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クリスマスデート 由布子の場合 ③



レースゲーム、音ゲー。メダルゲームにエアホッケーなどなど一通り遊び尽くした2人。

片手で数えられる程度しか入ったことのないと言っていた由布子さん的に新鮮だったのか、思いの外はしゃいでいた



お互い楽しそうだったし、距離も縮まったから良かったのだが……不満点をあげるとすればプリクラを撮らなかったことだ



男女でゲーセンに入ったら、プリクラは絶対に撮らないといけないという法律をなぜ作らなかったのか?政治家達は何をやっているのか?



……作るわけないか。そんな横暴な法律



残念ながらプリクラを2人で撮るという願いは果たされなかった。……湊が自分の写真を撮ることが嫌いじゃなければ



当然、プリクラを撮る気配のなかった2人。私がいつものように由布子さんの身体を乗っ取って、「プリクラ撮りませんか?」と尋ねたのだが、「ごめん……自撮りするのは好きじゃないんだ」と断っていた



昔からそうだった。学校行事などは、先生達が強引に撮るので何枚か写真はあるが、プライベートで湊が写った写真は()()()()1()()だけしかない



断られる前提での頼みだったが……上手くはいかなかった



残り時間は40分少し。ゲームセンターを出た2人が次に向かったのは本屋さんだ



まあ寄るだろうとは思っていた。2人共オタクだから



「今日は『猫缶よりマタタビ派の犬』と『鯛で海老を釣る』の発売日なんです!」



本屋なので小声で話す由布子さんだが、明らかにテンションが上がっている様子。二次創作類が集まる場所だと由布子さんはテンションが上がりやすいらしい



「俺もまだ『隣の芝生よりウチの芝生の方が蒼い』の新刊買ってなかったんでちょうど良かったです」


「その作品知ってます!私、主人公が自分の家の芝生に青いペンキを塗りたくるシーンが好きなんです!」


「あのシーンは名場面ですよね。でも俺はそれに対抗して隣の家の人が主人公の家の芝生に向かって放水して、ペンキを流し落としてたシーンも泣けて好きなんです」


「わかりますわかります!」



……私には一切分からない。これも作品を読んでいたら納得出来る感情なのだろうか?



「買いたい作品がいっぱいあるんですが……元々予定になかったからあんまり財布にお金が入ってないんですよね……新刊2つと気になった新作1つだけ買います」



滅多に外出しないが故に、本屋に来た時は諭吉が数枚飛ぶ勢いで本を購入する由布子さん。一桁台しか本を買わないのは初めてかもしれない



「あ、由布子さんの作品の新作出てますよ」



人気作なだけあって、目立つ場所に新刊が置かれていた



「買わなくていいんですか?」


「……買いません。私が書いたので内容はわかってますし、そもそも出版社側から完成品は既にもらってるので」



一冊どころか家族に渡す様にと時雨さんが3冊程度、毎巻由布子さんには渡している



「湊さんは買ってくれますか?」


「いや、もう昨日買ったんだよ」


「……昨日が発売日なのにもう買ってくれたんですか?」


「そりゃ楽しみだったしな。あと面白かったですよ」


「……」



由布子さんは自身の新刊を手に取った



「本当はこの作品でこの数字を見るはずじゃなかったんです」



本に書かれた数字。この数字の意味はこの作品の巻数を表すもの。そして新刊には18という数字が書かれていた



「終わるはずだったんですか?」


「17巻が最後になるはずでした。でも出版社から「この作品は会社1番の稼ぎ頭だから、出来るだけ引き伸ばしてほしい」と頼まれてしまって……」


「……進まない理由はそれですか?」


「……はい」



想定よりも話を長くするのは、由布子さんにとっては難しいことらしい



「作品を書く前に、ある程度考えてたんです。特に最後の方はしっかりと構想を練っていたんです。だから唐突に物語を増やすのがしんどくて……」



ここ数ヶ月、パソコンの前で作業する時間が減ってきている。そしてぼーっとしている時間も多くなっていた



「……由布子さんは作品を終わらせたいんですか?」


「……そうですね。もう伏線もほとんど回収しちゃいましたし、次の作品ももう考えているので、これ以上引き伸ばすのはもう……」


「なら、会社に言うべきじゃないですか?」


「……それしかないですよね」


「「稼ぎ頭だから引き伸ばしてくれ」って言われてるんですよね?なら新作でそれ以上の人気作にするって言えば、耳を傾けてくれると思いますよ」


「な、なるほど!」



ぱぁーっと明るい表情になったが、すぐに暗い表情になった



「で、でも人気出るとは限りませんし……これで全然売れなかったらどうしよう……」



どうやら啖呵切って失敗した時のことを考えて暗くなったようだ



「大丈夫。少なくとも俺はそう思います」



湊の無責任とも言えるこの言葉だったが……



「……み、湊さんがそう言ってくれるならだ、大丈夫な気がします」



由布子さんは少し安心した様子だった。にしても今日の由布子さんは暗くなったり明るくなったりと表情が忙しい

あまり表情がコロコロと変わる人じゃないのたが……それだけ湊に気を許しているということだろうか



「そ、相談に乗ってもらってありがとうございます」


「いえ、別に大したこと言えてないですから。自分の思ったことを口にしただけなので。それより新作……楽しみにしてますね」


「……はい!あっ……新作出たらサインしましょうか?」


「いいんですか⁉︎」


「あまり凝ったサインじゃないですけど……」


「貰えるだけで嬉しいんで!新しいショーケース買っとこ」


「そ、そんな大々的に飾るんですか⁉︎」



初芽に続いて、由布子さんのデートも成功と言っていいだろう

二次創作の話で盛り上がり、相談にも乗ってもらい、色々な表情を見せられた日



自身の作品の役にも立ちそうな良いデートだった

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