クリスマスデート 千夏の場合 ②
「買ってきたぞ」
千夏さんが持ってきた物と同様の商品を買った湊
「一つずつ同時に食べて、当たったら自己申告で」
「誤魔化すなよ?」
「しませんよ!」
パッケージを開封し、2人とも一粒ガムを選んで手に取った
「せーの」
千夏の掛け声で口にガムを含んだ
「あ、セーフです」
「……多分セーフ」
「なんですか多分って」
「元の味がどうかわからんから、これがハズレかも怪しいんだよ」
2つ目を手にする2人
「せーの」
もう一度千夏さんの掛け声で口にガムを含んだ
「これもセーフ!」
「あ、これさっきのハズレだわ」
元の味を知った湊は1つ目のガムがハズレだったことに気がついた
「じゃあ私の勝ちということですね⁉︎」
「そうなるな」
「やったー‼︎」
勝利したのは千夏さん。運勝負なので湊も文句は言えない
「じゃあ約束通り1つ言うことを聞いてもらいます!」
「しゃーないな」
「ということでついてきてください」
「もう決まってるのか?」
「決めてたんですよ。前日から!」
千夏さんは湊の手を引っ張って目的地へと歩き出した
♢ ♢ ♢
「お、おい……ここは……」
「拒否権はないんですから腹括ってください」
千夏さんが連れてきたのは女性用の下着売り場。以前蘭さんと湊がショッピングデートに来た際、千夏さんが友達と寄った店だ
「私の下着を3着選んでください。あ、高すぎるものと適当に選ぶのは無しですよ?」
「なんで俺に選ばせるんだよ……」
「そりゃあ好きな人の選んだ物着けたいし、これで湊さんの趣味もわかりますから」
「……はぁ。軽い気持ちで勝負なんて受けるんじゃなかったな」
湊は諦めたのか、そのまま千夏さんに付いて店へと入った
「とりあえず気になった物を渡してください」
「気になった物って言われてもな……じゃあこれ」
「サラシじゃないですか⁉︎普通のやつにしてください!」
「てかやっぱりやめないか?恥ずかしいんだが……」
「ダメです!それに恥ずかしいって言ってますが、湊さん以外にも何人か居てますから」
周りを見ると確かにお店の中には男性もいた。ただし共通して隣には彼女らしき人物がいる
「単独で居たら確かにおかしな人に見えますけど、周りからはカップルに見えてるでしょうし問題ないですよ!」
「……そんなもんかねぇ」
居づらいのは分かるが、負けた湊が悪い。……ということにしておこう
「あ!これ可愛いー‼︎こっちもいいなぁ……湊さん!湊さん的にどっちが好きですか?」
千夏さんはシンプルな赤と青の物を見せて、湊に選ぶように促した
「……青だな」
「青了解!」
千夏さんはショッピングカートに港が選んだ下着を入れた
「即決だな」
「だから湊さんの選んだやつにするって言ったじゃないですか。ほらあと2つですよ!今みたいに2択にしませんから自分で見つけて選んでください!」
「えぇ……」
湊はあまり周りをキョロキョロせず、近場にある商品に目を通す
「どれでもいいんだけど」
「好みぐらいあるでしょ!」
「うーん……」
「……じゃあ李華さんが着けてた下着思い返して見て下さい。その中で良かった物とかあるでしょ?」
突然名前を出されてドキッとした……だがもう7年前の話。そうそう思い出せる年月じゃない
「何着てても似合ってたからなぁ……」
「惚気るなバカー‼︎」
……なんだか下着姿を思い返されるのはすっごい恥ずかしい
「……明るい色と暗い色ならどっちが好きですか?」
「暗い系だな」
「じゃあ黒のやつともう1着青のやつにしましょう。これだけ絞ったんですからいい加減選んでくださいよ?」
「……」
湊は真剣な表情で選び始めた。多分ぬらりくらりとかわすのは無理だと悟ったのだろう
「じゃあこれ。あとこれ」
湊は青と黒を1着ずつ千夏に渡した
「……シンプルなやつ2つ選びましたね。もっと面積ギリギリなやつ選んでくれても良かったんですよ?」
「俺の趣味で選べって言っただろ。俺にその趣味はない」
「本当かなー?ジェントルマンぶってるだけじゃないんですかー?」
「そんなことしてねーよ」
「ふーん……ならそれを証明してもらいましょうか」
「証明?」
千夏さんは近場にあったマイクロビキニのような下着を手に取って湊の手を引いた
「今から着替えるんで見てください」
「はぁ⁉︎」
「その趣味はないんですよね?じゃあ照れずに見れますよね?」
「言ってることめちゃくちゃだぞ⁉︎それは話が違うだろ!」
「違いません。いいからついてきてください」
千夏さんが向かっているのはフィッティングルームのようだ
「すいません!これ試着したいんですけど……」
「こちらですね。1番左が空いているのでそこをご利用ください」
「ありがとうございます!」
「お、おい……」
千夏さんはそのまま湊を連れてフィッティングスペースへと入ろうとしたが……
「申し訳ありませんお客様。お連れの男性はこれから先に進ませることは出来ません」
「えっ⁉︎なんで⁉︎」
「他のお客様が見知らぬ男性に下着姿を見られることになったりしてしまわないためです」
理由が至極真っ当な物だった
「確かに……それは仕方ないですね」
千夏さんは湊の手を離した
「1着だけ試着してきます。少し外で待っててください」
「お、おう」
湊は店のルールに救われた
千夏さんはそのままフィッティングルームに入り、湊の選んだ黒の下着を試着した
「……良かったぁ」
力が抜けたように項垂れる千夏さん。どうやら勢いで出た言葉で、本当に見せることにならなくてホッとしているようだ
「ナイスガッツでしたよ。千夏さん」
今日一の本気を見せてもらった気がする




