43,身体測定②
途中経過、1位白石、2位陽斗・高柳、4位市原・西島
第6種目目はシャトルラン。持久力だけでなく、キツイのに耐える根性もいる。
今回は4組と5組の2クラス合同で行う。
2クラスは何メートルか離れて1列にズラーと並ぶ。
「林さん、頑張ろうね!」
「う、うん!」
陽斗は目を爛々と輝かせる。先程の長座体前屈でビリを取ってしまったので、取り返そうと必死なのである。
「あれ? 緊張してるの?」
成美がいつもより硬い表情をしている。
「うん。でも、今宮くんが隣なら心強い」
成美がフワッと笑う。
それを見ていた男子達はドキッとする。
「アハハ、俺もだよ! 去年の記録を乗り換えようね!」
陽斗も満面の笑みで返す。
「だね! 頑張ろう!」
陽斗には学校一の美少女の可愛いセリフと笑顔は効かないようだ。
成美は成美で狙って言った訳では無い。恐ろしい女の子だ。
2人共鈍感で無自覚な所があるのだ。
音楽と共に皆が走り出す。苦しい時間が始まった。
40回になると、既に女子がチラホラと脱落している。
60回を回り、女子は4分の1以上が脱落。
75回となり、成美が脱落しそうになった。かなり息も上がっていてキツそうだ。去年は78回だったらしい。
絶対に超えたいと言っていた。
「あと少し!」
陽斗がわざと遅れて成美の隣に並んでぼそっと呟く。
諦めかけていた成美の表情に闘争心が再び現れる。コクっと頷く。
そんな成美に陽斗はニコッと笑いかける。
成美はそれから83回で脱落するまで、陽斗の背中を見て走っていた。彼の背中に励まして貰っていた。
マネージャーの割にかなり頑張った。
成美はこの結果に満足し、励ましてくれた陽斗に感謝する。
ついに100回。女子は6人が残り、男子はまだ半分が残っている。
140回となれば、男子も残り5人。
陽斗と市原と高柳と西島であった。
白石は135回で脱落。部活を始めたのが遅く、皆より体力は劣っていた。
サボりがちなヤンキーが真面目に走る姿に皆はかなり驚いていた。
皆はパンの為に必死であるのだ。
毎日走り、登下校を自転車で爆走している陽斗はかなり体力がついた。まだまだいける!
142回で西島が脱落。特に女子達から大きい拍手を送られる。イケメンが汗水流して走る姿に女子達はキャーキャー言っていた。
市原が146回でついに倒れこむ。悔しそうに顔を歪めている。
残るは陽斗と高柳。
2人共激しく息が上がっている。
お互いに譲らず150回を突破。
必死に走る2人。
「も、もう無理!」
152回にしてついに高柳が倒れ込む。
高柳は悔しそうに「くそー!」と言いながら、拳を床にぶつけていた。
そして陽斗は156回で脱落。同じく倒れ込む。周りから拍手が送られる。
やった、パンに近づいた······!
陽斗は荒く息をしながらもニヤッと口が笑っている。
外の競技に移り、第7種目目はソフトボール。
残すとこあと2種目である。
僅差で白石の勝利。喧嘩で力でもついたのだろうか。
2位の市原は自信があったのにも関わらず負けたため、かなりショックを受けていた。
最後は50メートル走。
3人同時で走るらしい。
陽斗と市原は出席番号が前後の為、一緒に走る。
「負けねぇぞ!」
「俺だって!」
2人が目を燃やしながら睨み合う。
「うおー、お前ら熱すぎだろー! いいな!」
何故かいる太陽先生がそんな2人に激しく拍手をしている。
「位置について、よーい」
パンッ!
ピストンの音と同時に3人の男が走り出す。
陽斗はスタートダッシュは市原に遅れを取ったが、その後の伸びが凄かった。あっという間に市原を抜かし、1着。
「5,9秒!」
記録が言われた瞬間、聞いていた人達が驚く。
地味そうな奴が半端なく速かった。
「今宮早すぎんだろ!」
6,5秒だった市原が陽斗に駆け寄る。足にはかなりの自信があったのに! このグループレベル高すぎんだろ!と市原は怒った。
ちなみに高柳が6,3秒、西島が6,7秒、白石が6,4秒という結果だった。皆が6秒超えであった。
やはりこのグループは身体能力バカが多い。
結果、総合第1位は陽斗!
皆が涙を流しながらくれたパンを美味しく頂いたのだった。




