60,インターハイ本戦②
「ひゃっほー!」
そうはしゃぎながらコートを駆け巡るのは第3回戦目の敵、楽山高校。
遂にインターハイは3日目に突入。59校いた高校は今やもう16校になっていた。
今回の相手は1回戦の相手とは打っと変わって動物のようだった。
それぞれの運動能力も高い。フォームも様々だが入る。それにすばしっこい。
ストリートに近いバスケだ。
本能のままに頼っているので試合がなっていないと思いきやそうではない。それぞれ1人1人の感覚は鋭い。
全く読めない動きをしている。
「うわー、白石が5人だ」
「あんな野生みたいなやつと一緒にしないで下さい」
「あ、すまん······」
一緒にされて凄く不満そうな白石。
実際、白石はあちらの部類なんだけどな、と誰もが思ったが何も言わない。
「わっしょーい!」
相手がデタラメなフォームで打ったボールは綺麗に入る。
「うぇーい!」
「ナイスゥー!」
盛り上がる楽山高校。
白石みたいに人間じゃなくて動物だと思った方がいいな、と心のなかで呟く陽斗。
成宮高校は地が固まったチーム。こんな事で崩されるものか!
今まで磨いてきた連携を魅せる成宮高校。
そして、キレのあるドリブルで突破しダンクをする陽斗。楽山のどの野生児達よりも速かった。
そして笛の音がなると同時に成宮高校側から歓声が上がる。
「俺達の分まで楽しめよ······!」
終わった後、楽山高校の選手の1人が泣きながら握手を求めてきた。野生児の中でも1番すばしっこい人だった。
「分かりました!」
硬くその手を握る。
俺達はここまでたくさんの高校を踏み台にしてここまで来たんだ。負けた人達の分まで頑張らなきゃいけない!
そうして遂に4日目、準々決勝。
相手は最強と謳われるディフェンダー、守田 剣矢がいる高校。
ユースにも選ばれている彼は陽斗と同級生だ。マークする人には満足にプレーをさせてくれない。鉄壁のガードとして評判だ。
試合が始まる。
成宮高校がボールを持つ。
陽斗が攻めようとした時、目の前に守田が現れる。どうやらこの試合では陽斗をマークするらしい。
突っ切ろうにも相手はそう簡単にはさせてくれない。恐らく癖まで知られている。
陽斗が後輩の乾へ戻そうとした時、パスカットをされる。
「なっ!?」
そしてそのままゴールへ持って行かれる。
敵は陽斗がパスするルートを限定していた。そして状況を見て読んだのか。
このチームは彼を軸として強い!
陽斗は心の底から高揚感を感じる。これだからこそバスケは楽しい!
***
インハイの準々決勝、俺は最近になって強いと言われている成宮高校と戦っていた。ウィンターカップ初出場にしてベスト8。当時は結構噂になったから知っている。
何でもそれを率いたのは俺と同学年の今宮という男らしい。
ウィンターカップでは決勝までいった俺達よりも大きく取り上げられている。
しかも今宮はあの星野さんと同じレベルだと!? 嘘つけ! あの化け物レベルの星野さんと一緒にするな!
上にいった俺よりも目立っている今宮が腹立たしかった。
だから徹底的にマークして絶対に好きなようにプレイさせない。今までたくさんの敵を同じ様に苦しめた。全員イライラして段々動きがガタガタになっていく。自分の力で敵をねじ伏せている感覚が快感だった。
だが、この今宮という男、全く質が下がらない。寧ろ上がっていないか? 何故、お前は笑顔なのか。ストレスが溜まっている筈なのに!
今宮と対峙する。フェイントなどに引っかからないように足を見る。
キレのあるフェイントで俺を揺さぶる。そしてまた2度目のフェイント。あまりの緩急についていけず抜かされる。
だがまあこれも想定内。俺はボールを奪おうと手を伸ばす。さすがにこれは分からないだろう!
だが、嗅覚が優れていたのか今宮はそれを躱す。
「なっ!?」
見えていないはずなのに! 読んでいたのか!?
そのままジャンプしてシュートという所に味方が今宮を阻止すべく手を伸ばす。だが今宮は自分の手に引き寄せて躱し、リングの下を潜り後ろ向きでシュートする。
圧倒的な空中のボディバランス。思わず見とれてしまう。
その瞬間、終了のブザーがなった。
「······ハッ、これは化け物だ」
味方も敵も、見ている人を魅了させるプレー。
華やかで、輝かしく、それでいて残酷。
守田は静かに体育館を出る。
静かな闘争心を心の底に燃やしながら。
成宮高校、準々決勝突破。
決勝まで残り1つ。
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