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メッセージ



「はぁ。勇気が出ないよぉ……どうすればいいんだろ……」



大きなベッドの上で枕を抱きしめながら溜息を吐く女性。私はその姿を1人でじっと見ていた



私は今、蘭さんの家に来ていた。初めて訪れたが、すごく大きな家に住んでいた。いわゆる豪邸と呼ばれる家だ



そんな家で蘭さんは今、湊のメッセージトーク履歴を見ながら悶えていた



といっても未だにやり取りはない。交換してすぐの挨拶やスタンプもなく、本当にやり取りが一切ない真っ新な状態だ



過去の自分達のやり取りを見て悶絶してるわけではなく、これからメッセージを送ろうとしているが、緊張しているという状態だ



メッセージ文は完成している。あとは送信を押せば湊に届くのだが……



「それが出来たら苦労しないよねぇ」



私はガツガツ行くタイプだったから、じれったくて仕方ないが、緊張して行動が移せない人達がいることは理解している

ましてや初メッセージ。緊張は更に上がるだろう



もうかれこれ20分はこの画面のままだ



「そもそも私ってなんで湊さん相手だと高圧的になるんだろ……このメッセージだってよく見たら、「行ってあげてもいいわよ」って……どこの女王様よ‼︎「一緒に行きませんか?」でしょぉぉぉぉ‼︎」



メッセージ文まで高圧的に……本当に難儀な子だ



仕方ない……私が1つ力を添えてあげることにしよう



私は、蘭さんが画面から目を逸らした隙に、送信ボタンを押した



「はえ⁉︎な、なんでそ、送信⁉︎え、えええ?お、押してな……ええっ⁉︎」



想像以上の慌てっぷりだ



「と、とにかく消さないと!」



押しただけでは、削除されて何事もなかったようにされてしまうことは分かっていたので、私はその対策を実行に移した



「うっ⁉︎」



私は蘭さんの身体を乗っ取った。だけでは大した時間は稼げない。だから私は、蘭さんの携帯の電源を一度落とし、ロック画面の暗証番号を何度も間違えた



「……よし。これで1分は稼げるね。っとと‼︎」



30秒を終え、身体から追い出された



「……あれ?私また意識が飛んで……はっ!そ、そんなことより早くメッセージ消さなきゃ!」



蘭さんは急いで携帯の電源を付けたが……



「現在使用出来ません。1分後にやり直して下さい⁉︎」



携帯の画面にそう表示されていた



これはロック番号を数回間違えると表示されるメッセージであり、設定次第ではそのミスをした時点で携帯のデータが消去されることがあるらしいが、ちゃんとその機能はオフにしておいた



「樹里からスマホについて詳しく教えてもらっておいて良かったー」



まあ自分が使うことはないんですけどね



♢ ♢ ♢



慌てふためいていた蘭さんだったが、冷静になり、やり直しが出来るまで静かに待っていた



そして携帯の操作不能時間を終え、ロックを解除し、すぐさまメッセージアプリを開いた



「良かった……まだ読まれてない」



さすがに仕事中の湊相手に2分近く稼いだ程度で既読になるなんて思ってない

ここで私は二つ目の手を使った



「本当に送信していいの?」


「うわぁ⁉︎だ、誰っ⁉︎」



私は相手に声が聞こえる能力を使い、蘭さんに話しかけた

ただし、私としてではなく……



「蘭。私は貴方の心の中の天使の声です」



そう。蘭さんの中の天使……のフリだ



「わ、私の中の天使⁉︎」


「そうです。蘭。貴方はメッセージを取り消していいのですか?元々送る予定だったのです。問題はないはずですよ?」


「て、天使様……で、でもなんか私の声と違うような……」


「自分から聞こえる自分の声と、相手から聞こえる自分の声が違うのと同じ原理です」


「な、なるほど……じゃあなぜ悪魔の方は出てこないんです?」


「それは貴方は清い人間だから悪魔が住み着いていないからです」


「な、なるほど……」



我ながら完璧な対応力だ。これにはカスタマーセンターの嬢もビックリだろう



「そんなことよりも、貴方はそれを消してはなりません。勇気が出なかった貴方に本当の神が救いをくださったのですその救いを裏切る行為…….決して許されませんわ」


「か、神様が……わ、わかりました。あ、でもせめてメッセージの文を改変して送り直すというのはーー」


「なりません。そのままいきなさい」


「あ、はい……」


「理解できればよろしい。では私はこれで……。デート。頑張るのですよ」



あっぶない……ギリギリ30秒で収めきることが出来た

かなり早口になっていた気がするが、仕方ない



「聞こえなくなった……本当に私の中の天使が……」



んなわけはないが、なんとか騙されているみたいで良かった



「……メッセージだけ普通の言葉遣いなのもおかしな話だよね」



蘭さんは、メッセージアプリを閉じ、湊が読むまで待つことにしたようだ


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