87,バラエティ番組
皆様、お久しぶりです!今日から復帰いたします!5ヶ月ぶりくらいですね。待っててくださった方には、本当にごめんなさいとありがとうございますです。これからもどうぞよろしくお願い致します!
それと、活動休止の間になんと、ブグマが100も増え、総合ポイント数が2000を超えました!読んでくださった方、評価してくださった方、本当にありがとうございます!
前回までの大まかなあらすじ
陽斗、芸能界を辞め変装して高校生に→クラスメイトの市原、西島、高柳、白石、成美、三浦、橋本と仲良くなる→バスケでも活躍→色々あり白石や成美にだけ正体がバレる→陽斗の正体を知っているもの同士で同盟を
※今現在、高2の秋に差しかかるとこです
陽斗は何とも強ばった表情で目の前の高いビルを見ていた。
小さい頃から何度もこの場所には足を踏み入れてきた、馴染みのある地だ。別れを告げて1年しか経っていないが、とても懐かしく感じる。
ここにまた来る事になるとは、今の今まで全く想像していなかった。もうここに来ることは無いだろうと思っていたのに──────
***
陽斗たちがアメリカから帰ってきて、日本は高校バスケ大会の優勝で想像以上の盛り上がりをみせていた。
1番変わったことは、周りの態度の変化だ。
世界大会で優勝した事が日本で大々的に取り上げられ、一時大注目を浴びた。
そのため優勝の点を決めた陽斗を知っている人は結構多く、街中や電車で声を掛けられることも少なくなかった。特に、バスケをしている人達からはサインまで求められた。
そして、ある事件が起こった。
それはバラエティ番組出演だった。
芸能人が将来有望な高校生達とスポーツで戦うというものだ。
サッカー、バスケ、野球などの競技で五番勝負をし、負けたら芸能人達に罰が与えられるといった内容だ。
その番組から高校バスケ日本代表らに出演オファーが来た。監督は二つ返事で了承し、監督から陽斗に電話がかかってきた時にはもう遅かった。
そういう成り行きで、陽斗は1回だけとはいえ再びテレビの世界へと戻ってきてしまった。
思わずリュックを持つ手に力が入る。陽斗はゴクッと唾を飲み込むと、テレビ局の中へと入っていった。
控え室へ行くと、そこには1ヶ月を共にした5人の仲間たちの姿があった。皆、芸能人に会える、テレビに出られる、という喜びと緊張に満ち溢れている。
とある者はバタバタと何回もトイレへ行き、とある者は逆にいつもと変わらずラムネを食べている。だが、いつもより袋に手を入れるスピードが早いのは気のせいだろうか。
星野はよく取材や偶にテレビ出演もあるためか慣れており、1人落ち着き払っていた。
ちなみに、陽斗は1人端っこで冷や汗をダラダラとかいていた。
スタジオに入ると、最初に目に付くのは中央にセットしてあるバスケットコートだ。そして、その周りには多くの芸能人やスタッフがいた。ほぼ全員顔見知りだった。お世話になった人もたくさんいる。
"青羽瞬"との顔見知りに囲まれ、陽斗はバレてしまうかもしれないという不安に駆られ、恐ろしくて堪らない。
しかも、収録前に色んな方々に話し掛けられた。多くの人が世界大会を見ていたのだ。皆は憧れの芸能人と話せて嬉しそうだが、陽斗はただただ硬くなるだけだった。
いつもになく陽斗の挙動不審に、チームメイトは驚いた。皆は彼を強心臓だと思っていた。ここ大一番の試合でもいつも笑顔でプレーしている姿が印象的に残っているのだ。
しかし、幸運か不幸か、冴木も同じ番組に出演していた。彼と同じ舞台にいるのは久しぶりで、とても懐かしく感じる。そして、収録前の彼と話してだいぶ緊張がほぐれた。
「今までで誰にもバレなかったんだから大丈夫だろ。成美ちゃん以外だけどな」
ウィンクしながらの冴木の軽い態度にかなり心が楽になった。
確かに、今まであんなに激しくバスケをしていても誰も気づかなかった。テレビに映ったこともあるのにだ。
でも、万が一の事もある。極力目立たないようにしようと誓った。
それと冴木との仲もバレないように、なるべく関わらないようにしようと前もって2人で約束した。どこから正体がバレてしまうのか分からないので、噂の1つも残したくないのだ。
「世界大会優勝おめでとう! 俺、マジで感動したわ!」
撮影が始まると、すぐ皆が改めて祝福してくれる。スタジオは拍手の渦に包まれる。
「しっかし、最後の決勝点を決めた人がこんな芋っぽい男とは!」
1人の芸人の言葉に陽斗の肩がビクッと震える。
「あれ、まじで感動したよ!」
画面いっぱいに陽斗の顔が映る。スタジオにいる全員、そしてカメラの向こうにいる人が自分に注目する。
「あ、ありがとうございます······」
陽斗は少し引き攣った笑顔で対応する。
しかし、心の中では冷や汗ダラダラで叫びたい気持ちでいっぱいだった。なぜ自分に話を振るのかと、飲み友だった芸人を心の中で睨む。
早く終われと、それだけしか考えられなかった。
そして、遂にバスケの勝負が始まる。
高校日本代表と芸能人との実力の差はデカすぎるので、もちろんハンデが課せられる。
選手をトレード出来たり、足に重りを付けさせられたり、高校生側の人数を減らせたり。とんでもなかったのは助っ人の存在だ。
芸能人側の味方として現役のプロが1人来ていた。しかも、それは巨谷将暉だった。相変わらずデカい。
陽斗はバレる事やカメラの事も忘れて普通に楽しんだ。
冴木との約束もすっかり忘れてしまった。ちょっと接触した時や試合中に仲睦まじい雰囲気が出ていたらしい。
途中で芸人に「お前ら仲良しか」と突っ込まれた。だが、あまり深堀されずに済んだのは不幸中の幸いだった。
結果は芸能人チームの勝ちだった。ハンデがかなりあったのも忘れたのか、「世界大会優勝チームに勝った!」とはちきれんばかりに喜んでいた。
また、チームメイト達も芸能人らのサインを貰えて嬉しそうだった。
そんなこんなで、陽斗はとりあえず無事にテレビ収録を終えた。
しかし放送された後日、ネットが少し荒れた。それは陽斗と冴木との仲に関してだった。
テレビ内の陽斗の様子がまるで"青羽瞬"と重なって見えたのだ。
"りょうしゅん"という名でファンから絶大な人気を誇った2人。彼らが仲がいいのは皆が知っている。
何故だか、高校バスケ選手と冴木亮の様子がその"りょうしゅん"を自ずと思い出させるのだ。
更に声まで似ていると話題になった。
だが、もちろんそれに対しての反論も多い。「こんな陰キャが青羽瞬なわけない」だの「青羽瞬だとか思ったやつ、目腐ってる」だの言われた。
冴木がこの後Tmitterで、「共通の知り合いを通して友達になったよ」と呟いていたのでだいぶ落ち着いた。だが、陽斗はなんとも言えない気持ちになった。
自分の今の見た目が根暗っぽいのは自覚しているが、少しだけ心が傷ついた。バレなかったことには安堵したが、ちょっと複雑な思いになった。
読んでくださり、ありがとうございます(˶ ̇ ̵ ̇˶ )




