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妨害者



「み、湊さん?その女は……?」



油断していた。いつもはこんな時間に初芽が来ることなんてないから全く注意もしていなかった



「初芽さん来ちゃいましたよ⁉︎どうするんですか⁉︎」


「追い出すために塩を撒け!塩を!」


「だからダメージ入るの私達なんですって!」



身体を乗っ取って出ていこうにも、初芽には効かない。 ブレスレットさえどうにかなれば触れるし、身体を乗っ取れるけど……そのブレスレット自体に触れることが出来ない



つまり詰み。何か別の物越しに外すしかないが……例えば今木の棒などを持ってしまうと、湊と由布子さんには木の棒が勝手に空中を動き回るという恐怖映像になってしまう



「いらっしゃい。ケーキありがとう」


「あ、いえいえ……じゃなくて!その膝の上の女は誰ですか⁉︎」


「ああ……お隣の東雲由布子さん」


「こここ、こんばんは……」


「あっ……どうもこんばんは……じゃなくて⁉︎なんでお隣さんが湊さんの膝の上に頭を置いているのか聞いてるんですが⁉︎」


「……耳掃除してたからだけど?」


「なんでお隣さんの耳掃除を湊さんがするんですか!それなら私もっーー……なんでもないです」



私もしてほしいという言葉を途中で止めた初芽

実は、私がまだ生きている頃、初芽は一度だけ湊に耳掃除をしてもらったことがあった



その際、あまりの気持ちよさによだれを垂らしながら寝てしまうという醜態を晒し、以降湊に耳掃除はさせなくなった



「……とにかくケーキを持ってきたので、食べませんか?」


「食べたいところだけど、由布子さんを差し置いて食べるのはちょっとね」


「そんなっ……!私のことは気にしなくていいですから!」


「……種類を選んで貰うために何個か持ってきてるので、あげますよ」


「わ、私まで頂くわけには……」


「勘違いしないで下さい。あなたが食べないと湊さんも食べないみたいですから。湊さんに食べてもらうためにあなたにもお渡しするんです」


「初芽ちゃんもそう言ってるし、頂いたらどうですか?」


「……じゃ、じゃあお言葉に甘えて」



耳掃除の途中だが、3人はテーブルの前に座った



「ショートケーキにチョコレートケーキ。チーズケーキにモンブラン。元々お裾分けする前提で買ってきたから種類はたくさんあるので、どれ取っても良いですよ」


「これって……駅前にあるお店の?」


「そうです。ちょっと不気味な雰囲気の店ですが、味は保証しますよ」



私が生きていた頃からあった駅前のケーキ屋さん。外観は普通なのだが、なぜか異様なオーラを放っていることでこの街では結構有名な店だ



「……」



由布子さんは無言で初芽の顔を見ていた



「……さっきからずっと私の顔を見てますが、何か?」


「あっいえ……なんか……見たことのある顔をしてて……」


「……その人でしょ」



初芽は私の遺影に対して指を差した



「あっ、えっ?り、李華さん?」


「の妹ね」



由布子さんは驚いた様子。まあ初見はみんな驚くんだけどね



「李華さんの妹……双子ですか?」


「違う。5つ下よ。顔も身体付きも変わらないから、そう思われても仕方ないけどね」



顔はともかくとして、5つ下の妹と身体付きが変わらないのは、ちょっと屈辱だった



「……そんなことはどうでもいいから、あなたも早く選んでもらえる?」


「は、はい!え、っと……み、湊さんはどれを取りますか?」


「ん?先選んでいいよ」


「そ、それは出来ませんよ⁉︎湊さん用に持ってきてくださった物なんですから、私が先に選ぶわけには……」


「どれも好きだから決めかねてるんだよ。だから選択肢減らしてくれた方が助かるんだよなぁ」


「……ずるいです。湊さんってば……じゃあ私はモンブランを頂きます」



付き合いたてのカップルみたいな雰囲気を見せられ、初芽は唇を噛んだ



「……初芽ってば、めちゃくちゃ怒ってるわ」



私がそう溢すと、初芽は私の方を向き……



「あ・と・で・し・ょ・け・い」



と、口パクで言った



「李華さん。初芽さんは何て言ったんです?」


「私……何も悪いことしてないよね?」


「……?少なくとも今日は大人しくしてた方かと」


「だよね……なんで私、妹から処刑宣言受けたの?」


「……八つ当たりじゃないですか?」


「理不尽って存在するんだね」



しばらく初芽と2人きりになることだけはやめよう……○されてしまう……まあもう死んでるんですけどね



「初芽ちゃんはどれがいい?」


「あ……ショートケーキで」


「じゃあ俺はチョコを貰おうかな」



3人の手に、それぞれ選んだケーキが渡った



「じゃあ私が残ったチーズケーキ食ーべよーーうっ‼︎な、なんで能力使うのさ⁉︎」


「李華さんは本当に大バカさんですね。食べたら変に思われることぐらい分かりませんか?」


「分かってるよ‼︎ちょっとした茶目っけで嘘ついただけだよ!」


「そうでしたか」



樹里は私にかけた能力を解除した



「はぁ……さすがの私もそんな存在がバレるようなことしないよ」


「信用に値しない発言ですね」


「ちょっとは信用して⁉︎」


「……アレは食べないんですね?」


「食べたいけど食べない!」


「本当ですか?」


「約束する!」


「……なら良かったです。アレ、()()()なので」


「……はい?」



私は頭の上で一瞬ハテナマークを浮かべたが、その後すぐに意味を理解した



「このやろー‼︎初芽に自分のお墓にケーキを供えてもらうように頼んだな⁉︎」



私も初芽も、生前の樹里のことも、どこに住んでるかも知らない。ただ、初芽は樹里のお墓の場所を知っている。理由は以前も同じことがあったからだ



「なんでついでに私の分も頼んでくれないの⁉︎」


「頼みましたけど、初芽さんが「あんなバカに甘い物を与えても脳にいかないんだから必要ないでしょ」って言ったんですもん」


「こぉのクソ妹がぁぁぁ‼︎」



私はバカにされた仕返しに初芽の頭を叩こうとするが……



「いだだだだっ‼︎」



強烈な電撃が私の身体を襲った。ブレスレットの効果だ



「最近ブレスレットの効果が全身に渡るようにするブレスレットを買ったって言ってましたね。221万4360円で」


「に、221万4360円っ⁉︎私を相手する為だけに221万4360円も散財したの⁉︎そんな……221万4360円もあれば、それなりの新車を買えるのに……それなのにブレスレットに221万4360円も……って221万4360円221万4360円ってうるさい‼︎」


「私は一回しか言ってませんけどね。李華さんの6分の1しか言ってませんけどね。てか、前もこんなこと言ってましたよね?」



前回よりも更に高額出費。金遣いが荒すぎてお姉ちゃん心配だよ



「……それで本題なんだけど、なんでお隣さんがこんな時間に、しかも耳掃除までしてもらっている……これはどういうことですか?」



いつもの声より少し低いトーンで圧をかける初芽



「えっと……」


「湊さん。私から説明します」



♢ ♢ ♢



由布子さんは一連の流れを初芽に話した



「ふーん……納得出来ない理由ですけど、実際そうならその編集担当者には叱らないといけませんね」



かなり強引な案だったし、初芽が怒るのもわからなくはない

私からすればシェイシェイ(中国語で「ありがとう」という意味)案件だが



「ということは今日も泊まって帰るんですよね?」


「そ、そうですね」


「……わかりました。では、私も泊まっていきます」


「えっ⁉︎」


「……なんですか湊さん。まさかお隣さんは泊めて、私は泊められないなんてこと言いませんよね?」



初芽はよほど2人きりにさせるのが嫌なのだろう

分かる……分かるよ……こんな可愛い子と2人きりで夜を明かすんだから、何も起きないわけないよね



……そう思いたいけど、何も起きないんだよなぁ

昔は()()()だったのに……



「いいけど……明日仕事だったよね?」


「対して距離は変わりませんし、どちらにしてもここからなら、一度家の前を通るのでその時に荷物は回収します」



少しだけウソをつく初芽。対して距離は変わらないが、家の前は通らない。なんなら会社は湊の家の方面なので、ここからの方が少し近い



「……分かった。じゃあ初芽ちゃんは李華の部屋にーー」


「いえ。私は……お隣さんと一緒に寝ます」


「え、え、え?わ、私とですか⁉︎」



おそらく初芽は、由布子さんを潰そうとしている

湊に集る虫だと……そう認識しているに違いない

……これは私が由布子さんを守らないといけないかもしれない


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