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アドバイス2



「どどどどうですか⁉︎き、気持ちいいですか⁉︎」



勢いに任せて湊の耳掃除をすることになった由布子さんだが、案の定緊張している

耳の中に入っている耳掻きがプルプルと震えている



「え、えっと由布子さん?まだ全然手前辺りしか取ってもらえてないんですが……」


「こ、これ以上奥に入れるんですか⁉︎」



由布子さんはずっと入って1cm辺りを掻いていた。全然奥の方を掃除していない為、今のところ耳掻きの意味を成していない



「……してもらっておいて何ですが、大丈夫ですか?」



湊が不安がることもわかる。このままの調子だと、湊の鼓膜が突き破られるかもしれない。それどころか勢い余って脳天まで耳かきを貫いてしまうかもしれない



もしそれで湊が死ぬようなことになってしまったら、ナトちゃんに頼んで、湊に対してとびっきりの待遇にするように言っておこう



「ま、任せてください!昔、親に耳掻きしてあげた時に「アンタに耳掻きしてもらったおかげで、耳がスースーする様になった」って褒めてもらったことがあるんですから!」


「そ、そうですか……」



多分だけど……耳垢がしっかり取れたおかげでスースーするんじゃなくて、耳の中で出血起こさせたせいでスースーしたんだろうなぁ……



「つ、続けますね!お、奥の方に入っていくので、危ないのでジーっとしててください!」


「はい」



そーっとそーっと耳掻きが奥に入っていく。震えはあるが、ちゃんと耳垢も取れていた



あ、ちなみにだが、なぜ耳掃除が良いのかということだが、湊が耳掃除されるのが好きだから。というわけではない



湊は()()()()()で、誰かに甘えるということをしてこなかった……出来なかった人間だった



私が甘やかすという意味合いも含めて、耳掃除をしてあげていたのだが、甘える……とまではいかなかったが、かなりリラックスしてくれていたことを思い出したからだ



だから2つ目のアドバイスは、耳掃除をしてあげるではなく、耳掃除をして甘やかす。だ



その後もプルプルと震える手を使いながら溜まった耳垢を取る由布子さん

片耳だけでかなりの耳垢の量が取れており、ブラフで言った由布子さんの発言は、あながち嘘じゃなかったかもしれない



「ふぅ……かなり綺麗になったと思います」


「なんか……耳のスッキリ感が違うような……」


「これだけの量取れましたからね。じゃあ次、反対向いてください」



湊は由布子さんの指示通り、反対の耳が見えるように体制を変えた



相変わらず会話は無いし、しても拙い。ただこの2人の関係はこれで良いんだと思う



「じゃあやっていきますね」


「……お願いします」



♢ ♢ ♢



反対の耳を掃除する由布子さん。緊張から来ていた震えも無くなって、着々と耳垢を取り除いていく

湊も震えの無くなったおかげか、リラックスした様子だった



「……昔、妻がよく耳掃除をしてくれたんです」


「……李華さんですか?」


「はい。別に対して耳垢が溜まってないのに、ずっとほじくってて……しかも力が強いから痛くって」



……あれ?い、痛かったって言った?



「あまりに楽しそうにするものだから痛いって言えなくて……何回か耳の中で血が出たりもしましたね」



ウソ……私ったら毎回我慢させながらしてたの?



「李華さん……」



樹里は呆れたと言わんばかりの声のトーンだった



「ウソだ……私の耳掃除能力は仕事に出来るぐらいって言ってたのに……」



リラックスどころか無茶させていたとは……生前の自分を殴り飛ばして、耳掃除の仕事をしている人間に弟子入りするように促してやりたい



「……私も強いですか?」


「全然大丈夫ですよ。最初手が震えてたからすごいビクビクしちゃいましたけど」


「そ、それはごめんなさい」


「でも今は気持ちいいですよ。力加減もちょうど良くて、李華より上手いです」



私はガックリと項垂れた。私の得意分野の一つだったはずなのに……

バイトの面接とかでも、特技を聞かれたら耳掃除と答えてやろうかと思ってたぐらいなのに……



自信喪失。私はもう2度と耳掻きに触れることはないだろう



♢ ♢ ♢



「はい。終わりました」


「おお……耳の聞こえが全然違うや」


「それなら良かったです」



長年溜まりに溜まった耳垢を取ったことで、聴力が戻った湊。なんだかんだリラックスした様子だったし、2つ目のアドバイスも成功ということで問題なさそう



「あ、次俺がが由布子さんの耳掃除しましょうか?」



湊がお礼にと言わんばかりに申し出た



「えっ⁉︎い、いやいいですよ!お手を煩わせるわけにはいきませんよ」


「いいですから。交代しましょう」


「……たまに強引になりますね」


「まあお礼ということで」



これは少しマズイことになってしまった



「……マズイなぁ」


「ん?何がマズイんですか?」


「……見てたら分かるよ」



由布子さんは湊の太ももに頭を置き、体制を取った



「じゃあ始めますね」


「お、お願いします……」


まずは耳の中ではなく、外側部分を綿棒で掃除し始める湊

由布子さんは耳を触られ、身体が少しビクッと反応した



外側部分を綺麗にし終わり、まずは耳掻きで上の方から綺麗にし始めた。湊と違い、それほど耳垢は出てこない



そして奥へと侵攻する耳掻き。優しい手つきでしっかりと取っていく

由布子さんの顔は真っ赤で、声を出さないように必死に押し殺していた



湊の耳掻きセンスは抜群だ。私は自称店員クラスだったが、湊は耳掻き会社の社長が務まるんじゃないかというレベル



実のところをいうと……私が湊に対して頻繁に耳掃除してあげたのは、私自身が湊に耳掃除してもらいたかったからでもある

湊の耳掃除は中毒になりそうなぐらいに気持ちいいのだ

でもまさか由布子さんにまで耳掃除してあげることになるとは思ってなかった



「気持ちいいですか?」


「き、気持ち良いです……」



……なんかいかがわしい雰囲気になってきた



その後もあまりの気持ちよさからか、息を荒らげ、声が出ないように我慢する由布子さん。それに気づいていない湊は容赦なく、耳掃除を続けた



「ふぅっ……ふぅっ……」



大袈裟な反応じゃなくて、実際私もこんな感じで反応してたもんなぁ



「……はい。じゃあ反対向いてください」


「は、はい……」



少し躊躇いながらも、反対の耳を湊に向ける由布子さん

躊躇いの理由はあと半分の間、耐えられるか不安だからだろう



……そんな中、2人のいる部屋に訪問者が来た



あまりに唐突で、チャイムも鳴らさず、勝手に鍵を開けて部屋へと入る人影。

私はその存在を認識するのが遅くなってしまった

故に、2人の良い雰囲気がぶち壊されてしまった



「湊さーん!私の親が有名店のケーキを買ってきてくれたので、良かったら一緒にーー」



湊が由布子さんに耳掃除をしているところを……初芽に見られてしまった



「……み、湊さん?その女は……?」



これは少し面倒くさいことになりそうだ


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