出迎えたのは……
夜7時。私は仕事の終わった湊のちょうど真上を飛んで、家へと帰った
樹里もこの時間になったらもう家にいる
家の扉の前で鍵を探す湊。だが私は違和感を覚えた
家の中が明るいのだ
扉の横にある窓から灯りが出ているのだ。これはお隣さんの家とかではなく、湊の家のリビングの光だ
だが、私はなぜ部屋が明るくなっているか理由を知っている
鍵を見つけた湊は扉を開けて家へと入った。それに私も続いた
「ただいまー」
「おかえりなさーい!湊さん‼︎」
出迎えたのはなんと……私だった
ドッペルゲンガー⁉︎なんてそんな非現実なことじゃない。幽霊は十分非現実的だとは思うが……
彼女は 月代 初芽。私の5つ下の妹だ
5つも下のはずだが、双子と間違われる事がよくあった
初芽が中学に入った頃には、高2だった私と背丈、体重、胸の大きさ、髪の長さ、顔立ち。全てが私と誤差の範囲ぐらいしかなかった
親でも私達のことは見分けがつかない。ただ何故か湊だけは見分けがついていたようだが、理由を聞いても「なんとなく」としか答えてくれなかった
そして初芽と私は、私が高校を卒業した後からお互いに間違えられないよう、長い髪が私。短い髪が初芽。そう分けていた……はずだが、私が死んでから初芽は私がしていた髪型になった
その理由も分かっている。初芽は湊のことが好きなのだ
だから元妻の私に姿格好を似せてるらしい
長い髪にしたかっただけでは?と思うかもしれないが、初芽は私に向けてそう言ったのだ
墓前の前で言ったのかな?と思われるがそうではない
死人の私の目を見て言ったのだ
そう。初芽は私と樹里のことが見えているのだ
実際、今湊が見ていない隙に私の方に手を振っていたのだから……
♢ ♢ ♢
「どう?美味しい?」
「うん。美味しいよ」
「良かったー!」
初芽が作った料理を湊が平らげる。
姿が私と一緒だから、昔の私と湊を、第三者の目線で見ている気分になる
正直に言うと、私は初芽と湊で結ばれて欲しくない。
これに関しては完全な私情なのだが、湊と私そっくりの姿の人でイチャイチャされると……
はっきり言って嫉妬に狂い始めてしまうかもしれない
あと気に食わないのは、何に置いても私に負けることが大嫌いな妹。湊だって私と奪い合った
頭の良さも、身体能力も全てが上。私が勝てたのは……湊との争奪戦のみ
5歳も離れてる初芽に負けてるのは正直悔しかった。でも……湊が私を選んでくれたから、全部どうでもよくなった
色んな事に負けたけど、1番大事なものに勝てた。だからこそ湊は初芽に取られたくないのだ
応援なんかするわけない。徹底的に邪魔してやる‼︎
「それでねー?あのお店の中に入ったんだよー」
「へぇ。そんなことになってたんだ」
邪魔だては何度だって出来る。まずは身体を乗っ取って、湊に向かって嫌いって言ってやる‼︎
私は身体を奪う為、初芽に向かって飛び出した
「ゔぇふ⁉︎」
だが初芽は私のことを左手で思いっきりビンタをかました
「ん?どうしたの?」
「ごめん!蚊が飛んでて気になっちゃって……」
「……そう?ならいいけど」
初芽は私の方を見て、悪そうな笑みを浮かべた
「な、なんで触れるの⁉︎ていうかビンタ痛っ⁉︎生きてる状態だったら絶対歯抜けてた‼︎」
……多分マグレだ。マグレで触れれただけに違いない!
私はもう一度初芽に向かって飛び出した
「あっ!蚊が飛んでる‼︎」バチンッ
「ベフッ⁉︎」
またも強烈な一撃。しかも次は初芽の利き手である右手の渾身のビンタが決まった
「な、なんで触れるのよぉ……」
私達の存在を観測する人間は今まで何人か数える程度には居た。ただこうやって触れられる事が出来た人間は、初芽が初めてだ
「李華さん」
「な、なによ」
「初芽さん。最近この世界で一番有名な霊媒師さんの所に行ったらしいんですよ」
「……それで?」
「その人から身につければ幽霊に触ることが出来るブレスレットを128万7200円で買ったらしいんですよ」
「随分具体的な値段言うんだね……ってナニソレ⁉︎そんな詐欺っぽい商品に128万7200円も使うな‼︎」
「でも実際効果あるみたいですし、128万7200円の価値はあるのかもしれませんね」
「確かに……128万7200円の価値はあるかもしれない……128万7200円128万7200円ってうるさい‼︎」
「私より李華さんの方が言ってるんですけど……」
初芽は厄介な物を手に入れてしまったようだ。よりによって1番妨害したいやつに……
「ならば違う手でいく!初芽に触れられてしまうのなら、遠距離から攻撃すればいい!」
「なにするつもりなんですか?」
「ふっふっふ……私の技!光る指先で邪魔してやる!」
湊の後ろに周り、私は指先を光らせた
だが、初芽に効いている様子は全くない
「な、なんで効かないの⁉︎」
「それ幽霊にだけ効果あるんじゃなかったんですか?」
「……あ」
「天然通り越してバカ通り越してアホですね」
「アホはバカの強化版の言葉じゃないわ‼︎」
「あ、怒るとこそこなんだ」
でもどうしたものか……残ってる能力は今は全く使い物にならないし……
だが、IQが高い私は、更なる作戦を思いついた
「初芽が左手に付けてるあの青いブレスレットが霊媒師から買ったやつだよね?」
「そうですよ?12はーー」
「もう値段はいいから‼︎……てことはあのブレスレットさえ初芽から外してしまえばこっちのものってことか……」
「……まあそうですね」
ならば簡単。湊が見えない場所に手があるときにこっそり奪い去ればいいのだ
私は初芽に悟られないように周りを飛び回った
初芽は私のことを目で追いながら、ご飯を食べている
チャンスは左手を下ろした瞬間……別に急がなくてもいいのでは?と思うかもしれないが、私にとっては緊急事態で、即対応に当たらないと困る
その時!初芽は左手を膝の上に置いた
机が邪魔になって、湊からは見えない。私は机を貫通しながら、初芽のブレスレットを掴んだ
「アバババババババババババ⁉︎」
ブレスレットを掴んだ瞬間、私の幽体に電流が流れた。約7年ぶりに浴びた電流に、私の意識は昇天しかけた
「なに今の……?危うく死にかけたんだけど……」
「もう死んでますから大丈夫ですよ。……あのブレスレットに幽霊が触れたら、幽体に強力な電力が流れるらしいですよ」
「なんでもっと早く言わない⁉︎なんで事が終わってから話す⁉︎」
「面白そうだなって」
「最低だな⁉︎訴えてやる‼︎」
「誰にですか……」
強力な電力……電気風呂とかそんなチャチなものじゃない。電線に素手で触れるレベルの電力が流れた。人間だったら身体全体が焦げてる
「くっそー‼︎初芽今無敵じゃんか‼︎手出しできないじゃん!」
「まあ諦めるのが1番かもしれませんね」
「いーやーだ!絶対邪魔する!絶対泣かす‼︎」
「私怨が混じってますよー?」
と、ここで突如初芽が席を立った
「すいません湊さん。少し連絡が入ったので、席を外します」
「電話かい?」
「はい。なのでちょっと外出てきますね」
初芽は、湊が見えないように、私についてくるように促してきた
「ついてこい……って言ってますよ?」
「えー……嫌だなぁ」
私は渋々、初芽の後についていった




