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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
83/138

76,後押し

ついに世界高校生バスケ大会、決勝トーナメント1日目を迎える。そこに進んだのは、16カ国中、半分の8カ国。


もちろん第1シードはアメリカ。第2シードはイギリス、第3シードが日本となっていた。イギリスと戦うには1勝、アメリカなら2勝して決勝までたどり着く必要がある。


日本チームの試合は明日なので夜のミーティング以外は基本自由行動だ。多くの人達は、今日あるアメリカの試合を見に行っていた。


そんな中、陽斗は1人自室にこもる。すると、突然ドアがドンドンと叩かれる。


「おい、今宮! いるかー?」


剛力の声だった。しかし、陽斗はその場から動かなかった。

その時、ドアの方でピッと音が鳴ったかと思うと、剛力が部屋の中へと入ってきた。


「やっぱいるじゃん。返事しろよなー」


「え、なんで!?」


陽斗は思わず毛布を手に取って被る。そんな陽斗に剛力は自慢げに部屋のカードキーを見せつける。陽斗が絶対に部屋から出てこないと思った剛力は、前もってカウンターから借りてきたのだ。


「冴木から全部聞いた。ロイド・ハレスが父親なんだってな」


剛力は陽斗のいるベッドの目の前にある椅子に座る。その言葉を聞いた陽斗の表情が固まった。


「で、どうすんの?」


「え?」


「え、じゃねえよ。お前はこれからどうしたいの? このまま籠るわけにもいかねえだろ」


陽斗はその言葉に顔を俯かせ、黙った。まだ気持ちが整理出来ていないようだった。


「じゃあ、父親に会いに行くぞ!」


「······は?」


「それがいいと思う! うん」


剛力は1人でウンウンと頷いて、そのままドアの方へ向かおうとする。聞いてきたのに勝手に自己解決している。


「いやいやいや、ちょっと待って!」


陽斗は慌てて剛力の手を掴む。陽斗には剛力のする事が目に見えた。


「なんだよ。本人から直接聞きたいだろ?」


「そ、そうだけど」


「なら、それで決定な。お前が立ち直らないと俺が冴木に殺されんだよ!」


剛力は再びドアへと歩いていく。冴木の事を随分と恐れているようだった。


「待ってってば!」


陽斗の意見など全く聞こうとしない剛力に、陽斗は思はず叫ぶ。アイツと話したいという気持ちはあるが、自分にはまだ心の準備が出来ていない。


「今宮、ずっとウジウジしてもなにも変わんねえよ。そろそろ前を向け。俺が後押ししてやっから!」


剛力はそれだけを言うと、そのままの勢いで部屋を出ていった。


「えー······」


1人取り残された陽斗は、ただ呆然として剛力が出ていったばかりのドアを見つめていた。


***


「今日も来ないね」


ブラッドは寂しそうに呟く。


ブラッドとレオの2人はいつものコートにいた。ここ最近、何故か陽斗の姿がない。連絡をしても通じないのだ。


ちなみに、レオのいるアメリカチームは決勝トーナメントの1回戦を突破した。ブラッドのいるイギリスチームの試合は明日である。


「俺、陽斗に避けられてるんだ」


「え、喧嘩したの?」


「してない。俺もなんでか分からないんだ」


ブラッドはその事がとても信じられなかった。レオと陽斗はとても会話が多い訳じゃないが、心の中で通じ合っている様だった。そんな2人を羨ましく思っていたが、まさかそんなことがあるとは。


「もう1回、陽斗と会って話そう!」


「それが、連絡つかないんだ」


そういえば、ブラッドも陽斗に連絡していたが返事が来ていない。何日か会ってないこともあって、彼の身に何かあったのか不安になる。


「ヘーイ!」


その時、男性がこちらへ向かってくきた。よく見ると、日本チームのメンバーの人だった。


「あ、えーと、アイム ハルトズフレンド!」


レオとブラッドは"陽斗"という名前に反応した。突如現れた男にも関わらず、剛力の話に耳を傾けることにした。


剛力は学校で習った英語を駆使して、なんとか陽斗がハレス・ロイドに会いたいという趣旨を伝える。とにかく、その息子のレオに取り次いでもらおうと思っているのだ。


2人は少し驚いたようだったが、バスケで悩んだ陽斗が話を聞きたたいものだと思ったみたいだ。


レオは「分かった」と言うと、携帯を取り出して電話し出す。父に連絡をとってくれているようだ。


数分後、レオが耳元から電話を下ろす。なんと、20時からなら大丈夫らしい。


「ベリベリセンキュー!」


剛力はレオにペコペコとお辞儀をして去ろうとする。だが、それをレオが止める。何か言いにくそうに口をもごもごとさせながら話している。恐らく、陽斗の事を色々と心配しているのだろう。


陽斗がレオを嫌っている訳では無いという事は何とか伝える。レオは分かってくれたようで、少し安心したようだった。


***


その頃、陽斗は1人ソワソワとして自室にいた。心は整いつつあるが、全く落ち着かない。その時、横にあった携帯の音が鳴り出す。驚いて画面を見ると、剛力からの電話であった。


「······もしもし」


「ロイド・ハレスとの約束取り付けたぞ!」


剛力は嬉々とした声色だ。正直、急なとこであったし厳しいと思っていた。剛力の突発的な行動には拍手を送らなければならない。


「20時だ。絶対に行けよ!」


「······分かった。ありがとう」


陽斗は電話を着ると、大きく深呼吸をする。


ずっと現実から逃げてきた。人に言っといて自分は守らないだなんて、本当に口だけ野郎だ。


だが、もう前へ進もう。クヨクヨしてたって、何も変わらない。


陽斗は勢いよくドアを開け、部屋を出ていった。

読んで下さり、ありがとうございます✩°。⋆⸜(ूºωº )

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