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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
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64,新キャプテン

インターハイが終わったとある休日。成宮高校バスケ部はいつもの体育館に集まっていた。


「皆、本当にお疲れ! 俺たち3年生はこれで部活を引退する。最後に全国2位という大快挙を成し遂げることが出来た。俺たちに未練はない。後輩達、今までついてきてくれて本当にありがとう!」


キャプテンの言葉に皆、顔を上げて聞いていた。


3年生はこれから受験モードに入る。あのインターハイで最後の試合だったのだ。


「それで、新しいキャプテンと副キャプテンを任命します!」


後輩達が少しどよめく。この事をすっかり忘れていたようだった。


実は、3年生はこの問題にとっても悩んでいた。


以下は3年生の話し合いの一部始終である。


「なあ、キャプテン誰にする?」


「そーだな、エースの今宮とか?」


「あいつは背中で引っ張ってくれるタイプだよな」


「だけど、結構子供みたいな一面あるから心配だ」


3年生達はそれに大きく頷く。

頼りになるが、心配になる時もある。「俺達が支えないと!」と結構思っていたのだ。


「んー、じゃあ市原?」


「割と周りみてるよな」


「いやー、だけどあいつ結構熱くなると周り見えなくなることあるぞ」


「確かに」


3年生達は再び大きく頷く。

周りに気を使って鼓舞してくれる時もあるが、少し性格に難ありだ。


「それじゃ、西島か?」


「あー、あいつ結構まとめてくれるよな」


「いつも冷静で熱い奴らを抑えてくれるのは西島だし」


「だけど、少し離れて物事を捉えてる感じがするんだよなー」


3年生達はまたまた大きく頷く。

西島は性格は花丸だ。だが、物足りなさを感じるのはなんだろうか。


3年生達は頭を抱える。

3人ともキャプテンになる素質はある。だがそれぞれに欠点があるのも確か。


実力的にこの中からキャプテンを選ぶべきだ。


キャプテンに全てを任せる訳では無い。もちろん皆で支えて欲しい。

だが、やはり皆を引っ張らないといけない立場だ。これからの成宮高校バスケ部にとって重要な立ち位置である。


3年生は悩みに悩んだ末、ようやく結論が出た。


「新キャプテンは市原、副キャプテンは今宮と西島だ!」


「え!? 俺キャプテン!?」

「副キャプテンが2人!?」


後輩達は驚いた者が多かった。


意外と周りに気を配れる市原をキャプテン。今宮は副キャプテンとしてエースとして、皆を背中で引っ張りのびのびとプレーして欲しい。西島は2人が熱くなった時にサポートする立場。


これが最善策だった。3年生は満足気だ。


「新キャプテンとして一生懸命頑張ります!」


市原はビシッと敬礼を決める。目がメラメラと燃えている。


既に心配になってしまう3年生だった。


「お、俺、副キャプテン辞退します······」


そんな中、1人の少年が恐る恐る手を挙げる。


陽斗だった。


「え、何でだよ!?」


「俺に副キャプテンは向いてません······」


下を向いて今にも消えそうなか細い声で言う陽斗。


「俺のせいで優勝を逃したから。決勝で足を引っ張ったから。そんな奴に副キャプテンは務まりません」


陽斗は未だ敗北を引きずっていた。

やりきったとは思っていても、脳裏にあの光景がこびりついている。


自分がもっとこうしていれば、ということばかり考えていた。

エースとして皆を引っ張らないといけないのに、1人で自滅した。


皆に申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。


「いやいや、俺ら寧ろ感謝してるよ!」


「······え?」


「俺らが全国に行けたのも、2位まで上り詰めることが出来たのも、今宮の存在が大きいからな!」


皆はウンウンと頷いている。


「今宮がいなかったら東高校も倒せなかったしな」

「優秀な後輩達が入って来たし!」

「こんなにバスケに熱狂出来たのも今宮のお陰だな!」


口々に陽斗への感謝の言葉を言う。皆は陽斗を暖かい目で見る。誰一人として責めるものはいなかった。


「み、みんな······」


陽斗の目から暖かい雫が零れる。思いもよらないみんなの反応に思わず心から色んな感情が込み上げてきたのだ。


「お前はまだ1年あるんだから、思いっきり楽しめ!」


川田が陽斗の背中をバンと叩く。


「はい!」


陽斗は涙を吹いて凛々しい顔立ちになる。


陽斗は敗北を乗り越えた。


彼はもっと成長するだろう。


負けは負けではない。負けをそのまま放置する事が負けである。


失敗から学び、また挑戦し続ける事が成功の鍵となる。



「林さん、決勝の時は本当にありがとう。林さんのお陰で俺は立ち直れたから」


解散した後、陽斗は成美の元に来ていた。

あの言葉がなかったらあのままズルスル引きずっていただろう。彼女には感謝してもしきれない。


「いや、私は今宮の言葉を借りただけだから······」


成美は顔をそらして少し顔を赤くしている。


インターハイ後から成美の様子が少しおかしい。陽斗の顔をまともに見てくれないのだ。

話しかければワタワタと慌てるし。


何かしたのだろうか、と振り返ってみても引っかかるものはないのだ。


地味だけど顔が変というわけでもないと思うし。

さすがに"青羽 瞬"だとはバレてないだろうしね。


そのうち元に戻るだろうと思い、陽斗は気にする事をやめたのだった。


読んで下さってありがとうございます⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾


実は私もかなりキャプテン考えまして。

3年生のあの話し合いは私の悩みを会話にしたものなのです。

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