44,種目決め
ついに50部分目だって!やった!
「はーい、今から体育祭の種目決めをするぞー!」
「やったぁー! 体育祭!」
「えーー、ダルー」
太陽先生の言葉に様々な反応が帰ってくる。嫌そうな者、嬉しそうな者、色々である。
成宮高校の体育祭はかなり大規模。たくさんの競技があり、大いに盛り上がる。
中には変な競技もあり、移動式玉入れや生徒vs先生リレーや三輪車リレーなどがある。
終わった後は後夜祭というものがあるらしい。バンドやそれぞれの団での締めや花火まである。最高だ!
中学の時は参加できなかったので、陽斗はすごく楽しみにしていた。
色は赤、青、黄色、ピンク、緑の5色。陽斗のクラスの色は赤である。
ちなみに高柳や西島がいる5組は緑らしい。絶対に勝ちたい!
「それじゃ、100メートル走から決めてくよー」
壇上で体育委員の人が仕切り、やりたい人や身体測定の結果からどんどん決めていく。
クラスの皆はそれぞれ席を立って、仲がいい人同士で集まっている。何に出るかとかを話している。
「今宮は何に出るんだー?」
「うーん、どうしよー」
市原の質問に今宮は真剣に悩む。黒板に書かれている様々な競技を見る。
せっかく出るのならいろんなのに出てみたい。早くしないとどんどん決まってしまう。どうしよう······。
「クラス代表リレーは男女それぞれ上位6人でいいよな?」
「はーい」
「いいよー」
体育委員の1人が黒板に名前を書いていく。
そこには「今宮」という文字が。
「お、俺!? リレー出れんの!?」
今宮が席をガバッと立つ。
「そりゃそうだろ」
「クラスというか学校内1位じゃん」
陽斗の席の周りにいる市原と白石が突っ込む。
ちなみに市原と白石はクラスのトップ3に入るので2人もリレーに出る。
「ああ、そうなの? やったー、リレー出たかったんだよね~」
陽斗はニコニコと嬉しそうにしている。
黒板を改めて見ると、代表リレーの女子の欄に「林」と書いてある。
「林さん、足速いんだ!」
陽斗が近くにいた成美に声を掛ける。
「うん、まあまあかな」
「いやー、成美はクラスで1番、学年で3位の速さなんだよ!」
成美の隣にいた三浦が元気に答える。
「そうなの!? すごい!」
「ちょっと、紗良ちゃん」
「事実じゃん。自信持ちなよ!」
勝手に自分の事を言われて戸惑う成美の背中をバンバンと叩く三浦。めっちゃ明るい子である。
「おーい、今宮、騎馬戦出るよなー? 身長高いから出て欲しいんだけど」
「いいよー! 面白そう!」
「今宮ー、ブロック代表リレーに出る事になってるからよろしくー!」
「え? 何それー?」
「団別で特に早い人が出るリレーだぞー」
「わかったー! 楽しそう!」
「なあ、今宮、200メートル走出てくれないー? やりたい人いなくて決まらないんだよ」
「承りましたー!」
こうして、どんどん勝手に陽斗の出る種目が決まっていった。
「"移動式玉入れ"のカゴ役誰がするー?」
体育委員が壇上から皆に呼びかける。しかし、誰も手を上げる人はいない。
なぜなら、これは半端なく責任重要だからだ。
"移動式玉入れ"は、文字通り、玉を入れるカゴが動く。カゴを背負って敵から玉を入れられないように逃げ回るのだ。
勝ちポイントも高く、進んでやる人はあまりいない。
「あ、今宮がやったら?」
「いいね。足もはやしいすばしっこいしな」
体育委員の一言に皆がウンウンと頷く。
というわけで、陽斗が何も発することなく決まった。
まあ面白そうだし、いっか。
「先生vs生徒リレーは誰が出るー? 男女1人ずつなんだけどー」
この"先生vs生徒リレー"という競技は文字通り先生と生徒がガチでリレー対決するというもの。先生は早い者が選抜される。
先生チームに勝てばプラス10点貰えるのだ。結構デカい。
「太陽先生は出るんですかー?」
クラスのとある男子が前の端の方で種目を決めている生徒達をニコニコしながら見ていた太陽先生に聞く。
太陽先生は皆が真剣に体育祭を挑んでくれると思い、嬉しいのだ。運動を子供達に積極的にして欲しいのだ。
何故数学教師になったのか謎である。
「出るぞ! 俺はこう見えて足が速いからな~!」
太陽先生はドヤ顔で胸を張りながら立つ。
いや、見た目からそうっぼいけど、と思う4組の生徒達。
「50メートル走何秒ですかー?」
「おお、聞きたいか? そんなに俺の事を知りたいか! どうしよっかな~」
生徒が自分の事に興味を持ってくれたと嬉しそうにする太陽先生。勿体ぶらして中々言おうとしない。もっと構ってほしそうだが、めんどくさい。
「ならもういいっす。次の競技は~」
長くなると思い、体育委員が次の種目の話へと移る。時間もおしているのだ。
「え!? 俺の話は······」
太陽先生はシュンとして席に座り、悲しそうにしている。子犬のようで申し訳なくなるが、話が長いのでしょうがない。
「三輪車リレーの男子が1人でまだ決まってないんだけど、誰かやらない?」
体育委員の言葉に男子は誰も反応しない。顔を下に向けたり、嫌そうにしたり。
なぜなら、この競技はする方がかなり恥ずかしい。
体が大きく成長した高校生があの小さい三輪車に乗るのだ。うまく漕げず、その奮闘する姿がかなり滑稽である。見る人の笑いの的となるだけなのだ。
そんな事を進んでやりたいという人は余りいない。なので、毎年ジャンケンで決めることが多い。
「あ、白石やれば? リレーと騎馬戦だけだろ?」
シーンとしている中、市原が声を出す。
「は? やだよ」
白石は思いっきり嫌悪感を出す。
教室は凍りつく。恐ろしい存在の白石が怒らないか不安なのだ。市原に何言ってんだという目線が集まる。
「え!? 2つしか出ないの!? せっかくなんだからもっと出ないとだよ!」
陽斗が必死の形相で白石に迫る。
せっかくの楽しい行事を無駄にして欲しくはないのだ。
白石は体育祭は暑いしだるいので、ずっとサボっていたのだ。
出たくないが、こうも迫られたら断りきれない。
白石は沈黙する。
「沈黙って事は了解ってことだね! 体育委員さん、白石くん出るって!」
「は!?」
白石は驚いて陽斗の方を向く。
皆も驚いて白石を見る。ヤンキーが三輪車リレーに出るとは思わない。変な事を言った市原を殴ると思ったのに!
「え、本当に、いいのか?」
体育委員は戸惑う。
あとこれを決めれば種目決めは終わるし、こうなったらもう断りきれない。
「ああ」
白石はため息をつきながら答える。
「あ、ありがとう」
体育委員は意外そうな顔をしながら感謝する。皆も驚いて白石を凝視する。
意外と怖い人ではないのか?と皆は思った。
そうして、無事に1時間で種目決めを終わることが出来た。
読んでくださる皆様、本当にありがとうございます٩( ᐛ )




