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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
75/138

69,レオとブラッド

ジェットコースターのような浮遊感が続く。


それを楽しむ者もいれば怖がる人もいるもので。

陽斗の隣にいる知多は激しく怯えている。


「······ラムネいります?」


「お、おお、サンキュ······」


珍しく守田が知多に気を使う。

それほどまでに知多は弱っていた。



今、世界高校バスケ大会の開催国であるアメリカに向かっていた。


天気は良くなく、雨風が酷い。

まるで悪いことの前触れかのような、そんな天気だった。



目の前に広がる銀色に光る巨大な建物。今回の大会の会場だ。

何でもNBAの選手が試合することもあるらしい。


日本代表メンバーのテンションは爆上がりだ。


今日は試合ではなく下見だ。合間を縫って来たのだ。

本当の試合は明後日からだ。


周りを歩いていると、ストリートコートが目に入ってきた。

陽斗は思わず近くに近寄る。


広々としたコートに多くの人達がバスケをしている。


日本では中々見られない光景に、陽斗は高揚する。

ここに来てようやく海外に来たのだと実感する。


すると横から大きな声が聞こえてきた。思わず陽斗はビクッとする。


そちらへ顔を向けると、3人の背の高い男が1人に罵声を浴びせていた。反抗して言い返すも、男達はバカにしたように笑って突き飛ばす。


少年は突き飛ばされ、派手に尻もちをする。


それを見た陽斗の中で何かが弾けた。


「ちょっと!」

「おい」


思わず男達に向かって叫び声を上げた陽斗だが、隣からも同時に声が発せられる。


全く同じタイミングだった。2人は驚いて顔を見つめ合う。


その少年は白人だった。身長は高く、恐らく陽斗と歳は変わらないだろう。

手首に青色の名前入りのリストバンドが印象的だ。


「おい! 何だ、お前ら!?」


男達がこちらを睨んでくる。


「それはこっちのセリフだ! 1人相手に何してだよ!」


陽斗と少年はコートの中へと入る。


「コートを譲ってもらってるだけだ! それが何だよ!」


「どうみても無理やりにしか見えないんだけど?」


少年は氷のような目で男達を見る。そのプレッシャーに男達も、座り込む少年も、そして陽斗までもが圧倒される。


「じゃあ、俺たちに勝てたら譲ってやるよ! それでいいだろ?」


男達は少し怖気ながらも強がった態度を取る。


「分かった」


少年は1歩前に出る。


「俺もやるよ! 相手は3人でしょ?」


少年1人ではさせられない。3対1なんてあんまりだ。


「お前、バスケ上手いの?」


「見た目よりは!」


「足引っ張ったらすぐ外すから」


「分かった!」


2人は揃ってコートへ入ってく。

この男達を倒さないと、腹の虫が治まらない。


「ぼ、僕も!」


コートに座り込んでいた少年が自分も参戦したいと言ってきた。

幼めの顔をしているから年下だろうか。


彼は自分が招いたことなのだから2人に任せるのは悪いという。


「足引っ張んなよ」


「はい!」


これで人数は揃った。


「名前なんって言うの?」


「レオ」

「ブラッドだよ」


クールな少年がレオで、幼めの少年がブラッドだ。


「きみは?」


「俺は陽斗。よろしく!」


3人は軽く握手をする。そして、男達の前に行く。


「お前達から来いよ」


男たちは舐めきった態度で陽斗達を見る。


陽斗たちはさっき出会ったばかりの即席チーム。お互いの実力も何も知らない。


試合にならないと思っているのだろう。


ブラッドの為にも、こいつらをボコボコに倒したいと陽斗は強く思った。



レオがボールを持つ。そしてすぐに突っ込む。

そして簡単に男達を抜くと、シュートを決める。あっという間の出来事だった。


陽斗は驚いた。それは、今まで見てきたドリブルよりもうまかったからだ。

レオが只者ではないとハッキリ分かるほどのプレーだった。試合前のプレッシャーで強そうだと思っていたが、これ程とは。


「レオって何者!?」


陽斗は目を輝かせながら詰め寄る。


「······高校のアメリカ代表」


「やっぱり!」


陽斗と同じくらいでこれほど強いのなら、今回の大会の選手じゃないか察していた。

そんなレオと本気の闘いをしてみたいと思った。とても面白くなりそうだ。


「次は俺ね!」


レオばっかりいい格好させられない。


陽斗も突っ込む。ターンをして相手を1人抜く。そして、ジャンプする。


目の前にいる敵。


陽斗はそれを空中で交わし、ボールをリングへと放る。それは危なげながらも入った。


「2本目!」


陽斗はドヤ顔でレオ達の元へ戻る。


唖然とする敵。


「陽斗って何者!?」


2人は予想外にもしない陽斗の実力に驚いていた。


「日本代表メンバー! 高校のね!」


既に陽斗たちは2本を決めた。敵は口ほどにもないようだ。



「じゃあ、僕も行きます!」


ブラッドが前へ出る。敵も釣られて動く。


しかし、それはフェイント。


ブラッドは後ろへ素早く戻ってシュートする。


ボールは綺麗な弧をえがいてリングへと入る。


「おおおおー! ブラッド!」


陽斗は思わずハイテンションでブラッドの元へ駆け寄る。

レオも驚いた様子でくる。


ブラッドのシュートは本当に美しかったのだ。


「ブラッドってバスケ上手いね!」


「一応、イギリス代表なんだ······」


照れくさそうに笑うブラッド。

まさか、レオもブラッドもそれぞれの代表選手だったなんて。


──────それなら、負けられない!


3人は争うようにしてボールを持てば攻める。


お互い母国代表だ。他の国の、しかも同年代に負ける訳には行かない。プライドが許さないのだ。


このゲームを仕掛けた側の男達はもはや蚊帳の外。

文字通り、ボッコボコにされたのだった。


読んで下さり、ありがとうございます(ノ-_-)ノ

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