4,昼休みと連絡交換
念願の一般高校生となり、初日の四時間目が終わって昼休みに入った。
高校の昼休み! 友達と教室で食べる青春もの! 転校生だからといって遠慮する訳にはかない!
陽斗は目をギラつかせながら、どこの輪へ入ろうかとクラスをキョロキョロと見回す。
「お~い! 今宮! 一緒に食べよーぜ!」
教室の前の方で数人で集まっていた市原が、陽斗に手を振って呼びかける。
「え!? いいの!?」
「そりゃあ、転校生を一人にさせとくのはあんまりだろ! 遠慮すんな!」
市原は気さくに笑う。
うおー! 市原くんめっちゃいい人! まじ感謝!
陽斗は嬉しそうに市原達の所に行く。他に2人いる。
確か、西島 龍馬君と高柳 健太君だったかな。二人とも体がしっかりといている。恐らく何かしらの運動部なんだろう。
「いやー、ありがとう。誰か友達と食べたかったから、呼んでくれて助かった!」
「おう、いいってもんよ」
何故か高柳君が言う。いや、呼んでくれたのは市原君なんだけど。
「今宮くん、よろしくね。俺、西島 龍馬」
西島君が爽やかなイケメンスマイルを浮かべる。
モテそうな雰囲気が漂っている。これは女子に人気だろうなと陽斗は思う。
「なあ、お前、成美ちゃんと仲良くね!? 何!? 狙ってんの!?」
高柳君がニヤニヤとしながら陽斗を見る。
「確かに、林は可愛いもんな~。性格も良いし」
それに市原君も同情する。
「え!? 違うよ!? 朝、道に迷った所を助けてもらっただけだから!」
陽斗は頭をぶんぶんと振りながら否定する。
「まあ今宮君、遠慮しなくていいよ。青春じゃん」
西島もニコリと陽斗に笑う。
西島君は味方してくれると思ったのに!
てか青春だけど、まだ早過ぎない!? もう少し学校生活を謳歌してからがいい!
「ほんとにそんなんじゃないから! じゃあ、君達も彼女一人や二人いるんじゃないの?」
陽斗は自分の質問攻めを逃れるために質問返しをする。
「高柳はな、高校入学して六ヶ月で既に三人の女子に告ってんだぜ!?」
市原が高柳を指さしながらニヤニヤする。
「バ······バカ! なに人のこと喋ってんだよ!」
高柳は市原の口を慌てて抑える。
いや、それはさすがに······引いた。
どれだけ尻が軽い男なのだろう。
陽斗は嫌なものを見る目で高柳を見る。
「くそ! 今宮に女たらしのイメージがついてしまったじゃないか! 転校生の前では優しい純粋な男でいようと思ったのに! お前のせいだぞ! 責任取れや!」
高柳は怒って市原を押し倒し、取っ組み合いが始まる。
おお! 高校生男児のじゃれあい! これこそ青春というものだ! 俺も入りたい!
陽斗はさっきとは違う、輝かしい目で二人を見る。
「今宮くんって、凄く楽しそうにしてるね」
西島が陽斗にニコッと笑いかける。
「そりゃもちろん! 青春だもの! そういえば、西島くんは彼女いる?」
陽斗は単純に気になって聞いてみた。
そりゃあ、爽やかイケメン君だもの。絶対にいるだろう。
陽斗は確信する。
「いや、付き合ってはないけど、高校に入って五人の女の子に告られたな」
「え!? 付き合ってない!? てか、すご!」
付き合ってはいないのは意外だったが、高校に入って六ヶ月で五人の女子を落としたというのか!? 西島君、恐るべし!
陽斗は西島に賞賛の拍手を送る。
「なあ! 今度、今宮の転校祝いでどっか遊び行かね!?」
気持ちが落ち着いた高柳君がそう提案する。
遊び!? 高校生!? うおー! これを待ってましたとも! 青春じゃないか!
俺は目を輝かせる! しかし、いいのか? いきなり転校してきた奴に。
「あ、いいね」
「それいいな! 珍しくナイス、高柳!」
2人とも賛成してくれた。嬉しい! ありがとう!
陽斗は3人に手を合わせて拝む。
「市原よ、珍しくじゃなくていつもだろう?」
高柳がウィンクをしながら市原を見る。
「あ、ハイハイ、ソウデスネー」
市原が突っ込むのもめんどくなくなったのか、適当に応える。
また2人が取っ組み合いを始める。
「あ、それじゃあ、連絡交換してた方がいいよね?」
西島がそんな2人を無視して言う。
「だな!」
「そうしよう!」
市原と高柳が取っ組み合いをやめて急に乗り気になる。
れ······連絡交換!? まじで!? 初日からいいことづくし過ぎる。
「いいの!?」
「おお、何をそんなに喜んでるか分からないけど、いいぜ! 友達だしな!」
高柳がまたウィンクする。
おおおお! と······友達! なんていい響き!
陽斗は感動しながら、転校初日目にして3人の連絡先をゲット。
いやあ、もう初日にこんなに青春感じまくって最高だなあ!
陽斗はつい嬉し泣きをしそうになる。暖かい仲間に囲まれて本当に幸せだ。
だけど、まだ連絡先欲しい。
連絡交換ブームがやってきた陽斗は教室を見渡す。そして、窓側の真ん中付近にいる成美が目に入った。
あ! 林さん! 友達だし交換しときたいな。
そう思って陽斗は成美の元へと歩いていく。
「林さん、連絡先交換しない?」
陽斗はとてもニコニコしながら成美を見る。
「え?」
成美は少し驚いたように陽斗を見た。
「いいよ」
二人はお互いに連絡先を交換する。
やったー! 4人目!
「林さん、ありがとう!」
「う、うん! こちらこそ」
成美は少し顔を赤くしている。
どうしたのだろうか、熱なのか? と思ったが、すぐに隣にいる女子生徒と話す。
大丈夫そうだ、良かった。
そう思って市原達の輪に戻った。何やら、皆してニヤニヤしている。
「なに?」
「いやー、見た目によらず、今宮って積極的だな!」
市原が言うと、残りの二人もウンウンと頷く。
「え? どこが?」
陽斗はきょとんとして答える。
その反応に三人は驚く。
「は!? お前自覚ないの!? 自ら女子の連絡先をゲットしてんじゃないか!」
「え? だって、友達だし、連絡先もっと欲しいし」
陽斗はあっさりと答える。
それに三人はハァーーとため息をつく。
ん? 俺、なんかした?
「まあ、こいつは無自覚の罪野郎だな」
「ああ、無自覚の女たらしだな」
「うん、今宮君、高柳と同類じゃん」
「「いや、一緒にすんなよ!?」」
西島の言葉に陽斗と高柳の声が重なる。
この後、授業が始まるまで自覚をもてだの、男のあるべき姿だのを延々と語られた陽斗だった。
読んで下さり、本当にありがとうございます!
書きたいこと書いてたら思ったより長くなってしまった!