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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
74/138

68,日本代表メンバー

インターハイ勢がわんさか出てきます

すごい速さで通り過ぎていく景色。陽斗は頬杖をついてそれを眺めていた。


「ふあ~」


陽斗の目の前に座っていた剛力が豪快に欠伸をする。


「着いた?」


「あと少しだよ」


2人は新幹線に乗って東京へと向かっていた。

高校世界大会は間近に迫っている。それに備えて選抜メンバー皆で集まって練習するのだ。



陽斗と剛力はスムーズに体育館に着く。既に何回か練習は行われていた。


「よー! 今宮にうるさいの」


大きめの荷物をおろし、腰を下ろした2人に手を振りながら向かってくる星野。


「おい、テメー、俺の名前は剛力だっつってんだろ!」


星野からの呼び名に不満があったのか、剛力は非常に不機嫌な顔になる。


「あー、第一声からうっせーな。小物は失せろ」


「小物だと!? 舐めやがって!」


2人はお互いにいがみ合う。今は味方同士なのに火花を散らし合う。


星野は剛力を名前で呼ばないし、剛力は星野に対しての敵対心が凄い。星野は半分剛力を面白がっているのだが。


いつもこの2人が出逢えばこうなってしまう。



「あ、守田くん」


いつの間にか隣にいた守田に気づく陽斗。

今年のインターハイの準々決勝で当たった相手であり、高校最強ディフェンダーと謳われる存在だ。


「······ラムネいる?」


守田はリュックからラムネを取り出して食べ始めた。よく見ると、リュックの中はそれが大量に入っている。


「いるー! 守田くんって本当にラムネ好きだね」


最初はその量にとても驚いた。また、そのギャップにも。

しかし、バスケになるとその雰囲気はガラッと変わる。とてつもなく頼れる存在となるのだ。



「やっほー、今宮に守田!」


後ろから元気でどデカい声が聞こえる。


楽山高校の野生児を率いるキャプテン、知多 京介(ちた きょうすけ)だ。全く読めないプレーをする、動物のような人である。


「知多さん! こんにちは!」

「こんちゃす」


「よお! あ、俺にもラムネ頂戴!」


「え、嫌です」


守田は知多を毛嫌うように見て、ラムネを取られないように守る。


「何でさ! 今宮にはあげてたやん!」


「知多さんは汚いから」


「汚い!? 俺はいつも清潔だ!」


知多を無視してラムネを口に運び続ける守田に痺れを切らす。

ラムネを奪おうと襲いかかるが、華麗に避けられ続ける。


まあ実際、知多は結構汗臭い。特に練習終わりは近づけないほどに。



「おーい、今宮ー! 1on1しようぜ!」


向こうから日向牙(ひゅうが)が大声で声を掛けてきた。

高校生の中で星野の次に天才と言われている彼だ。それを本人の前で言ったらめっちゃ怒られるが。


「いいですよ! かかってこい!」


2人は着いてそうそう火花を散らす。


何故か日向牙は会えば毎回陽斗に1on1を仕掛けてくる。まあ、楽しいからいいのだが。



「はーい、皆さん、集まって下さーい」


時間になり続々と集まる日本代表メンバー達。大体15人くらいだろうか。


そして今回日本チームを指揮するのは狼北高校の監督、大上 統久(おおかみ もとひさ)だ。

狼北高校を何度も日本一にしてきた、敏腕監督である。


「今日は本物のプロの方々に来てもらいました」


大上監督の後ろにたつ強靭な選手達。

憧れの人達だ。高校生は皆、キラキラとした眼差しで見る。


「この方々に指導してもらおうと思う。時間を無駄にするなよ」


「「「はい!」」」



「君が今宮か?」


「あ、はい······うお! でかっ!」


後から声を掛けられ陽斗が振り返ると、そこには巨人がいた。おそらく2メートルは超えている。

こんなに人を見上げるのは2度目だ。


見た事の無い顔なのでプロの選手だろう。


「俺、206センチあるんだぜ」


「ほおおー! 凄いですねー!」


陽斗はキラキラとした目で彼を見る。高身長はそれだけで憧れる。

しかし、どこかで見たような気がする。

陽斗は思わず顔をマジマジと見つめる。


「あの、どこかで会った事······ありませんか?」


「いや、初めてだぞ? あ! 伸夫(のびお)の事じゃね? 巨谷(おおたに)って知ってるだろ? お前の一個下」


「あ! そうだ!」


目の前の男は、インターハイ予選で戦った大男の巨谷と似ている。


「あいつと従兄弟なんだよ。似てるってよく言われる」


「え!? 従兄弟!?」


巨谷の面影があると思ったらまさかの親戚。巨谷家の高身長DNAは強い。



「それじゃあ、ゲームするぞー」


監督の言葉に皆がコートに入る。

高校生代表チームはなんと、今からプロの選手と戦う。


今まで世界の相手に向けて沢山対策を練って練習してきた。それを旅立つ前に試そうということだった。


監督からは、「今までやって来たことを信じて全力で戦え」との事だった。

勝つにしろ負けるにしろ、自分の実力を出せという意味だ。


高校生のスタートメンバーは陽斗、星野、日向牙、守田、知多だ。剛力はムスッとした顔でベンチに控えていた。


そうして、体育館に始まりのブザーが響く。


陽斗の目の前に立つ巨人がいた。巨谷 将輝(おおたに まさき)だ。なんでもJBAの中で凄い存在らしい。


陽斗はこの試合、終始ワクワクしていた。


もちろん実力も経験も劣っている。だが、それでも強い人と戦えるのは楽しい。


陽斗は状況を冷静に見渡す。


星野が飛び出してくる。陽斗はそれを見ずに素早いパスを出す。まるで横にも目があるような、正確なパスだ。


星野を止めようと敵が向かうが、それを守田が阻む。

そして、そのまま豪快にシュートする。


「おいおい、すっげーな」


巨谷は面白そうにニヤッと笑う。



巨谷は天才ともいえる人だ。バスケのセンスは半端なく凄い。まるでボールと一体化しているようなテクニック。


何もかも圧倒される。


高校生チームは必死に食らいつく。


日向牙がシュートを決めに行くと思いきや、スリーポイントシュートを打つ。

知多は負けずにリバウンドをしてくれる。


本当に心強いチームだ。



終了のブザーが鳴り響く。


もちろん、高校生チームは負けた。

しかしへこたれる人は誰もいない。むしろ、プロ相手に自分はここまでやれたんだと嬉しい気持ちだ。



「凄くいいチームじゃないですか」


「だろ? 世界相手にどこまでやってくれるか、楽しみだよ」


高校生達はもう反省会をしている。今季のチームは一人一人のハングリー精神が強い。


巨谷と大上監督はそんな様子を微笑ましく見つめるのだった。



読んで下さり、ありがとうございます(・8・)

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