決着
第二戦。湊の布団の隣に(間接的に)布団を敷ける権利を得る為の勝負だ
勝負の内容はババ抜き。ただし特殊ルールとして、負けた人が勝利とする
通常、最後にジョーカーを持っていた人間の負けとなる。だが、今回は1人の勝者を決める戦い。最後にジョーカーを持っていた人間が勝利となる
ゲームは終盤。全員生存。手札は初芽、千夏さんが3。蘭さんが2。由布子さんは1となっていた
番は由布子さんが千夏さんの手札を取る。ここで揃えてしまうと、由布子さんの負けが確定する
「おっ。由布子一抜けだねー!」
「ま、まだ決まってませんから!」
由布子さんは右のトランプを引いた
ほっ。と一息つく由布子さん。トランプは揃わなかったようだ
「1人落ちなかったかー。じゃあ私の番ねー」
千夏さんの引く番。引く相手は初芽だ
「初芽はジョーカー持ってる?」
「持ってますよ」
表情を変えない初芽
「……ウソかホントかわかんないなーこれ」
千夏さんはトランプを引いた
「あーぶな‼︎」
手札は揃わず、残り3枚をキープした
「ここで当てたら終わりか……」
蘭さんの手札に初芽は手をかけた
「だー!負けたー‼︎」
揃った手札と残りの手札を上に放り、畳の上に倒れ込んだ
「うしっ!やっと1人消えましたわね」
初芽は一枚手札を残しているが、次の千夏さんの番に手札を引かれて終わりとなる
勝負は三つ巴。蘭さんが1。由布子さんが2。千夏さんが3。敗北確定の初芽が1となった
「千夏頑張れ‼︎私は貴方を応援してるわ!」
敗北確定の初芽は千夏さんひエールを送った
「初芽が私を応援するとか……明日は大雪か⁉︎」
「だって千夏が勝たないと2つもご褒美確定じゃん!それだけは嫌‼︎」
「応援の動悸が不純だな⁉︎」
千夏さんの為の応援ではなく、自分の精神的ダメージを減らす為の応援だった
「でも千夏さんが勝てば、ご褒美がないのは初芽だけになるわよ?」
「負けろ千夏!何がなんでも負けろ‼︎」
「千夏の手のひらは電動ドリルでもついてるの⁉︎」
蘭さんの言うことが初芽には一理あったのだろう
「……ここにしますわ」
蘭さんは左のトランプに手をかけた
「くっ……2連勝とはなりませんでしたか……」
蘭さんの手札が揃った。勝負は千夏さんと由布子さんの一騎打ちとなった
手札にジョーカーを握っているのは千夏さん。ここでジョーカーを取るか、由布子さんの手札と違う番号を取れば勝ちとなる
「由布子ー?当たりは右のカードだよ?」
「ち、千夏さんの言葉は一切聞きません!」
「なんかちょっと傷つくな……今の言葉……」
由布子さんは真ん中のトランプを引いた
「ま、負けました……」
由布子さんの手札が揃った。そして千夏さんは残った初芽のトランプを引いてゲームセット。勝者は千夏さんだ
「よっし‼︎」
「あーあ……私だけ無しかぁ……」
初芽以外の3人はそれぞれご褒美をゲットした
♢ ♢ ♢
「「「「「おーー‼︎」」」」」
晩御飯は初芽の聞いていた通り、黄金色の出汁の入った鍋が一人一人の前に置かれた
多種の野菜に、白い筋が見た目を引き立てるお肉。キノコに白い魚の切り身と盛り沢山なラインナップだ
そして刺身にホカホカの白米……旅館のご飯として最高だ
そしてトランプによって決まった席順だが、千夏さんが事前に想定した通り、湊は短い辺の部分に1人で座った。その右隣に由布子さん。そしてその横に千夏さんが座った。
反対側には湊の横に蘭さん。そしてその隣が初芽が座っている
「じゃあ由布子さん。いただきますする前に、皆んなに一言頂戴!」
「ええっ⁉︎」
皆からの期待の眼差しが由布子さんに向けられた
「あ……うぅ……そ、その……か、乾杯っ‼︎」
由布子さんはコップも持っていない手を掲げた
「「「「乾杯ー!」」」」
全員由布子さんに合わせて、コップを持たずに手を上に掲げたのだった
♢ ♢ ♢
「美味いな。これ」
料理を純粋に楽しむ湊。その横で4人は火花を散らしていた
と、ここで仕掛けたのは初芽だ
初芽は米粒を一粒摘み、そのまま湊のほっぺに向けて投げつけた
そして見事に湊のほっぺに付いた
隣に座っていた蘭さんは、(いくら米粒とはいえ、あのスピードで付いた米になぜ気づかないの⁉︎)なんて考えていそうな顔をしていた
だが、初芽はそれをも考慮していた。初芽は米粒を投げる前に、米をこねて柔らかくしていたのだ
悪知恵だけでいえば智将と称えられてもおかしくないだろう
そして初芽は立ち上がり、湊の方へ近づきながら
「湊さん。ほっぺに米粒が付いてますよ」
そう言いながら、初芽は湊のほっぺについた米を取ろうと手を伸ばした
「いたただだ⁉︎」
だが伸ばした指を蘭さんが箸で挟んで動きを止めた
そしてそのまま逆の手で米粒を取り、自分の口に放り込んだ
「あ、ありがとうございます……」
「……別に」
蘭さんは初芽の拘束を解き、料理を食べ始めた
「ら、蘭?」
「なによ?」
「今湊さんの頬についた米食べたの理解してる?」
「してるわ。バカにしないでちょうだい」
黙々と食べ進める蘭さん。その光景に部屋中が沈黙していた
……だが、蘭さんは顔を真っ赤にして倒れた
「……やっぱり恥ずかしかったんじゃん」
「……うるさい」
クールに決めたつもりが、結局格好のつかない形になってしまった
蘭さんの阻止により、初芽の作戦は失敗(どころか蘭さんの評価を上げる始末)に終わった




