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即刻やめさせてください



「私が料理を振る舞いますよー‼︎」



由布子さん。千夏さんが湊の家にお邪魔していた

そしてキッチンで袖を捲って、やる気になっているのが千夏さんだ



なぜこの状況になったのかは知っている。私が乗っ取りの能力を使って、あの店長に憑依し、由布子さんの担当にさせたからだ



ちなみに今、樹里はいない。リビティーナさんに呼ばれたからだ

何の用件か気になるところだけど、プライベートなことだし、そっとしておこう



……幽霊だけどね



「あれから色々作れるようになったのか?」


「ふふん!実は初芽ちゃんにたまーに教えてもらってるんですから!」


「へぇ。そうだったのか」



私もその事実は初耳だ。まさかそこまで仲が進展していたとは……



「何か食べたいものはありますー?」


「由布子さんは何かありますか?」


「わ、私はなんでも……」


「んー……じゃあオムライスで」



家庭的な料理だけど、味付けや卵の焼き加減で個性が出る。難しい料理だ



「まだ習ってません‼︎」



堂々と宣言する千夏さん。初芽から習ってない料理はまだ作れないということだろうか



「じゃあチャーハンは?」


「無理です!」


「……肉じゃが」


「ジャガイモの皮剥けません!」



なぜかドヤ顔の千夏さん。ドヤる要素もないし、むしろ少し恥ずかしがる様子を見せてもいいような……



「……何の料理を習ったんだ?」



湊も初芽から教えてもらった料理しか作れないことを察したらしく、手っ取り早く決められる質問を千夏に投げかけた



「キッシュとかテリーヌとかエスカルゴ・ブルギニョオンとか」


「フランス料理ばっかりだな……キッシュとテリーヌはともかく、エスカルゴブルギニョオンとかよく教えてもらえたな……」


「キッシュ以外、全部携帯片手にコソコソ見ながら教えてもらってました!」



初芽をからかえる数少ない人物。私が生きていたら、是非親友になってほしかった……



……あ。そもそも私が死ななきゃ()()()()()はなってないのか



「他にはないのか?」


「うーん……焼きそばぐらい?」


「じゃあ焼きそばで」


「かしこまりー!」



千夏さんは人の家だというのに、躊躇なく冷蔵庫を開けて、必要な材料を取り出した



「だ、大丈夫でしょうか……」


「初芽ちゃんがちゃんと教えてたみたいだし、大丈ーー」ボォォン



……爆発した。火災報知器が反応しないことが奇跡なくらいの黒い煙が出ている



「……千夏?大丈夫なのか?」


「いやー。なんか急にスープが爆発しちゃって」


「スープ?焼きそばなのになんでスープなんか……」


「え?焼きそばってスープから作るんですよね?」



湊と由布子さんは顔を合わせた

自分達が勘違いしていないか確かめるためだ



「……ちょっと電話してくる」


「はーい!作り直しておきますねー!」



湊は部屋を出て、ある人に電話をかけた



「もしもし」


「もしもし。湊さんから電話をかけてくるなんて珍しいですね」



電話の相手は初芽だった



「ちょっと聞きたいことがあってね」


「なんですか?」


「最近千夏に、料理を教えてるのは本当か?」


「そうですね。4.5回程度だけですけど」



もうそんなにも教えてたのね……



「初芽ちゃんさ……焼きそばってスープだと思ってるのか?」


「……はい?何を言ってるんですか?そんなわけないじゃないですか」



良かった……我が妹の頭が深刻な状態になったわけじゃなかったみたいだ



「だよな……」


「……もしかして今、千夏さんと2人で居ます?」


「いや、由布子さんもいるから3人だけど」



ドンッ



電話越しに台パンした音が聞こえてきた



「で、デカイ音が鳴ったけど大丈夫か⁉︎」


「し、心配ありません……後ろで荷物が落ちただけなので」



本当は今からでも湊の元へと走り出したいんだろうけど、残念ながら初芽は今は出張中。どれだけ頑張ろうと、ここに来るまでに2時間は要する



「……とりあえず、私から言えることは千夏さん1人で料理させてはいけません。もし今、1人で作っているのなら、即刻辞めさせてください。マンションごと吹き飛ぶ可能性があります」



千夏さんの料理は核爆弾なのかな?



「そ、そんなにヤバいのか?」


「はい。私の実家で料理を教えた日……親が不在で2人で教えながら作ってたんです。それで途中、宅配が来たから少し席を外したんです。そしたら……キッチンが足首ぐらいまで水没してましたね」



状況が理解出来なさすぎる……



「もう少し湊さんと電話してたいですが……あんまり目を離しすぎるとーー」


「キャーーーーーー‼︎」



キッチンの方から由布子さんの悲鳴が聞こえてきた



「ご、ごめん!電話切るわ!」



湊は初芽との通話を切り、急いでキッチンへと向かった



「だ、大丈……ぶじゃないね」



部屋に戻ると、オレンジ色の物体が部屋全体についていた



「ゆ、由布子さん⁉︎大丈夫⁉︎」



部屋で倒れていた由布子さんをそっと起こす湊



「うぅ……み、湊さん……」


「な、何があったんですか⁉︎」



由布子さんの頭にもオレンジ色の物体が付いていた



「に、ニンジンが……鍋から……ポーンって……」


「ニンジンが……ポーン?」


「鍋から……ポーン……です……」



由布子さんはまた気を失った



「ゆ、由布子さーん⁉︎」



湊は由布子さんの額についたニンジンを剥がし、由布子さんをソファーの上で寝かし、鍋のあるキッチンの方へ向かった



「千夏!」



千夏も額にニンジンをつけて、地面に倒れ込んでいた



「大丈夫か⁉︎」


「……な、なんとか大丈夫っすよ」


「なんでこんなことに……」


「あの鍋にニンジンを入れた瞬間……なんでかニンジンが爆散しちゃって……」



千夏の指さした所に、火にかけられた鍋があった

湊は恐る恐る覗き込むと……中は泡だらけになっていた



「なんだこれ……とりあえず危険すぎるから捨てるぞ」


「そ、そうっすね……」



湊は鍋の中身をシンクに捨てた



「何入れたんだ?」


「何入れたっけ……ニンジンが頭にぶつかったせいで何も覚えてない……」



記憶飛ばされる程の威力で食らったのか……



「……とりあえず怖いから少し休んどけ。俺が作っておくから」


「……そうします。あ、あとでちゃんとニンジン全部拭きます。いえ、拭かせていただきます」



千夏さんは自分で額についたニンジンを剥がし、由布子さんと同じソファーで横になった



「はぁ……何入れたらこんなことになるんだ?」



溜息混じりに独り言を呟く湊



私はニンジンが飛んだ部分を隅々まで見たが、幸いなことに物損の破損はなく、壁やガラスにも穴は開いていなかった



そして湊は、千夏さんの使っていた鍋を丁寧に、綺麗に、そしてなおかつ過剰に洗ったのだった

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