流しますわ」


「由布子も来るの⁉︎」


「はい質問は終了。さっさと上行って静かに待っててくださいまし」


「ちょ、ちょっと⁉︎」



千夏さんは蘭さんに腕を引かれて2階へと上がっていった

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