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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
81/138

74,ロイド・ハレス

凄い長くなりました( ˙◊˙ )

「男の子見つけたかー?」

「いや、そもそも小さい子を見つけれんかった」


男の子を捜索していた日本の高校生達が再び集まり出す。誰も手がかりを見つけれず、諦めかけようとしたその時、こちらに歩いてくる剛力の姿があった。何やら凄く考えている様子である。


「おーい、剛力! 男の子いたー?」


その声に剛力は現実に戻される。


「ん、ああ、見つけたよ」


「俺の詳細な情報と絵のお陰やな!」


まるで自分の手柄だというかのように知多がドヤ顔を振りまく。


「いや、お前の絵は関係ない」


「え、酷か! そげん言わんでよー!」


知多をどうでもいいかのように冷たく流す剛力に、知多が悲しそうな表情をする。実際その絵は全く役に立たなかったので、そんな知多を慰める人もいなかった。


「それで、なんか掴めたか!?」


「いや、それが分からないだよ。てか、その子供の父親があのロイド・ハレスだったんだぜ!」


剛力はドヤ顔でサイン入りのリストバンドを皆に見せびらかす。自慢したくてたまらなかったのだ。


「まじか! あのハレスか!」

「すげえ!」


皆がそのリストバンドに食いつく。何人か知らなさそうな人もいたが、ほとんどの人がロイド・ハレスを知っていた。


「何してんの?」


そんな最中に日向牙が合流し、輪に入らずに1人ラムネを貪る守田に声をかける。


「剛力がロイド・ハレスにサイン貰ったって」


「まじ!? てか、今アメリカの監督してるよな」


「あ、そうだった!」


その日向牙の言葉に剛力が食いつく。ハレスに会えたことで頭がいっぱいで、監督という事をすっかり忘れていた。


「てか、さっき今宮を見かけたんだけど」


「え!? それ詳しく!」


「え、えっと、メイン会場で。確かアメリカのエースと話して、急に顔色を悪くして走っていってたな」


剛力の勢いに押されながらも答える日向牙。


そう言えば、陽斗とそのエースが仲が良かったことを剛力は思い出す。イギリスのエースも含めてよく3人でバスケをしていた。何か喧嘩をしたのだろうか。


「そう言えばさ、そのアメリカのエースってロイド・ハレスの息子だよな?」


剛力はハッとする。

レオがその息子で、また実力も半端ないことから大注目を浴びていた事を思い出す。


ハレスを見て顔色を変え、その息子のレオとの間でも何か揉めた。これは何か関係があるのだろうか。


そういえば、陽斗はハーフだった。父が外国人で、離婚して今はどこにいるかも分からないって言ってた。


もしかして、ハレスが陽斗の父親なのか? いや、そんなのありえない。でもそうすれば辻褄が合う。陽斗がハレスを見て父だと分かって動揺し、その後レオと喧嘩になったとか?


いや、まさか。こんなの根拠もないし、ただの想像にすぎない。とりあえず、冴木に陽斗の事を聞いてみよう。


剛力はそのありえない仮説を確認するため、後で冴木に電話をする事にした。


ちなみに、冴木は剛力、陽斗、白石の夜特訓にも度々顔を出している。その為、剛力は冴木とも仲がいい。それにこのメンバーは皆、陽斗の事情をわかっている同士なので気を使うことも無い。


割りとこの4人の友情は深いものがあるのだ。


***


ハレスは何やら考え事をしながら去っていく日本の少年の後ろ姿を黙って見ていた。


"今宮陽斗"


その名前がハレスの頭にこびりついていた。とても懐かしく、だがどこか胸がキュッと痛む。


自分には今、()()では息子が2人いる事になっている。


だがもう1人、息子がいたのだ。



もう10年以上も前、NBAで活躍する少し前にある女性と知り合った。街を歩いていた彼女に一目惚れをして声を掛けた事がきっかけだった。


その女性は日本からアメリカへ留学していて、自分より1つ年下で美人だ。優しい雰囲気で笑顔が素敵な女性だ。


知り合って半年、付き合うことになった。


その頃、自分はプロバスケットボール選手となり中々忙しい日々が続いた。


バスケで悩んだことも沢山あり、その度に彼女が自分を包み込んでくれ励ましてくれた。


そのお陰もあって自分はNBAで活躍出来た。彼女がいなかったら途中で潰れていたかもしれない。それほど自分の中で大切な存在だった。


そんな中、彼女と結婚し子供まで出来た。しかし両親はこの結婚に大反対だったため、この事は内緒にしていた。


自分は臆病だった。父が特に厳しく逆らうのが怖かった。


そんな自分の性格がこの後、あんな事をしでかすなんてその時は思いもしなかった。


そうして、自分は世界に名を轟かすほど活躍する。しかし、大きな怪我をしてからバスケ復帰は絶望となった。まだ自分は選手として若かった。それもあってこの現実を認められず、目の前が真っ暗になった。


そんな時も彼女はいつも自分の傍にいてくれた。そんな彼女のためにもこのままではいけないと思った。


そこで心機一転、彼女の故郷の日本へ行くことにした。


しかし両親はもちろん大反対。


それを押し切って駆け落ちするかのように日本へと来た。誰も何も言われない場所で3人で生きようと、そう思ったのだ。


それからは本当に幸せな毎日だった。


息子はすくすくと育ち、一緒にバスケをするようになった。とても負けず嫌いで、父親にも恐れることなく果敢に挑んでくる。


そんな息子が成長するにつれ、ある1つの願望が出てきた。「バスケの育成に携わりたい」というものだ。


そんな時、ちょうどアメリカからそんな仕事が自分に舞い込んできた。自分はもちろん即決し、妻と息子を日本に残し、1人アメリカへ戻った。


すると、それを知った両親は自分に結婚相手をたくさん押し付けてきた。仕事も大変でそのストレスと相まって、精神的に酷く疲れていた。もちろん日本に帰る暇もなく、連絡を取ることも少なくなっていった。


ある1人の女性と出会ったのはそんな時だった。


いつも明るく見ていると元気になるような女性。そんな彼女と過ごすうちに心は次第に晴れていった。


逆プロポーズをされ、彼女と一緒にいたいと思っていた自分は快諾した。彼女は1回離婚しており、子供が1人いた。男の子で、丁度自分の息子と同じ歳だった。


両親は彼女の境遇に最初は反対したが、彼女と気が合ったようで結婚を賛成してくれた。


仕事が上手く行き、良きパトナーを見つけ、親は結婚を心待ちにしている。親が、特にいつも厳しい父が、嬉しそうにしているのを見て安心した。この道が正しいんだと思い込んだ。


ただ自分の事だけを考えた結果、日本にいる家族を捨てた。


"今宮陽斗"という名前は、日本の息子と一緒に考えたものだった。


その子は小学生ながら芸能界で大活躍をしており、顔も名前も知れ渡っている。美少年だし、運動神経も良かった。特にバスケは自分から見てもセンスがある。


そんな時、もしも一般人になったらどんな名前にするかと、息子と話し合った事があった。


苗字は早く決まった。しかし、名前が中々決まらなかった。2人で真剣に議論して、"陽斗"という名前にした。


"陽"は太陽の陽、"斗"は北斗七星の斗。どちらも限りなく広い空の上で輝いている。どんな時も明るく一生懸命生き、太陽や北斗七星に負けないくらい毎日を輝かせるという意味だ。


半分遊びで付けた名前だが、とても懐かしく思う。


だから、大会前に日本メンバー名前一覧にそれを見つけた時は驚いた。苗字も名前も漢字も同じだったからだ。


しかし、それは息子ではないだろう。憎い"父"を思い出してしまう名前を使うはずもないし、バスケもするわけがない。


実際、間近で彼の顔を見たが昔とは似ても似つかない姿だった。成長して昔とは違うとしても、あの見た目は息子ではないと思った。


自分は本当に最低な男だと思う。時間が経ってから自分のしでかした事に気づいた。その時は今の幸せを壊したくなかった。親の目を気にして生きていた。自分の事だけしか考えられず、視野が恐ろしく狭かった。


偽善だとしか思われないかもしれないが、日本の孤児やシングルマザーに関係した団体に寄付をしている。彼らに対する罪の意識をそれで紛らしているだけかもしれないが。



今大会で活躍している"今宮陽斗"のバスケは、私に似ている雰囲気があると周りが少し騒いだ。自分でもそう思う。


似ているといっても、彼は息子ではない。ただの偶然だろうと考えた。


だが、どこか胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。


読んで下さり、ありがとうございます( ー̀ ֊ ー́ )

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