ドキッとしてるんだけどさ
「……あっれ……私いつの間に寝て……」
1人目が起きた。朝日が部屋に差し込む。時間は朝の7時。チェックアウトまではまだまだ余裕がある
起きたのは湊から1番近い位置で寝る権利を得た千夏さんだ
だが残念なことに、昨日は全員酔い潰れたせいでおそらく記憶がない
湊はなんとか自分の布団で就寝。由布子さんは元々初芽が寝るはずだった場所で就寝。蘭さんもその隣で何故か由布子さんに抱きつく形で就寝。初芽に至っては机でチューハイを片手に眠っていた
そして千夏さんはというと……
「そろそろ全員起こさ……ナイト?」
確かに同じ布団で、ナイト(湊)が寝ている
「な……ななななんで湊さんがここに⁉︎」
慌てふためく千夏さん。同じ布団で寝ていて、なおかつお互いちょっと服がはだけている。酔っている内に事を起こした可能性があるのだから
「お、落ち着け私……思い出せ……記憶を呼び戻せ!」
地面に頭を叩きつける千夏さん。その行為は逆に物事を忘れてしまうのでは……?
「……全然思い出せない」
頭を抱える千夏さん。記憶を飛ばす程の量を飲んだのかと思われるかもしれないが、実際に飲んだのは3%を1缶と半分しか飲んでいない
それで記憶が飛ぶくらい酔うのだから、相当アルコールに弱いことがわかる
だが……これでも千夏さんは2番目に強い方。それより弱い人達が2人居た
まずは由布子さん。4%の缶一本で撃沈。記憶が飛んでいるかはまだわからないが、「頭……痛いです」って言いながら布団に入っていた
そしてそれより弱いのが蘭さん。0.5%のお酒を一口飲んだ瞬間に卒倒。これには4人ともちょっと引いていた
対して初芽は7%のお酒を5缶。飲み残した蘭さんの0.5%の1缶。千夏さんの残した3%の残り。大体6.5缶分飲んでいた。こちらも記憶が飛んでいるかは定かではないが、机で寝ているからおそらく酔ってはいたはずだ
湊も普段飲まないが、それでも5%を3缶飲み干した。酔った様子はなく、全員が寝てから眠りについた。ちなみに初芽に毛布をかけていた
いざとなったら私の能力の1つ。対象を酔わせるで誰か酔わせようと思ったが、湊以外全員しっかり酔い潰れたので使う機会はなかった
「思い出せって私!」
また地面に頭を叩きつける千夏さん。そして近くから殴打音が聞こえてきたせいか、湊が目を覚ました
「……何してんだ?」
「……これすると目がぱっちりするんです」
「そりゃパッチリするだろうな。まあもっと良い方法があると思うが。てか血出てるぞ!大丈夫か⁉︎」
「あ、大丈夫です。拭けば止まるんで」
千夏さんは近くにあったティッシュで一拭きすると、止血+痣さえも消えた
「そ、そうか……ギャグ漫画のキャラみたいな治癒力だな……それより……」
「言わないでください!」
千夏さんは湊の口元にバッテン印で指を近づけた
「私も混乱しているんです。なぜこんな状況になっているのか……そして事を起こしたのか……何も思い出せません‼︎」
残念ながら事は起こしてない。一晩中見ていた私が断言する。そしてなぜ千夏さんが湊の布団に潜り込んでいるのか……これは私のせいだ
私の能力。身体の乗っ取りを使ってベッドに入り込んだからだ
私の能力は、寝ている人間を寝ている状態で運ぶことが可能だ
身体を乗っ取って操作する……という言葉が正しいのかは分からないが、とりあえず寝ていようが身体は動かせる。ただし起立した状態で身体から出ると、骨格のない人形のように力なく倒れるし、座って背筋を伸ばした状態で抜けると、頭が前転する勢いでガクンッと落ちる
それを利用して潜り込んだというわけだ。ちなみに最初は抱きつかせていたのだが、千夏さんの寝相のせいで結局離れてしまった
「と、とりあえず落ち着こう。な?」
「……湊さんは逆に落ち着きすぎです!はだけた私の姿を見ても……ドキッとしませんか?」
胸のサイズはともかくとして、身体はスレンダー。お尻も良い肉付きをしている。顔は言わずもがな良き。巨乳以外の人を女として見ていないような人間でなければ、誰もがドキッとする場面だろう
「あーいやその……ドキッとしてるんだけどさ」
「ドキッとしてるんですか⁉︎意識してくれてるんですか⁉︎湊さんもやっぱり乙女の柔肌に興味がお有りなんですね⁉︎」
「肌……ってかさ……あの……見えてる」
「何がですか?肩ぐらいなら全然ーー」
「……先が」
「先?先って何のさーー」
千夏さんは自身の目線を下に向けた。そして先の意味を理解した
浴衣の隙間から見えてしまっていた
「見たのは謝る……すまん……」
千夏さんはゆらり立ち上がり、机の方へと向かった。そしてそのまま開けていなかった10%のお酒を一気に飲み干し、そのままの勢いで寝てしまった
「……酔い止め買ってくるか」
千夏さんは勝負で得たアドバンテージを生かすことは……一応?出来たのだった




