同窓会
「お。やっと来たのか」
「悪いな遅くなって」
「いやいやいいんだ。俺が湊に来るように頼んだんだからな」
湊はとある居酒屋にやってきていた。声をかけてきたのは高校の同級生の飯田 宗介という人物。湊と同じ学校だった私も面識のある人だ
「なんで今回に限ってわざわざ頼んできたんだ?」
「まあ特に理由があるわけじゃないさ。ただ久しぶりに話したかったんだよ。最後に話したの、高校卒業した日だから10年以上前だぞ?」
「……すまんな」
「まあ今回来てくれただけでも嬉しいさ。音沙汰なかったから断られると思ってたからな」
「お前がそこまで言うから仕方なく来たんだよ」
「そりゃ嬉しいことだ。ほら。みんなもう中で待ってるから、早く入ろうぜ」
今回はサシで飲みにきたわけじゃない。今日は高校の同窓会だ。とある居酒屋を貸し切って開かれていた
私が死ぬ前に一度開催されていて、今回で2度目の同窓会だ
前回は私も湊も参加しなかった。というか、湊に関しては無理矢理行かせなかった。理由は……
「おーい!湊が来たぞー!」
「「「「湊くんが⁉︎」」」」
目を光らせた女達が一斉に湊に群がり始めた
「……相変わらずの人気だな」
そう。私が同窓会に連れてこなかった理由は、湊が同級生の女子達からの好感度が高すぎるからだ
前の同窓会の時は新婚だったし、まあ私のような美人な嫁がいるのだから、万の一つも心配していないが、他の子に目移りされても困る
あとはもう一つの理由として……
「ちっ……本当に来やがったよアイツ……」
「モテ男は後から登場するってか?ウザっ」
男がほぼ、湊のアンチだからだ
男女問わず、モテる人間というものは同性から嫌われやすい。自分が興味がない分、自分が興味がある人の興味を取られるのが面白くないのだ
私だって美人だったから、女の子に嫉妬されまくりだった。トイレに入ってたら上からバケツの入った水をぶちまけられたり……しそうになったから、扉を勢いよく開けて、その女の子を転ばせて自分にぶちまけさせたりしていた
湊はそこまでされたりはしなかったようだが、陰口は私より言われてたんじゃないかな?
「集まりすぎだ!散れ!湊に嫌われたいのか⁉︎」
飯田の一言により、群がっていた女達は、サッと離れた
「そんなに嫌われたくないのか……」
あまりに従順すぎるクラスメイト達……全員就職先はメイドなのか?
♢ ♢ ♢
「それで俺が言ってやったんだよ!……カボチャの種は食べれるわ‼︎ってな!」
湊は飯田と高校時代の思い出話や、近況報告などの話題で盛り上がっていた
男性陣は誰一人として、湊に挨拶も交わさないが……相変わらず近くで女達が少し距離を置いた位置で群がっていた
「……って、いつまでそうしてるつもりだよ。お前ら……」
「うるさーい。てか、私達も湊くんと話したいことがあるんだから、独り占めしないでくれる?」
「そーだそーだ!」
「引っ込め飯田ー!」
「視力0.1ー!」
「うるせーよ!てか誰だ、俺の視力の数値を言ったやつは⁉︎何で知ってんだ⁉︎」
女子達からの野次が飛ぶ。湊は苦笑いを浮かべるしかなかった
「そもそも俺が誘わなかったら、湊は同窓会に顔を出してないんだぞ?感謝しやがれ!」
「「「「ありがとうございます‼︎」」」」
「本当に調子いいなお前ら⁉︎」
そこに関しては女性陣は心から感謝しているみたいだ
「はぁ……湊。ちょっと耳貸せ」
湊は言われるままに、飯田に耳を向けた
「……月代が死んだことは、もう全員が知ってるみたいでさ。だから今、お前のことを狙ってるんだよ。既婚の奴らも含めてな」
「……そっか。全員知ってたのか」
湊に対しての好感度が高い女子がたくさんいる。=候補が増える=私の夢が叶う確率がUPする
良いことではあるけれど、高校時代に私に嫌がらせをしてきた子も数人いる。……その分やり返したりしてたけど
一個人としては、この中から候補は作って欲しくない。そもそも現状の候補者4人……じゃなかった。3人より、湊に合う女はいない
ましてや既婚者なんてもってのほか。不倫騒動になって、多額の慰謝料を請求されて、町中にその事が広まって住めなくなって……辛くなった湊が人生を諦めて自○したりするかも……
……まあそもそも湊が既婚者を選ぶ心配なんてしていないけど
「よお湊。元気にしてたかぁ?」
ここに来て初めて飯田以外から湊に話しかける男が現れた
「まあ俺的には元気にしてなくてもぜーんぜん良かったんだがなぁ」
ただし、湊と純粋に話したいのではなく、恨み節を言うために話しかけてきたのだ
「なんだぁ?無言かよ。なんか言葉返してみろよ」
「……誰だっけ?」
湊の言葉に周りは女性陣達から笑いが起こった
「……お前!ふざけてんのか!」
「すまんな。もう10年以上前だからさ。記憶があやふやなんだよ」
「……ちっ!桑名だよ‼︎桑名 仁志だ‼︎」
「あー。そんなのいたな」
多分、とぼけてるんじゃなくて本気で忘れていたんだと思う。というよりそもそも、このクラスの半分以上の名前を湊は覚えていない
「相変わらずイラつく野郎だな」
「じゃあ何で話しかけに来たんだよ。嫌いなら話しかける必要ないだろ?」
「そうはいかねぇ。俺はお前に文句を言いに来たんだ」
「文句?」
ここ数年会ってもないのに文句とは?この同窓会で女を独占してることについてだろうか?それとも高校時代のことをわざわざ掘り返して、まだ何か言うつもりなのか?
「お前のせいで李華は死んだ!李華の異常を感じ取れなかったお前のせいでな‼︎」
借り切った一室がシーンと静かになった
……何を言い出すかと思えば。本人の私が気づかなかったのに、湊に気がつけるはずがない。
責任は私にしかない。完全な湊を責めるのはお門違いだ
「……かもな。俺がちゃんと見てやってたら、もしかしたら気がついていたかもしれねぇな」
湊は少し笑みを見せた
「何笑ってやがるんだよ⁉︎」
「そりゃあ呆れて笑うしかねえよ。俺自身にさ」
湊は自分のコップに入った飲み物を一気に飲み干した
「……帰るわ」
「……そうか。また連絡入れるよ。どっか飯奢ってやる」
「ほー。高いところ探しておくわ」
「前言撤回だ」
「冗談だって。……じゃあな」
湊はそのまま居酒屋を後にした
「ちょっと‼︎桑名のせいで湊くんが帰っちゃったじゃん‼︎」
「ああ⁉︎」
「湊くんが来るって言うから今日はわざわざ高い会費を払って参加したのに……全額負担しろー‼︎」
湊が帰ってしまったことで、女達からの野次が桑名を襲った
「嫌に決まってんだろ!」
「「「「ぶーぶー‼︎」」」」
「うるせーーーーー‼︎」
私はこの光景を見て、人間とは10年近く経っても変わらないものは変わらないんだな。そう感じたのだった




