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芸能人、やめました。  作者: 風間いろは
高校2年生
57/138

51,新たな居場所

高柳くんのお話やっと終了!

最初は2,3話で終わらすつもりだったんですけどね(⌒-⌒; )

突然空を舞ったヤンキーはかなりの衝撃だったのか、ピクリとも動かない。


その場にいた皆は呆然と倒れたヤンキーを見る。

予想外の出来事にだれも状況を飲み込めていない。


「間に合ったな」


またもや聞き覚えのある声が1つ。

そっちに目を向けると、


「し、白石!?」


高柳は驚いて目を見開く。


そこには拳を突き出した白石の姿があった。強靭そうなヤンキーを吹っ飛ばしたのは白石だった。流石ケンカ最凶と言われた男である。


「サンキュ、白石」


「おう」


市原と白石は短く言葉を交わす。そして次の攻撃に備えて構える。

2対1になりさっきとは形勢逆転。白石もいるので負ける気がしない。


「お、お前は紅血の悪魔(ブラッディ・デビル)!」


残った1人のヤンキーが震えた手で白石を指差し、上ずった声を出す。化け物を見たような恐怖で顔が歪んでいる。


「······紅血の悪魔(ブラッディ・デビル)?」


市原がキョトンとした顔で白石を見る。


「売られた喧嘩を買って気づいたらそう呼ばれたんだよ」


白石が恥ずかしそうにそっぽを向く。


「ブフッ、イタ過ぎるだろ······」


こんな雰囲気の中笑うのはいけないと思いつつも、我慢できず吹いてしまう市原。肩が小刻みに揺れている。


「うっせえ、クソが」


白石は恥をかいた腹いせと言わんばかりに、その元凶となったヤンキーを思いっきり殴る。

ヤンキーは失神してぶっ倒れる。


これで敵は全滅。白石達の勝利である。


ちなみに白石が冷酷な顔(真顔)で一方的にキレて(売られたから買った)残酷なまでに殴る姿が、まるで化け物のようだったらしい。それでこの名前がついたんだそうだ。


それは日本全国のヤンキー達に知られているとか。


「強すぎだろ······」


そんな白石の一方的なまでの強さに唖然する一同。


「く、クソォ······!」


高柳を誘ったチャラい男は突然の形勢逆転に焦っていた。ナイフを取り出し白石に向かって突き出す。


市原と高柳はそんな緊迫な状況に体が動かなかった。死ぬかもしれないという恐怖が体を包む。


しかし白石にはそんなものは通じない。冷静に避けて突き出してきた相手の手を掴む。そしてそのまま男を投げる。


背負い投げだ。


地面に叩きつけられ、かなりの衝撃で男は蹲る。ナイフは投げた際に男の手から離れた。


「し、白石、大丈夫か?」


「こんなの日常茶飯事だったからな」


「マジかよ······」


白石が冷静に対処できたのは慣れかららしい。今までどんなに恐ろしい所にいたのだろうか。


「おーい、みんなー!」


そこに陽斗と西島が走ってくる。後ろにはパトカーと警官がいた。2人は通報して連れてきたのだ。


「これはどういう状況だ? 友達が危険な目にあってるって聞いたんだが······って、白石じゃないか!」


警官の1人が白石を見てひどく驚いている。


「あ、ども」


「まさか、危険な目ってお前の仕業か? 最近、見なくなったと思ったら」


「あの、俺のせいです。白石は助けてくれただけです」


高柳が横から割り込んでそう言う。辛そうな申し訳なさそうないろんな表情が入り交じった顔で俯かせながら。


友達を巻き込んだ事にひどく後悔しているようだ。


「そうなのか! 白石、お前成長したなぁ」


親のような暖かい目で警官が白石を見る。何かこの2人には何かあるようだ。


「先輩、薬物と思われる粉を押収しました」


若い警官が白い粉を見せる。

あの男は取り押さえられ、パトカー連行されたようだ。残りの連中も含めて。


「高柳、お前薬物使ったのか?」


「······使ってない」


市原の問いに高柳は気まずそうに顔を伏せながら答える。


「自分が何しようとしたのかわかってんのかよ!?」


市原は高柳を思いっきりグーパンで殴る。倒れた高柳の胸ぐらを掴む。


口の中から血の味がする。高柳はそれで市原に殴られたことを知った。


「取り返しがつかないとこになるとこだったんだぞ!?」


凄い怒った表情で市原が迫る。


分かっている、そんな事。なんでお前は心配したような怒ったような顔をして俺を見てるんだ? お前には関係の無いことだろ!


「じゃあ、俺にどうしろって言うんだ! 限界なんだよ! もう俺に関わるな!」


「逃げるなんて、高柳くんらしくない」


喚く高柳に陽斗が呟く。


「はあ!? お前に何が分かる────」

「分かるよ」


陽斗は悲しそうな顔で高柳を見つめる。


高柳は思っていた。今宮は毎日楽しそうに明るく生きている。きっと苦労したことは無いんだろうと勝手に思っていた。


「俺さ、母子家庭でしょ? 父が中1の時ばっくれて、中3の時に母が倒れた。本当に1人になるんじゃないかと思うと怖くて。1人で抱えて苦しかった」


「そうなのか······」


「でも、母が目覚めて思ったんだ。もっと自分の為に生きようって。だから、高柳くんも自分がしたいことをしよう? 現実を見た上で生きたいように生きればいい。我慢してばかりじゃつまらないし苦しいじゃん?」


陽斗はにこっと高柳に笑いかける。


「そうだな、ごめん、今宮」


高柳も吹っ切れたように小さく笑う。


「てかおい、少しぐらい相談しろよな」

「そうだよ、友達がいるのにさ」


「わりい、これからは何も隠さない!」


「いや、やっぱ面倒くさそうだからいいや」


「はあ!? さっきの優しさはどこいったんだよ!?」


皆は笑う。いつものようなやり取りになる。

高柳は明るくて自由な世界に無事戻ってきたのだ。


「ていうか、今宮と西島、知ってるか? 白石な、紅血の悪魔(ブラッディ・デビル)って呼ばれてるんだぜ?」


「おい!」


白石は焦る。そんな恥ずかしい名前、知られたくない。


「ブフッ······」

「え、何それ! 厨二病みたいでカッコイイじゃん!」


西島は吹き出し、陽斗は目をキラキラと輝かせる。


「いや今宮、それ褒めてるか貶してんのかわかんねえぞ」


「市原、後で表にでろ、まじで」


「ご、ごめんて! もう言わない!」


白石から殺気が漏れる。市原は慌てて土下座をして謝る。殴られたらたまったもんじゃない!


「あ、高柳のお母さんに電話しないと」


見つかったら電話をすると約束していたのだ。夜遅いが連絡する事にした。


「お母さん······?」


「ああ、めっちゃ心配してたんだぞ! 後で謝っとけ!」


高柳は気持ちがだいぶ落ち着いて、初めてたくさんの人に迷惑をかけていたと知った。心配してくれた人達に謝罪と感謝をしないとだ。


警官の1人はそんな5人の状況を嬉しそうに見つめていたのだった。



後日、高柳は未遂だったという事でお咎めなし。

他の連中は逮捕された。


なんと、高柳を誘ってきたあのチャラい男は高柳食品をライバル視していた会社の刺客だったらしい。なんでも会社のイメージを悪くしようとしたんだとか。


色んな意味で危なかった。


そして家に帰ってたくさん母と話した。母は色々と父に言ってくれたそうだ。たくさん謝ってきた。いないと思っていた味方はすぐに近くにいた事に今更気づいた。


高柳は今、父の弟で副社長である叔父さんの家に住んでいる。学校からはむしろ近くなった。


心機一転して、自分の周りを変えたかったのだ。叔父さんは父とは違って明るくて人に好かれる人だった。


叔父さんも父との優劣に悩んでいた時期があったそうだ。今は自分の利点を生かして会社を支えている。立派で尊敬できる人物だ。


気負っているものが軽くなった。これからはあいつに何を言われようと自分が好きなように生きようと決めた。



高柳の第2章の人生の開幕である────

読んでくださった皆様、ありがとうございますʅ(´⊙౪⊙`)ʃ

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