52,体育祭①
「選手宣誓! 仲間と共に協力し合って、一心不乱に闘い、最後まで諦めず納豆のように粘り続け、暑さにも負けず、水分もいっぱい取って、全力で楽しみ、······」
((((長すぎだろ!))))
誰もがそう突っ込んだ選手宣誓は10分が過ぎてやっと終わった。
長い間、焼けるほどの太陽の下に晒されている生徒達のことも考えて欲しい。
この選手宣誓をした緑組団長、バスケ部キャプテンはこの後すこぶる皆から批判を受けた。
そしてついに、成宮高校の熱い戦いが始まる────
『第1種目目、100m走です』
アナウンスの声とともに皆が動き出す。
「体育祭始まったなー!」
たくさんの観客、テント、広々とした運動場、そして何よりもどこまでも続く澄んだ青空。それが今日体育祭である事を実感させる。
陽斗にとっては小学生以来の体育祭だ。楽しみすぎて心が昂りすぎてやばい。
高校の体育祭とか青春すぎる。全力で楽しもうと、陽斗の目は誰よりもギラギラしていた。
我が赤陣営は既に中々の盛り上がりを見せていた。3年生がすこぶる明るいのだ。
100m走で赤組が上位でゴールする度、歓声が上がる。いいチームである。
そして、第3種目"移動式玉入れ"。陽斗の初陣である。
しかもとっても重要な役割を任せられる。
動く籠に玉を入れ、多くの玉を入れた方のチームが勝ち。陽斗は籠役だ。背中に担ぎながら入れられないように逃げなければならない。
「今宮、任せたぞ!」
「お前なら大丈夫だよな!」
皆は励ましのつもりで言ってくる。だが、陽斗にとってはただのプレッシャーにしかならなかった。
カゴに入れられたら負け。俺に負けがかかっている。
陽斗は負けの事が頭でループしていた。
「今宮くーん、頑張ってー!」
赤組のテントから成美が笑顔でこちらに手を振ってくる。
その笑顔で陽斗は気づいた。負けよりも今は楽しむという事を! 今は全力で、自分が出来ることをしよう!
陽斗は切りかける。そして成美に心の中で感謝した。
よしっ! やってやる!
陽斗はとにかく走って逃げて避けまくった。
中には自分だけを狙ってくるようなウザイやつ(高柳)もいた。すんごいニヤニヤして追いかけてくる。きっと騎馬戦でやられた分をやり返そうとしているのか。
だが結果、陽斗は大活躍をした。断トツで籠の中の玉数が少なかったのだ。結局高柳はひとつも入れれなかった。
赤組は更なる盛り上がりを見せた。
第4種目、綱引き。
ここでは市原が素晴らしいパワーを魅せる。おかげで結果は第2位。決勝では惜しくも青組に敗退してしまった。
第6種目、三輪車リレー。各クラス男子2人ずつによるチーム対決だ。
出場者の中にあの金髪のヤンキーがいる。皆はそれを見て驚いていた。こんな茶番みたいな競技に出るなんて。
ピストルが鳴ると同時に一斉スタート。小さい三輪車に乗るでかい男達。奮闘している姿が見ている人達の笑いを誘う。
ついに白石の出番。顔を真っ赤にさせながらも頑張って漕いでいる。
「紅血の悪魔ー! 頑張れー!」
高柳がそんな白石の滑稽な姿に爆笑しながらそう応援する。完全に貶している。
「え、何? ブラッディ?」
「ブフッ、イタイんだけど······」
周りからはクスクスと笑いが漏れる。
「······殺す」
白石が高柳に殺気のこもった視線を送る。
この後、高柳は白石に思いっきり蹴られて酷い目にあったとか。
第7種目、200m走。カーブがあるし長いので、嫌いな人が多い。
陽斗の隣は後輩の乾だった。陽斗の次に実力を持つ、将来有望な選手だ。彼もまた足が速いらしい。
「先輩、足の速さなら負けませんよ!」
乾は大尊敬の先輩と一緒に走れることにとても嬉しいようだ。本当に可愛い子だ。
だがまあ、後輩に負けるだなんて面目がつかない。
「俺だって負けない!」
陽斗は闘志を燃やす。かなりの負けず嫌いだ。
そしてついに陽斗たちの出番。
陽斗は冷静だった。ピストルの音に耳を傾ける。聞こえるはずの歓声が静かになる。
パンッという乾いた音ととともに走り出す。いいスタートが切れた。そのまま1番でカーブを回り、白いテープを切る。
「うおおおー! 今宮ァー!」
ぶっちぎりのゴールに皆が沸く。
「さ、流石ですね······!」
負けたにもかかわらず、乾は更にキラキラとした目で見つめてくる。更に尊敬が増したようだった。
そして、白石も1着、市原は高柳に敗れ2位だった。西島も華麗に1番で女子達がかなり騒いでいた。
午前の部、最後の競技である全員参加の各団のダンス。
それぞれ物語を考え、それにつけ加えて音楽、ダンス、衣装を用意する。
各団の味が1番出る種目である。体育祭の中で1番力を入れてると言ってもいい競技だ。
「んっしゃー! 赤組行くぞー!」
「「「「「おーーーーー!!」」」」」
赤組のテーマは"パッション"。
赤には魔を除ける不思議な力がある。魔物に支配された世界を皆の赤という名の情熱で取り戻すという物語。
それをダンスで上手く表現していく。
終わった後はスタンディングオーべーションだった。
皆が作り上げた成果だ。
団体競技はこれだからそこ面白い、と陽斗は思った。
ここで午前の部終了。途中経過が発表される。
1位青、2位赤、3位黄、4位緑、5位ピンクとなった。
青組とはかなり差が空いている。後半でもっと稼がないといけないと陽斗は気を引き締めた。
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