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傷心旅行1



「「「「海だーー‼︎」」」」



5人は一斉に青く輝く海に向かって走り出した



……なんて妄想はさておいて



時期は12月に差し掛かる頃。こんな時期に海に入るなんて、か弱い女の子にとっては自殺行為だ。か弱くなくても自殺行為だが……



私の理想で言うと夏に4人の女を囲ませて、湊が好き放題する!まあそもそもの話、企画者が由布子さんの時点で水着案は拒否になるとは思うけど



場所は地元から電車で1時間。隣県にある温泉街にやってきていた



住宅地なら火災が起きたと勘違いしてしまうほどの湯気が上がっている。足湯があったり、出店では温泉たまごが売られていたりと、温泉街ならではの街並みだ



あ、ちなみに樹里はお留守番。というより、いつも通りどこかに行く予定があるからついてこなかった



5人はひとまず荷物を置く為に、予約した旅館へと泊まった



「よ、予約さ、させて頂いたし、東雲です!」


「東雲さんね。ようこそおいでくださいました」



声が震えながらもなんとか言えた由布子さん。この姿を見たら、時雨さんは涙を流すだろう



「……お部屋はお一つと伺っておりますが、よろしいですか?」



後ろの連れをチラッと見て、由布子さんに確認を取る女将



「えっ……は、はい。問題ないです」


「そうですか。ではこちらはどうぞ」



女将が5人の部屋を案内してくれた



「……由布子さん。やるね」


「は、はい?」



初芽の一言に、由布子さんは首を傾げた



「こちらです」



案内された部屋は、畳の敷かれた大きな部屋だった。部屋はここ一つで、外の景色が堪能できる大きな窓。そしてその景色を楽しみながら休憩出来るスペースがあった



「「「おおー!」」」



旅館としてのクオリティは高い。外を一望できる景色も良い。街の方ではなく、温泉街の裏にある自然の景色なので、夜は月が綺麗に見えそうだ



「夕食は19時と伺っております。それまでには戻ってくださるようお願いいたします」



女将はそう告げると、部屋の扉を閉めた



「いやー良いね!テンション上がるね‼︎」



外の景色を見てテンションの上がる千夏さん



「あんまりはしゃぎすぎないで。隣の人から苦情が来るとか嫌だからね」


「えー!蘭もテンション上がるでしょ?」


「上がりすぎなの。もうちょっと抑えなさい」



テンション上げ上げの千夏さんにそれを宥める蘭さん。



そしてそれを横目に見ながら、自分の荷物を部屋の隅に置く湊



不安要素の一つだった『湊が参加するかどうか』。湊が参加しなかったら、本当にただの女子旅になっていたところだった



だが、この最初の関門ともいえる、湊を参加させる……これは意外にもあっさりと決まった



「由布子さんの()()のおかげだなぁ」



♢ ♢ ♢



「すーっ……はぁー……すーっ……はぁ……」



湊の家の前で息を整える由布子さん。旅行プランが決まった当日に湊に参加の是非を聞きにきていた



息を整え終えた由布子さんは、チャイムを鳴らした



「はい」


「あ、あの……東雲です」


「あー……今開けますね」



扉越しに湊は誰かと尋ねていた。ボイスレコーダーを入れられた辺りから、ちょっと警戒するようになった



ゴンッ



「……っ〜〜〜⁉︎」



緊張のせいなのか分からないが、扉にほぼくっついた状態で待っていた由布子さんは、扉が開いた拍子に頭をぶつけてしまった



「ご、ごめんなさい‼︎大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です……」



どれだけ慎重に開けても頭をぶつける運命だったと思う



「そ、それよりお、お話がありまして……」



ぶつけた影響で脳が揺れたのか、少し身体がふらつく由布子さん。胸のクッションで軽減されていなかったら大ダメージだっただろう



「とりあえず入ってください」



湊は由布子さんの腕を首の後ろに回し、身体を支えるようにして家の中へと入った



湊はビニール袋に氷と水を入れ、座っていた由布子さんの額に当てた



額はちょっと赤く腫れており、軽いたんこぶが出来ていそうだ



「す、すいません……」


「いえ、悪いのはこっちですから」



ただ旅行の件を伝えるだけのはずが、この状況に出来る由布子さん……もしかして狙って……やってるわけないか



普段から由布子さんのことを見ている私からすれば、残念ながら狙ってはやっていないと断言できる



日常生活でも週に2〜3回ペースで小指をぶつけたり、月一で資料用の本の下敷きになったりとドジっ子としては申し分ない実績。策士ってタイプでもなさそう



ドジっ子がここまでプラスに働くとは……強運でもあり、凶運でもある



「あ、あの……自分で当たるので、離してもらっていいですよ?」


「いやでも……」


「こ、これぐらいはじ、自分で出来ますから」


「……分かりました」



由布子さんは袋を持ち、湊は手を離した



「そ、それでお話がーー」



バシャーン



「きゃっ⁉︎」



由布子さんの手から袋が零れ落ち、胸の上で跳ねた

その衝撃のせいか縛っていた袋が解け、中の水が全て由布子さんにかかってしまった



「ご、ごめんなさいごめんなさい‼︎」


「あ、あはは……お風呂入ってきたらどうですか?」


「で、でも……」


「もう冬場で寒いですし、風邪ひいちゃいますよ。服は李華のが何着かあるので、着替えとして出しておきますね」


「うう……す、すいません……」



由布子さんはそのままお風呂へと向かった



由布子さん以外がやってると故意に見えるんだけどなぁ……



……その後、お風呂から上がった由布子さんは、私が意地で買った大きめなサイズのパジャマを着ていた



胸が成長しても着られるようにと買ったのだが、残念ながら購入時以降、サイズが大きくなることはなく、いちども着る機会のなかった物だ



だが由布子さんには少し小さかった模様。私は胸のサイズで悩んだことはなかったが、あの大きさは違う意味で悩むだろう



「お、お風呂を貸して下さってありがとうございました」


「いいですよ。それより話があるんですよね?」


「そ、そうです!お、お話があります」



玄関前の時と同様、息を整える由布子さん



「わ、私達と旅行にい、行ってくれませんか⁉︎」



ゴンッ



頭を下げた拍子に机に頭をぶつける由布子さん。胸のクッションがなかった分、今回はダメージが大きかったのか、由布子さんはそのまま目を渦巻き状にしながら倒れてしまった……



♢ ♢ ♢



なんてハプニングを3回見せられた湊は、由布子さんの要望を承諾した

元々断らなかった可能性もあるが、由布子さんが身体を張ったおかげで来てくれたといっても過言ではない



……これで断られてたら目も当てられなかった

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