連想できないタイトル
財布のサイズが少し大きくなったと目視で理解出来るぐらいお金を下ろしてきた湊。これはあくまで私の予想だが、ここで使う分用と同時に、この旅費を全部出すためだろう
一応、この旅行に来る前に5人でプランを話していた。その時に湊が全額出すと申し出たのだが……誰1人としてその案を良しとはしなかった
この旅行にかかる費用は5人で分ける。ただし個人的な買い物は完全に自身のお金で払うこと。こう決められていた
どうせ支払いの時にバレて全員から止められるとは思うが、念のため持ってきたみたいだ
「どうします?全員で回りますか?」
「あっ。私ちょっと見たい作品がありますわ。『ハロウィン以外でカボチャを食べて何がいけないの⁉︎』というタイトルのアクション漫画なのですが……」
到底アクション要素の感じないタイトルの作品だ……
「私の部屋に置いてたやつね。蘭ったらどっぷりハマってたもんね」
「あれは話がよく出来ております。見てて楽しいですわ」
「その作品さ、私も見たいんだよね‼︎主人公のパン・プキン小次郎伍郎が好きでアクリルスタンドが欲しくて‼︎」
「あら?私は敵役のカボ・チャチャチャが好きですわ」
蘭さんと千夏さんの2人で盛り上がっていた
「じゃあここ3人と2人で分かれようか」
「分かりましたわ」
3人の方が湊、初芽、由布子さん。2人の方が千夏さん。蘭さんとなった
「初芽はアクキーいらないんですの?」
「私は持ってるからねー。今のところ追加で欲しいのはないから」
「分かりましたわ。そちらはもう由布子の作品を見に行きますの?」
「うーん……湊さん。他に気になる作品はありますか?」
「うん。せっかく来たし、色々見ときたい」
「だってさ」
「では、こちらは終わり次第、由布子さんの作品の場所へ向かいますわ。題名はなんですの?」
「……『今日もあなたに恋してる』です」
タイトルからして甘々な感じが漂ってくる。由布子さんは年相応に乙女な女の子みたいだ
「オッケー!じゃあ行ってくるねー」
蘭さんと千夏さんはアクション漫画用のスペースへと向かっていった
「私達も行きましょうか。何見たいんですか?」
「そうだな……とりあえず『鉄パイプは舐めるとマズイ』は見ときたいな」
これまた癖の強く、物語が連想出来ないタイトルが来た
「あ……一寸先は闇鍋は危険さんの作品ですよね」
「そうそう。前作からのファンなんだよ」
「私も前作から追わせてもらってました。……先生にもお会い打ち合わせの際にたまたま会ったこともあります」
「すごいな……男の人?」
「いえ……お年を召した女性です」
「マジか!」
湊の口からそんな言葉が聞けるとは……意外性がありすぎたおかげだろうか
「……とりあえずその作品のところ向かいましょうか。案内を見るとちょっと遠い位置にあるみたいです」
初芽は少し不機嫌な様子で、作品の展示がある方を指差した
そして3人は作品展のある方へと歩き出した。歩いている最中にも、先ほどの話で出ていた作品の話で、湊と由布子さんは盛り上がっていた。内容の知らない初芽は、会話に入れず、ムスッとしていた
この場所に限っては間違いなく由布子さんが1番湊と会話が弾むだろう。地の利は由布子さんにある
「2人とも。着きましたよ」
結局、移動中に初芽が湊と話すことは出来なかった
「おっ。主人公の鉄棒 煮貝のキーホルダー売ってるぞ」
鉄の棒を持った青年が、舌を出して苦いものを食べた時のような渋い顔をしていた。おそらく題名から察するに、鉄の棒を舐めたのだろう
「こ、このシーンは感動しました……。煮貝くんが、鉄の棒を舐めて『苦い……鉄のようにな』ってセリフを吐くんですよね」
「そうそう。そこがまたカッコいいんだよ」
初芽の顔を見て安心した。明らかに戸惑ってる様子だからだ
作品のことを少しでも理解しようと話を聞いているのだろうが、全く伝わっていない。まあ私もこの部分だけ聞けば、何がカッコいいのか分からないし、鉄を舐めているのだから鉄のように苦いのは至極当たり前なのだから
……しばらくはずっとこの感じが続きそうだし、たまには湊以外の方も見に行ってみよう
というわけで私は、別行動をしている蘭さんと千夏さんの方に向かった
♢ ♢ ♢
「キャー‼︎見てくださいまし!カボ・チャチャチャの必殺技、『カボチャのチャチャチャ』を放っているシーンのフィギュアですわ!完成度が見事ですわ!」
「こっちも見てよー!パン・プキン小次郎伍郎と妹のパン・プキン撫子美里が覚醒して大根ソードを握るシーン!忠実に再現されすぎて泣けるー!」
こちらでもまた難しい話をしていた。蘭さんの手には、顔の怒ったカボチャを被る人間が、オレンジ色のオモチャ達に指示を飛ばしていた
千夏さんの手には、笑った顔のカボチャを被った2人が、大根の葉の部分を持って、剣として振る舞っていた
なぜ覚醒したら大根を持ち出すのかは謎だが、原作を読む人からすれば、このシーンは熱いらしい
「こっちにきても結局ついて行けなさそうだなぁ……」




