依頼
深夜2時。家の電気がほぼ消え、街頭の灯りが街を照らす
そんな時間に私と樹里は、リビティーナのお店に向かっていた
今回はナトちゃんのデザートの為ではない。まあナトちゃんの依頼であることには変わりはないのだが……
♢ ♢ ♢
「李華。依頼だ。今日の1時にに リーナの家に行ってくれ」
「またデザート?いくら神様でもカロリーの概念ぐらいあるよね?大丈夫なの?」
「その概念はあるが、私は太らないんでな。全く問題ないんじゃ」
「油断して太らないようにね?」
「……って今回はそんな話じゃない。李華には同じ幽霊からの依頼を受けて欲しいんじゃ」
「幽霊からの?」
幽霊になってからの7年間でナトちゃん以外からの依頼は初めてだった
「これまた急だね?」
「解決出来るのは能力が使えるお主ぐらいでな。特例で何個も能力を与えてやってるんだ。これぐらいの役には経ってもらわんとな」
「でも面倒くさいなー。断ってもいい?」
「今すぐ魂を冥土に返していいなら良いぞ」
「謹んでお受けさせて頂きます」
♢ ♢ ♢
ということがあったので、ナトちゃんの言う通りにリビティーナの元へと向かっているのだ
私にナトちゃんの命令を逆らう権利はない
私はずっとナトちゃんに心臓を鷲掴みにされている状態だ
そんな相手に歯向かうことが出来る人がいるだろうか?
否。存在しないだろう
「私ってついてきた意味あります?」
「樹里も能力使えるでしょ?」
「李華さんにしか効果ないんですから、無いようなものでしょう……」
実際の話、樹里を連れてきたのは、ただ単に一人で来たくなかったからだ
「それにしても幽霊からのご依頼ですか……この街に私達以外に幽霊いたんですね」
「それな」
私はこの街で私と樹里以外に幽霊を見たことがない
ただ、足も生えてるから地面を歩くように移動していた幽霊を見逃している可能性はなくはない
「男性ですか?女性ですか?」
「あ、聞いてなかった。まあどっちでもいいけどさ」
とりあえずはナトちゃんの機嫌を損ねないようにしないと
♢ ♢ ♢
「こんばんはー」
「あ、2人共来たね。待ってたよ」
私達は店に着いた途端、リビティーナに奥の部屋へと案内された
「……テープされてる」
「そりゃあんなに危ないものを保管してるんだから当然でしょ」
奥の部屋へと案内される最中に、例の汚臭部屋にsold out と書かれた黄色と黒のテープが貼られていた
「なんで売り切れ?」
「Keep out と間違えたんじゃない?」
あんな汚臭を放つものが売り切れてたまるか
「お待たせー。連れてきたよー」
案内された先に今回の依頼者らしき人が座っていた
性別は男で、それに容姿が若い……が、なぜかどんよりとした表情で、そして言い方は悪いが……ハゲ散らかっている
「……どうも」
声もどんよりしている。これこそ本来の幽霊のあるべき姿な気もしてくる
「じゃあ私は席を外すわね。あ、私はそこの部屋で休んでるから、話が終わったら私に声をかけてちょうだいね」
「あ、はい。わかりました」
リビティーナは扉を閉め、私達3人になった
「えーっと……まずは名前から伺ってもいいですか?」
「……石島広野。半月前に25歳で没った」
死んだことを没ったって言う人は初めて見たかもしれない
「こ、広野さんね。今回の依頼の内容を聞いてもいいかな?」
「……復讐したい」
……重すぎる
「えー……復讐っていうのは誰に?」
「俺が付き合ってた彼女。名前は羽馬 辰巳。年齢は俺と同じ25歳」
「復讐したい理由は?」
「俺を裏切ったから。カフェで年下の男と2人で話してやがった。浮気してやがったんだよ」
「なるほど……もしかして死んだ理由って……」
「裏切られたことに対して腹が立ったからよ。アイツと同棲してた部屋で自殺してやったよ」
……こんなことで自殺とかバカらしいと思う人もいるかもしれないが、意外とこういう事象は少なくない。こう言っては何だが、相手を殺すんじゃなく自殺で留めてる分、幾分マシかもしれない
おそらく暗い表情は憎しみから。そして髪が禿げ散らかっているのは元々か、それともその時のストレスで自分で髪を引きちぎったか……
正直気の乗らない話だ。生前の未練を解消したいという話なら喜んで受けたけど、復讐となると話が変わってくる
復讐がダメなこととは言わないけど、わざわざ死んでから他者の力を借りてまでするようなことじゃない
普通なら断る一択だが……ナトちゃんの依頼だ。冥土に魂を還されるのは困る
「復讐内容は?」
「それはアンタが貰った能力を見てから決める」
偉そうなことだ。元々上から目線で物を言う性格なのか、私が依頼を受けないと冥土に還されることを知っているから強気に出ているのか……
「……分かった。ただ2日だけ待ってほしい」
「なんで?」
「その間に広野さんを裏切った彼女っていうのを見たいから」
「見るだけなのに2日もいるのか?」
「素性を知りたいからね。復讐するに値するか判断したいの」
「……チッ。分かったよ」
不服そうではあるが、なんとか納得してもらえたようだ




