格差
「来る途中で調べてたんだけど、ここの温泉結構広いみたい!」
「千夏さん。走って滑って転んで腰強打して明日身動き取れませんってなるのはやめていただけますか?」
「しないわ‼︎もう確定してるみたいな言い方しないで!」
年長者とは思えないイジられっぷり。まあこの立ち位置が千夏さんの適正とは思う
入浴の為に服を脱ぐ3人
「……由布子さん。いい加減脱いだらどうです?」
3人は身体にタオルを巻いて準備完了していたが、由布子さんはまだストッキングを脱いだだけだった
「は、恥ずかしくて……」
この言葉で3人の反感を買ってしまった
「そんなグラマラスボディしといて何言ってんだ‼︎」
「そうですわ!千夏さんを見てご覧なさい!」
「おい!このタイミングで私を堕とすな!」
「ひぃ……いやぁぁぁ!」
3人がかりで服を脱がされる由布子さん。抵抗も虚しく……裸に剥かれてしまった
「……でかいわね」
「千夏さんの3倍ぐらいありますわね」
「だから私を下げるなって‼︎」
この大きさの女性はそうザラにはいない。一つ言えるのは、間違いなく肩凝りが酷そう
♢ ♢ ♢
身体も洗い終え、4人は湯船に浸かった。周りに何人か人が入っていたが、若い女性というのはこの4人だけだった
「マジででかいね……上からレモンの皮とか絞ってみたい」
「風船みたいに割れるわけないでしょ‼︎」
「あ、あんまり見ないでください……」
お互いに裸の付き合いになると、話の内容はやはり胸のことになる
「逆に千夏さんはいつまでサラシ巻いてるんですの?」
「巻いてないわ‼︎」
「え?巻いてないのにその大きさはあり得なくない?」
「あり得ますー!はい。蘭は貧乳全ての人を敵に回しましたー!」
「男の子に間違われる前に、さっさと温泉から出た方がよろしいかと」
「初芽!おたくの蘭って人間はどういう躾をしてるの⁉︎」
「由緒正しき名家の親に聞いてください」
蘭さんの千夏さん煽りはもはや名物となりそうだ
「それよりも蘭も意外とあるよね。モデルの時の写真だとスレンダーに見えるのに」
「最近流行ってる小さく見せるブラ使ってるからですわ。どちらかといえばクール系の写真を撮ることが多いから、胸を強調しない方が良く見えるのよ」
確かに服を着ている時の印象より胸が大きく見える。初芽よりは大きくないが、十分巨乳扱いされるレベルだ
「初芽もやっぱり大きいわよね。由布子さんの影に隠れてるけど」
「ねっ。私も自信あったのにこんなの見せられたら自信無くすわ」
「そもそもさぁ?湊さんって巨乳派なの?貧乳派なの?」
ここで4人とも沈黙した
「……り、李華さんはどうだったんですか?」
「バカ姉は私より大きいよ。気に入らないけど」
やっぱりその部分に不満があったようだ
「てことは巨乳好きで確定ですわ。残念でしたわね千夏さん。あなたはとりあえず胸にキャベツでも仕込んでから出直してきてくださいませ」
「それはそれでデカすぎて邪魔になるでしょ⁉︎……でもね。私店長との会話で聞いたことがあるけど、どちらかといえば小さい方が良いって言ってた」
「ウソね。小さい方が好きな男なんていないわ」
「いるわ‼︎それだけは全力で否定させてもらうわ!」
私と結婚していたからにわかに信じ難い千夏さんの言葉。実際のところどうなのかと言えば……どうでもいい。が答えだ
私が生前に聞いた事だから、もしかしたらウソを言ってるかもしれないし、今はどちらかに興味が湧いてる可能性もある
ただウソもなく、変わっていないとしたら湊の胸への興味はない。が答えだ
「まあそれが事実でも私は問題ありませんわ。この中だったら小さい部類に入りますし」
「でも圧倒的に小さいのがいるんだよ?」
「くっ……この女邪魔ですわね……」
「素直に喜べなさすぎるんだけど⁉︎」
失礼だが、湊が貧乳好きであれば千夏さん一択だっただろう
「まあ一旦胸の話は置いといて、恋バナしようよ」
「温泉で?普通は部屋じゃない?」
「部屋には湊さんがいるんだから出来ないでしょうが。バカが」
「ナチュラルにバカって言われた……」
良い提案をした初芽。頭を撫でてあげたいところだが、今も触れるブレスレットだけは巻いているので殴られる未来は容易に見える
「恋バナって言っても、私ら全員同じ人を好きなんですのよ?何を話すのです?」
「まああんまり長く話しすぎるとのぼせちゃうから、一つのテーマだけみんなに聞こうかな」
「初芽がそのテーマを決めるんですの?」
「てか決まってる。まあみんな聞きたい内容だと思うよ」
じゃあ私にとってはもっと聞きたい内容に違いない
「湊さんを好きになった理由。気になりませんか?」
……素晴らしい。今すぐにでも抱きしめて褒め称えてあげたいぐらいだ
「それはちゃんと初芽も話すってことでいいんですね?」
「いいよ。ただ長くなるからのぼせちゃうかもね」
「最後にしてあげるから手短になるように思い出まとめておくように」
「はーい。じゃあ千夏さんから」
初芽はまず千夏さんを指名した
「私?うーん……いつの間にか好きになってたかな」
「パッとしませんね」
「でもさ?あれだけ仕事場で近くにいたら好きになっちゃうじゃん?」
「バカ姉が生きてた時から好きだったってこと?」
「……かもしれない。ちょっとはっきりしないや」
「ふーん……まあいいや。じゃあ次は由布子さんに聞こうかな」
続いてのご指名は由布子さんになった
「わ、私も……いつ好きになったか明確な時期はちょっと……」
「わからない?」
「そ、そうですね……。でも……初めての一人暮らしだったので、色々とサポートしてくださったのがキッカケ……ですね」
「不安で挫けそうになってたところにまんまと湊さんに漬け込まれたわけね」
「い、言い方悪くないですか?」
「次!蘭の番ね」
姉の旦那。仕事仲間。お隣さん。この3人よりも明確に接点の少ない蘭さんが湊のことをいつ好きになったのか。特別興味が湧いている
「私は……モデルの仕事を手伝ってもらった時ですわ」
「あー。息切らしながら店に来たやつでしょ?」
「その日ですわね」
「よく覚えてるよ!私も面食らったもん」
私はそのシーンに見覚えはない
「あの日……いつものメイクさんが交通事故で足止めを食らっていたんです。代役も見込めない。夕陽をバックに撮る写真だから時間の猶予もない……代役で選ばれた身だったので、撮影が延期になったら元々選んだモデルさんに戻されるかもしれなかったんです」
スケジュールの都合で断っていたなら、確かに戻される可能性は十分にありそうだ
「たまたま撮影場所が湊さんの勤めてる美容院から近かったし、ダメ元であの店へ駆け込んだんです」
「「モデルの仕事に立ち合わせてあげる!今すぐに準備なさい!」って言いながら入ってきたよね」
「そんな言い方してませんわ!「モデルの仕事が始まるのですが、メイクさんが不在で……助けてもらえませんか?」そう言ったはずです!」
「言ってないよ!私あの時、頼む側の癖に何様だよ⁉︎って思ってたもん!」
「絶対上から喋ってませんわ!下手に出てました!」
この言い分。どちらが正しいのか……私でなくても答えは分かるはずだ
「いや、千夏の言う通りなんじゃない?」
「わ、私もそう思います」
「なんでですか⁉︎」
「普段の湊さんへの言動見れば分かるでしょ……そもそも自分も態度が悪くなるって分かってるくせに」
「それでもそんなに高圧的な態度を取ってーー……取って……ない……わ?」
「自信がなくなるってことは、やっぱりそうなんだって。自分の都合の良いように脳内で改ざんされてるんだよ」
「ぐっ!ひ、否定出来ないのが悲しいですわ……」
悪態癖は付き合う上では絶対に治さないといけない。が、今の話を聞いていると、無理な気がしてきた
「はい。じゃあ次は初芽の番ね!ちゃんと省略した?」
「まあちょっとは。それでも長いけど良い?」
「私は余裕!」
「私も大丈夫ですわ」
「の、のぼせそうになったら湯船から出て冷やすのでだ、大丈夫です」
「……分かった。じゃあちょっとだけ長話に付き合ってもらおうかな」




