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仮説



「そこをなんとかお願い‼︎」


「嫌なものは嫌‼︎」



私は調査に行った帰りに、私の実家に来ていた

空中でフワフワ浮きながら、私は初芽に土下座をしていた



「お願いだよぉ……この調査をちゃんとしないと、私は天に還されちゃうかもしれないんだよ?」


「いいよ」


「ひどくない⁉︎」



邪魔をしているとはいえ、ここまで即答されるとさすがに悲しい



「私にメリットがないもん。やるわけないじゃん」


「……仕方ないなぁ」



出来れば言わないまま協力してもらえれば、それが1番だったが、そう美味い話はないみたいだ



「じゃあ湊の1番好きな料理を教えてあげるよ」


「……バカにしてるの?そんなの私でも知ってるし」


「じゃあ何か答えてみなさい」


「餃子でしょ?」



私はクスッと微笑した



「残念!違うんだなぁこれが」


「……本当に言ってるの?」



初芽は完全に餃子だと思い込んでいたようで、驚いた様子を見せた



「餃子は2番目なんだよね」


「それは最近変わったの?」


「いいや。今も昔もずっと1番は()()なんだよねー」



今も昔も、湊の1番側にいるのは私だ。だからこそ湊のことでマウントを取れるのが嬉しい



「教えて欲しかったら、私の頼みを聞いてくれるよね?」


「くっ……本当に教えてくれるんでしょうね?嘘だったら樹里さんに頼んで1週間ぐらい監禁するから」


「ヤバ」



「数珠の効果を受けさせる」とかならまだ何とか高い位置にいれば回避出来たが、遠隔操作で能力を当ててくる樹里からは逃げられない

適当教えて濁そうと思ったが、それは出来なくなってしまったようだ



「それでもいいのね?」


「うん。じゃあ明日、初芽が仕事終わってからお願いね」


「いや、明日は休み。なるべく早く終わらせたいから、朝の1時にここに来て」


「そうなの?……分かった。ちゃんと準備しておいてね?」


「はいはい」



♢ ♢ ♢



「……まあ分かってたけどね」



翌日の朝10時。初芽の元へとやってきたが、準備が終わっていないどころか、少し暑くなってきた世の中を鼻笑うかのように、クーラーのガンガン効いた部屋で、布団に包まりながら寝ていた



「電気代バカにならないからやめなさいって言ってるのに……」



まあ家族の誰も文句を言わないのは、電気代や光熱費は初芽持ちだからってこともあるんだけど……



「さてと……」



私は初芽の部屋にあった小さめの机を持ち上げ、少し高い位置から初芽に目掛けて落とした



「ぐぇ⁉︎」


「起きたー?」


「な、何するのよ……」



ガラガラの声の初芽。the寝起きの声だ



「初芽が全然起きないんだから仕方ないでしょ?」



目覚めの悪そうにしている。……当たり前か



「普通に揺すって起こせば良かったでしょうが……」


「そのブレスレットのせいで触れないの」


「んんっ……?ああ……それでももっとやりようはあったよね?」


「まあまあそんなことより早く起きて!この時間に指定したのは初芽なんだから」


「……もっと遅くにするんだった」



だるそうに身体を起こす初芽。湊の前だとちゃんと出来る子みたいに装ってるけど、今の姿を見たらどう思うだろうか



……特段気にしたりしなさそう



♢ ♢ ♢



結局当初の予定より30分近く遅れて、辰巳さんの住むアパートにやってきた



「で、何すればいいの?」


「大家さんに話を聞いて欲しいの」



誰かの身体を乗っ取っとれば、会話することも出来るが、制限時間があるから長くは話せない



「何を聞くの?」


「石島広野という男について。自殺した理由とか聞いてほしい」


「ん。で、大家はどこにいるの?」


「一階の1番右端よ」


「あそこね」



初芽は大家さんの住む部屋をノックした



「どちら様だ?」



低音だが、明らかに女性の声が扉の奥から聞こえた


「あ、ここのアパートの大家さんですか?少しお伺いしたいことがありまして」


「話ぃ?」


「はい。ここに住んでた石島広野という男について聞きたいことがあるんです」


「……お前もか」



ボソッと恨めしそうな声が聞こえた



「帰んな‼︎話すことはない‼︎」



と思ったら急に怒鳴り声をあげて、初芽を追い返そうとした



「分かりましたー。帰ります」



初芽は本当にそのまま帰ろうとドアの前から歩き出した



「おい‼︎帰るな‼︎」


「えー?だって大家さんが帰れって言ったんだよ?話を聞くとかそんな話じゃなくて、もうどうしようもないじゃん?」


「諦めるな‼︎」


「諦めるなって……あんなに怒鳴って追い返されたんだし、どうにも出来ないって」


「粘れ‼︎」


「……一単語だけで返答されるとすっごいイラッとするわね。……はぁ。仕方ない。湊さんの情報がかかってるし」



初芽は足取りを大家さんの住む部屋に戻し、また扉をノックした



「しつこいね‼︎話すことはない‼︎」


「何でそんな話をしたくないんですか?」


「もう散々なんだ!マスコミにインタビューを迫られたりして、私の平穏が邪魔された‼︎お前もどうせマスコミ関連の人間だろ‼︎」



……なるほど。大家が怒鳴る理由は理解できた。確かに何も関与していないのに、しつこく迫られたのだからイラついてしまうのは分かる



でも理由がそれなら大丈夫だ



「私はマスコミ関連の人間じゃないです。私は広野の()()()なんですよ」



元よりマスコミ関連の人間ではないし、そしてこの嘘で、話を聞きたがる理由も作った



咄嗟に出た嘘にしては上出来だろう



「元カノ?あの男のか?」


「はい。1年前ぐらいに」


「はっ!物好きな女だねぇ。あんな男を好きになるとは」



初芽は私の方を見てボソッと呟いた



「そんなヤバい男なの?」


「んー……そだね。あんまりこういうこと言うのは良くないんだけど、私は広野さんの好きな所を一つ挙げるのも難しいかな」


「元カノって設定……ウソでもつきたくなくなってきたんだけど」


「もう少しの辛抱だから!」



何とか初芽を宥めた



「……顔は見せん。この状態でなら話してやってもいい。それと、私もそんなに知っていることは多くないぞ」


「それでいいです。ありがとうございます」



元カノというワードが効いたようだ



「じゃあ……広野さ……広野が自殺した理由とか分かりますか?」



さん付けにすると変に思われるかもと悟った初芽。咄嗟にさん付けすることをやめた



「知らないねぇ」


「そうですか」



初芽は再度私に目線を向けた。多分他の質問内容を求めてるんだろう



「じゃあ羽馬辰巳さんの様子を聞いて」



初芽はコクリと頷いた



「じゃあ羽馬辰巳さんの様子はどうでしたか?」


「羽馬さん?別に変わった様子はなかったが」



変わった様子がない?好きではなかったかもしれないが、同棲してた相手が部屋で自殺したのに変化がないのはおかしな話だ



「ショックを受けた様子もなかったですか?」


「んー……そもそも会話してる所を見たことがないが」



サラッととんでもないことを聞いた気がする

私の中で一つの仮説が出来た。そしてその仮説は合っているかどうか確かめるべく、初芽に次の質問をするように頼んだ



「羽馬さんと同棲していたと聞いたと言って」


「……羽馬辰巳さんと同棲していると耳にしたんですけど」


「同棲?羽馬さんと石島さんはただの()()()()()()()()()ってだけよ?」



……やっぱりか



これは……広野さんに話を聞く必要がありそうだ

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