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代わりとして見ていたなら



「李華!生きてだんだな!」


「はぁ……まーた否定しなきゃなんないのか……」



頭をポリポリと掻く初芽。一瞬、初芽はコッチを睨みつけた



「違います。私はその妹です」


「妹⁉︎妹なんていたのか⁉︎」



私に私とそっくりな妹がいることは、結構有名な話だ。街では美人姉妹で名を馳せていたぐらいだから、知らないのは記憶力がないからか、友達がいなくてその情報自体手に入らなかったかのどちらかだろう



「……そんなことより、ここで何を?ここは私の家ですが」



サラッととんでもない嘘をつく初芽。通い妻っぽいことしてるだけで初芽の家ではない



「え?いやいや。ここは間宮の家だろ?」


「間宮?ああそうか……そういえば元々そんな苗字だったっけ」



初芽にとっては、湊の苗字が間宮だった期間より、月代の方が長い為、パッと出て来なかったようだ



「確かに湊さんの家で間違いないです。でも、私の家でもあるんですよ」



この妹め……平然とウソをつく。閻魔様……は見たことないから、ナトちゃんに頼んで舌を抜いてもらおうか



「……あのクソ野郎。姉が死んだら、その次は顔がそっくりな妹に手を出しやがったのか」



明らかに不満そうな表情の桑名。だがそれ以上に不満そうな表情を浮かべていたのは、初芽の方だった



「……誰をクソ野郎扱いしてくれてんの?湊さんはそんな人じゃない‼︎」



声を荒らげた初芽。こんな姿を見たのは初めてだ



「湊さんが私をバカ姉の代わりとして見ていたとしたら、私の左手の薬指には指輪がついてるはずなの!でも……見てくれない。重ねて見られても私は一向に構わないのに……バカ姉の代わりでいいのに……湊さんは私を私として見てる‼︎だからクソ野郎なんかじゃない!クソ野郎なのは、勝手に決めつけるお前の方だ‼︎」



荒らげた声で文句を言い終わった後、初芽は酸欠気味になったのか、少し息切れをしていた



「……今の口ぶりからすると、あのクソ野郎と君は付き合ってないんだ?」



今の初芽の言葉を聞いて、第一声がこの言葉?私も呆れたが、それよりも初芽の表情の方が、信じられないと言った表情を浮かべていた



「今その話は関係なーー」


「ならさ……俺と付き合わない?」



……自慢じゃないが、私は数多く告白されてきた。1時間近いポエムを考えてきた男もいたし、自分の身体の一部を私に渡して、運命共同体になりたいと言ってきた男もいた



そんな男たちよりも、この男は遥か上をいくヤバいやつだった



「……っ!キモいから離れて‼︎」



初芽は桑名を突き飛ばし、桑名は壁に身体をぶつけた



「……痛ってーな。女だからって調子に乗ってんじゃねーぞ?」



桑名は初芽の腕を掴み、初芽を押し倒した



「はっ⁉︎な、何すんのよ‼︎」


「調子に乗るから弱味を握ってやろうと思ってな」


「はぁ?弱味?」


「今からお前の裸の写真を撮って保存してやるよ」



桑名はポケットから携帯を取り出した



「い、いやぁぁ‼︎」


「この……暴れんな‼︎……うっ⁉︎」


「……お姉ちゃん?」



私はすかさず、桑名の身体を乗っ取った。さすがにこれは見過ごすわけにはいかない



「……アンタからお姉ちゃんって呼ばれたの久しぶりね。それより、どうするか……



このまま急いで初芽を逃すのもアリだけど、追いつかれてしまう可能性もある。もっと確実な方法はないか……



そんな考えを巡らせる私に、完璧な策が舞い降りた



「初芽!コイツの股間を蹴って!」



男は股間を蹴られると、10分近くその場から動けなくなる現象に陥ると聞いたことがあった



「は、はぁ?何言って……」


「いいから早く!私が乗っ取ってるうちに!」


「わ、分かったわよ……遠慮しないからね」



初芽は右脚をスッと後ろに下げ、そして股間めがけて脚を振り抜いた



チーン



こんな音は実際に鳴ることはない。ただ……鳴ってもおかしくない程痛かった



「ふぅ……ふぅ……‼︎」



声が出ない……極度の痛みに襲われると、人間というのは声が出なくなる生き物らしい。生前ではどう足掻こうとも味わうことの出来なかった痛み……



私は大袈裟だと思っていたけど、これは誰もが悶絶する。耐えられる人間なんていないだろう



そんな激痛走る身体から、私は時間制限を迎えて、追い出された



「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」



幽体に戻った私に、さっきまで走っていた痛みはもうない。代わりに、意識の戻った桑名は激痛に襲われ、情けない声を上げながら股間を押さえていた



股間を押さえながら丸くなる……生前はなんで情けない姿だと思っていたけど、味わった今ならそうなってしまうのも仕方がないと理解を示してしまう



「な、何しやがったこの野郎⁉︎」



悶えながらも初芽に手を伸ばす桑名。だが……その手は初芽に届くことはなかった



「……何してる?」



桑名の腕を掴んだのは、湊だった。そしてその後ろにはゴミを捨て終えた由布子さんが立っていた



「この汚い手で何してたんだ?」



桑名の腕からミシミシという骨の軋む音が聞こえてきた



「痛だだだ‼︎は、離せ!離してくれ‼︎」


「……」



湊は手を離した。桑名は股間よりも、腕の痛みの方が強いのか、腕を押さえていた



「……俺に構うのはいいけど、周りの人間を巻き込むのはやめろ」


「……うるせーよ。相変わらず鼻につく野郎だな‼︎俺はなんとしてもお前を不幸にしてやるって決めてんだよ!」



桑名はよろけながらもなんとか立ち上がり、そのままエレベーターで下へと降りていった



「……ごめん。俺のせいで変なことに巻き込んで」


「湊さんのせいじゃないです。完全にあの男が悪いんですから気にしないでください」



初芽の言う通り、湊に批は全く無いと思う。恨みがあるとはいえ、あまりに非常識すぎる



「……だ、大丈夫でしたか?」



由布子さんが押し倒された際についた埃を手で払いながら、初芽の心配をしていた



「ありがと。大丈夫だよ」



初芽はニコッと笑って見せた



……やりすぎた。あの男は。湊に迷惑をかけているだけでも大罪だが、私の()()()()にまで手を掛けた



笑顔を見せているけど、手が僅かだが震えている。記憶の底に眠っていた()()()()()()をあの男は掘り起こしてしまった



残念だが、看過することは出来ない。あの男には……私から制裁を下してやる

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