54,インターハイ予選①
これからどんなお話を書こうかなと思って一通り紙に書いてみた。そしたらかなり沢山あって。最終的に200話行くかもしれない説。
5月下旬、ついにこの日がやってきた。
"インターハイ"だ。全国の運動部が燃え上がる一大行事である。
陽斗達は成宮高校にいた。
なんと、予選の開催地は我らの学校だったのだ。
最高の試合場所である。
成宮高校は第1シードの為、2回戦からのスタート。頂点に立った高校だけが全国へと駒を進めれる。
そういえば、前のウィンターカップ予選の時と比べて変わった事がある。
それは色んな高校や関係者から見られ噂されるのだ。成宮高校は全国で大いに活躍したのでその影響だろう。
この試合は3年生にとっては最後だ。負ける訳にはいかない。勝って皆で全国に行くんだ。
陽斗は試合が始まる前、トイレへと向かう。少し身構えながら警戒しつつもトイレを済ます。
今回は何も起きなかった事に安堵してトイレから出た瞬間、何か壁のようなものにぶつかる。
「ブフォッ」
顔を思いっきりぶつける。
顔を抑えながらよく見ると、それは壁ではなかった。人だった。
「うお! デカっ!」
思わず陽斗は驚く。高い方の陽斗よりも優にでかいのだ。こんなに人を見上げるのは初めてかもしれない。
去年は見た事ないのでおそらく1年生だろう。
「あ、ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
巨人の男は慌てて謝る。
見た目に反して優しそうである。
本当にでかい。2メートルは超えてそうだ。
「え、ええと?」
「ああ、ごめん!」
思わず陽斗は男をジーと見てしまっていたようだ。
「あ、あの! 今宮さんですよね!?」
「あ、うん、そうだけど······」
巨人が迫ってきて思わず後ずさる。でかい人はそれだけで圧力がある。
「僕、ウィンターカップ見て凄く感動しました! ファンになりました!」
キラキラとした目で見られる。握手を求められる。
「あ、そうなの? ありがとう!」
何か芸能人の時のようだな~。この感じ懐かしい······。
陽斗は感慨にふけっていた。
「おーい、今宮ー! 試合そろそろだぞー!」
体育館の方から市原が呼ぶ。
「それじゃあ、またね!」
陽斗はそう言うと、走って体育館へと向かう。
ジャージを着ていたからどこかの高校だろう。闘うのが楽しみだ。陽斗は思わず顔を緩ませながら走る。
そしてついに第1試合が始まる。
なんと今回、白石がベンチ入りを果たす。試合には出ないものの、約4ヶ月ですごい伸びだ。
キャプテンを含めて3年生2人、2年は陽斗と市原の2人、そして1年生の乾が主な出場メンバー。
他に状況を見てチェンジする事もあるだろう。成宮高校は万全だった。
そうして成宮高校は最初の試合を圧勝で勝ち進む。
皆はウィンターカップの時より成長を感じる。
陽斗はインターハイまで主にスタミナをつけてきた。ウィンターカップでは体力がかなりものをいった。それを反省して、走り込みを多く取り入れた。
また、チーム内での攻撃もウィンターカップよりかなりレベルアップした。
皆で意見を言い合い、それぞれで考えてきた。時には言い合いや喧嘩にもなった。一人一人が強くなりたい一心だったのだ。
それで息も合うプレーが増えた。今はもう陽斗だけのワンマンチームではない。成宮高校はチームとして強くなった。
そうして次の3回戦も勝ち進む。
「大くん! シュートめっちゃ入ってたね!」
先輩のマネージャーである葵が自分の事のように嬉しそうにする。大くんとはキャプテンの川田大地の事だ。
その言葉の通り、今回のキャプテンは凄かった。元々得意だったスリーポイントシュートがさらにレベルアップしている。前の試合とは比べ物にならない。
「ま、まあ、こいつらの動きがいいから打ちやすいんだよ」
「そこで決めれるっていうのが凄いよ!」
周りの皆もうんうんと頷く。
シュート率はこのチームの中で1番だろう。この人ならシュートを決めてくれるという安心があった。それ程の存在なのだ。
「おおお、ありがとう!」
皆にそんな事を言われ感激している。今にも泣きそうである。
「先輩の鏡ー!」
「イケメン、かっくうぃ~」
「シュートマシンガン様ー!」
3年の先輩達も大袈裟に拍手をしながら称える。
「お前らそれ馬鹿にしてるだろ!」
そんな感じでいい雰囲気の成宮高校。
次はもう準決勝。
次の相手チームは堅実が取り柄。結構手強い。去年のインターハイ予選ではここに負けたらしい。
先輩達はリベンジに燃えていた。
両校は整列する。
その中で1人、頭が飛び抜けている人がいた。
それはトイレで会った巨人と同じ顔だった。
「デ、テケェ······」
皆は2メートルの人物を見上げて驚愕する。
どうやら1年らしい。1年でこのタッパは凄い。
名前は巨谷 伸夫。名前からでかいのが分かる。
上野に聞いたところ、全国では見た事も聞いた事もないらしい。
県止まりだったのかな? 不思議に思いつつも試合がスタートする。
ジャンプボールは市原vs巨谷。
2人には10センチ以上の差がある。もちろん巨谷が圧倒的な差でボールを勝ち取る。
でかい。2メートルが飛んだらやばいな。
陽斗は思わず感心する。だがすぐに試合に引き戻される。相手チームが攻めてきたからだ。
相手がスリーポイントシュートを打つ。
しかしそれはリングにあたって外れる。
リバウンドをしようと多くの手がボールに伸びる。だが、1つの手がいち早くたどり着いた。巨谷だ。
そのままゴールへと持っていく。
高い······!
成宮高校はいきなり圧倒的な高さを見せつけられた。
読んで下さり、ありがとうございます( ˙ꈊ˙ )




