59,インターハイ本戦①
10連休も遂に終わってしまった(ó﹏ò。)
全国各地から勝ち残った高校が1つの体育館に集まっていた。
今日はバスケのインターハイ本戦の日。
今年は大阪で開催される。
成宮高校は都会だからといって浮かれている者は誰一人いなかった。
皆が勝つ為に、その事だけに集中していた。
「キャーー!」
体育館に入った瞬間、女性達の声が聞こえる。
前にも似たようなことあったような、と思いつつもそちらに目を向ける。そこには1人の男性が多くの女性に囲まれていた。
星野だった。
成宮高校バスケ部の皆は顔を歪め、サッと通り過ぎようとした。
陽斗は久しぶり見た星野の姿に思わずじーと見る。
すると、2人の目線がちょうど交わる。
「あ、今宮じゃん」
星野は女子の輪をかき分けてこちらに歩いてくる。
「ウィンターカップの時より比べ物にならないくらい上手くなってるから。お前を倒す為にな」
星野は目の前の獲物を喰らおうとする狼のようだ。去年とは雰囲気が違う。それだけで星野が格段にレベルアップした事が分かる。
「それは俺もだから」
陽斗も勝つ為に毎日練習をしてきたのだ。去年の屈辱を晴らしたい!
「まあ、とりあえず勝ち上がってこいよ。決勝で会おう」
今回は成宮高校と狼北高校は別の山で、決勝ではないと当たらない。戦うのならお互い勝ち続ける必要があった。
「あ、君! ウィンターカップの時もあったよね? LIME交換しよーよ」
星野が成美を見つけて、さっきとはうっと変わって甘いマスクを向ける。
「ごめんなさい、無理です」
「うわあ、ガード硬いな~。まあ、また今度お願いするよ。じゃあね」
ウインクをしながら立ち去る星野。その行動に女子達が騒ぐ。
「またあいつめ! 成美ちゃんに声掛けやがって!」
「許さんぞ!」
「あのナルシスト野郎!」
成宮高校バスケ部は敵意を向けた眼差しでそれを見つめるのだった。
1回戦目の相手は、こちらと同じくインハイ初出場。
何でも頭脳派らしい。相手を分析して対策をバッチリ練る。とくにキャプテンは相手の特徴、癖、全てを網羅しているという噂だ。
その通り、成宮高校は抑えられていた。パスが中々上手く通らないし好きなように動けない。
陽斗や2年の乾が頑張るも、中々流れが来ない。
「フッハッハ! 私の頭には誰もついてこれない!」
第1クォータで上手くいった為、相手チームのキャプテンの鼻が高くなっている。
「よし、白石、行ってみろ」
「え、俺ですか!?」
キャプテンの発言に白石だけでなく、周りの人間も驚く。白石は上手いとはいえまだ初めて約6ヶ月なのだから。
「お前の直感力を頼りにしてる」
「わ、分かりました」
白石は初試合にして全国の舞台に立つ。
「緊張してる?」
「いや、死ぬ心配は無いから大丈夫」
「······え!?」
白石の発言に絶句する皆。今までどれたけの戦場を越えてきたのだろうか。
そして、このキャプテンの作戦がカッチリとはまった。
白石の動物のような動きに頭脳チームは揺さぶられた。
直感で動くので予想が出来なかった。頭脳とは全く逆のタイプ。
そのおかげで成宮高校のパスが通じるようになる。
そして、第1回戦を無事突破する。
「白石ナイスー!」
「初試合でこれは凄いぞー!」
皆が白石に群がり頭をぐしゃぐしゃにしたり背中をバンバン叩いたり。開放された時には白石は試合後よりも疲れていた。だが嬉しそうにも見えた。
2日目、相手はパワー型チーム。皆がいい筋肉を持っていた。
とくにキャプテンは凄い。ボディービルダーにいった方がいいんじゃないかという程。
「うおりゃー!」
成宮高校の中でパワー1番を誇る市原はこの試合、非常に頑張っていた。パワーだけは負けたくないんだそう。激しく筋肉達に揉まれている。
だが、パワーがあって豪快な分もちろん隙もある訳で。
陽斗はそこを突いて得点をバンバン決める。
そして2日目も勝利を挙げる。
「市原くん、ナイスパワー!」
「ふはは、だろう」
市原はすごいドヤ顔だ。まあ、皆が気持ちよく試合できたのは彼の仕事が大きかった。誰も突っ込む人はいない。
そしてコートから立ち去ろうとした瞬間、隣から大きな歓声が聞こえた。
振り返って見てみると、ちょうどゴールを決めた星野の姿があった。
圧倒的な強さと存在感。まるでこのコートの王様のようである。
そんな圧巻な強さに相手はだれもついてこれていない。
陽斗は身震いした。戦ってみたいと心の底から思った。
その為にはあと3つ勝たなければいけない。
道のりは厳しい。だが絶対に決勝まで辿り着いてやる!
陽斗は改めて強く心に刻んだ。
読んで下さり、ありがとうございますʕº̫͡ºʔ




