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湊の職場



「おはようございます」


「あっ!おはようございます先輩!」


「来たねぇ湊くん。今日も始業時間の1分前ちょうど……時間にルーズなのか、正確なのか分かんないねぇ……」


「遅れてないから正確ですよ」


「ならもうちょっと早く来てくれればねぇ……」


「善処します」


私は日課である、湊の職場見学に来ていた。湊の仕事は美容師で、私は週に3回程度湊についていって仕事っぷりを見学するのだ



なぜ3回なのか?それは樹里がいない日が3回だからだ



1週間のうち、樹里は月曜日、木曜日、日曜日の日中は、樹里はどこかに行ってしまう

何もないと樹里は言うけど、多分樹里が幽霊として現世に残ってる理由が何か関係あるのだろう



樹里がいない日に家に居ても暇で仕方がない。彼女候補を探す意味合いも込みで、見学しているのだ



何回も来てるからもう従業員の名前も覚えた。といっても座席数が5つしかない個人店で、それを4人で回しているので名前を覚えるのは苦ではなかった



湊に時間のことで小言を言った人がこの店のオーナーである 帯解(おびとけ) 愛斗(あいと)

35歳で、髭がダンディな男性で語尾が若干伸びる癖がある



そしてもう1人は今日は来ていないが、この愛斗さんの奥様である 帯解 亜美(あみ)。優しいお姉さんという言葉は、この人の為にある!ってぐらいその言葉がしっくりくる女性だ。年齢は同じく35歳で、美容師学校の同級生だったらしい



そして最後は、湊のことを先輩と呼んでいた人物。

この人は私個人的に湊の婚約者候補の3()()()に推しており、名前は 椎名(しいな) 千夏(ちなつ)

湊の一つ年下で、美容師学校時代の後輩だ



「まあまあ間に合ってるんですし良いじゃないですか」


「遅れて来られるよりかはいいかもねぇ……まあ遅刻したことないんだしもう何も言わないよぉ」


「ありがとうございます」



湊は、奥の休憩室に入り、荷物を置いて仕事の準備に取り掛かる



美容師の道具が一式入ったポーチを腰に付け、湊は休憩室から出た



始業してすぐに最初のお客様がきた。予約していた50後半ぐらいの男性に湊がついた



「今日はどのような感じで?」


「うーむ……前回と同じ感じで頼めるか?」


「分かりました。ではまず髪を濡らしますね」



手際良く進める湊

いつもは無口でクールだが、仕事になると、お客とのコミュニケーションも忘れない



「この前いらした時に、奥様と旅行に行きたいって話はどうなったんですか?」


「おおーあれな。実は北海道まで行って温泉旅行してきたんじゃ」


「へぇー温泉!良いじゃないですか!」



愛想良く笑い、抑揚のある喋り。話題の提供。美容師の湊は老若男女から好かれる存在だ

私はそんな湊を見てると……



少し()()()()()()になる



「ありがとうございましたー!またお願いします!」


「おう。また来るよ」



約20分近くで男性の散髪は終わった。手際も良かったし、男性も仕上がりに満足していた



「相変わらずの手際の良さに感服します!」


「そのお客に向ける愛想を俺達にも向けてくれないかねぇ」


「善処します」


「絶対しないやつだねぇ」



そんな会話をしていると、次のお客がやってきた



「すいませーん。予約してないんですが、今からでも大丈夫ですか?」



髪が目元にかかっている20代後半ぐらいの見た目の男性が来店した



「湊くん。お願いしますねぇ」


「え……また自分ですか?」


「これ終わったら一度休憩挟んでいいからさぁ」


「……わかりました。では、こちらの席へどうぞ」



2人目のお客も湊が相手をすることになった



「どんな髪にいたしましょう?」


「そうですね……お任せしていいですか?」


「自分にですか?」


「はい!実は今日デートに行くんですけど、店員さんカッコよくてオシャレだし、多分僕が何か言うより任せた方が良いと思うんですよね」


「……わかりました。それではまず髪を濡らしますね」



♢ ♢ ♢



「……こんな感じでどうでしょうか?」



切る前のモサッとした印象と違い、サッパリとして好青年のような印象になった



「おー!ありがとうございます!」


「いえいえ。デート頑張って下さい」


「はい!」



男は店を出る前に湊に一礼し、店を出た



「お疲れ様です!」


「お疲れ様ぁ。まだ来てから1時間だけど、10分休憩してきなよぉ」


「はい。そうします」



湊は休憩室に戻って行った



「ふぅ……まあ愛想の方も少しはマシになってきたかなぁ」


「え?ずっといい感じじゃないですか?」


「……あれが偽物じゃなければねぇ」



お客に見せる湊の顔は全て作られた物

それが悪いことだとは決して思わないお客を相手に仕事をする人は全員作った仮面をして仕事するのは当たり前だ



このオーナーは何を危惧してるかは知らないけど、湊は優れた美容師であると私は思う



と、ここで3人目のお客が来店した。白髪を(なび)かせる、いいとこのお嬢様感のある女性だ



そしてこの女性は……私にとって湊の婚約者候補2()()()に位置付けている



理由?可愛いからだ。それ以外はない



「いらっしゃいませ。1番奥の椅子へどうぞ」


「あの……月代さんは?」


「今は休憩中ですが」


「そうですか……では休憩終わるまで待ってます」


「え?あ、そうですか……」



この女性の名は 環凪(かんなぎ) (らん)。現在22歳で職業はモデルだ

以前、彼女が当日にモデルの仕事が入っていたことを忘れており、この美容室に駆け込んで湊にセットしてもらっていた

それから彼女はここにモデルの仕事前は必ずここに足を運んでいるのだ



なぜそんなに詳しく知ってるかって?

実は私はずっと湊の家にいるわけじゃない。夜中は街に出るし、こうして湊の職場見学に来たりしている

ただそれとは別に、湊の彼女候補達の私生活を密着して見ているのだ



蘭さんについて分かってることは、名前は芸名などではなく本名

大学ではモテモテだが、男を好きになったことがなく、告白されても全部断っている

そしてここが1番重要なのだが、なぜか湊にだけツンツンしている



他の人の前だと、ちゃんと敬語を使ってお淑やかな女性なのだが、湊を前にするとツンツンするのだ

これは私の予想だが、男性を好きになったことがないからか、湊との接し方が分からずにそうなっているんじゃないか?と私は考えている



顔良し。湊に対して脈アリ。ツンツン属性。これで候補に入らない方が難しい



ちなみにだが、千夏さんや、由布子さんにも密着していたことがあるので、弱点だったり湊への思いだったりと知ってることは結構ある

親でさえ把握してないんじゃないかってレベルのヤバいヤツなんてのもある



「……樹里もいないし、ちょっと試させてもらおっかな」



私は蘭さんを相手に、能力を使用することを決めた

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