41,事件解決
遅くなってすみません( ;ᯅ; )
「俺、今宮の眼鏡を取った姿見たけど、"青羽 瞬"じゃねえよ」
今まさに陽斗が眼鏡を取ろうとした瞬間、隣に座っていた白石がクラス中に聞こえるような通る声を出す。
「え!?」
「白石! お前、今宮の顔を見た事あるのか!?」
「ああ」
驚いて詰め寄った市原に白石は頬ずえをつきながら何気なく答える。
助けをくれた白石に陽斗は心の中でとても感謝する。
だが、陽斗に"青羽 瞬"かを聞いてきた女子達は期待の顔から少し残念そうな顔に変わっている。
なんかごめんと陽斗は思った。
「どんな顔なんだ!?」
「普通にイケメン」
「マジかー!」
「"青羽 瞬"じゃなくても気になるー!」
それを聞いた皆がざわつく。さらに陽斗への外せという目線が強まる。
先程暗い顔になっていた女子達も明るい顔に蘇って興味津々だ。
顔がいいというのは生きる上で得である。
「けど、今宮は直接人の目を見れないから眼鏡してんだよ」
「え!?」
「そうなの!?」
皆が驚いて陽斗を見る。陽斗も驚いて白石を見る。
だって、そんなのは陽斗本人も知らない。真っ赤な嘘である。
まあ、俺をかばってくれてるのはありがたいけども!
それに白石はいつも通り全く表情を崩さない。凄いなと陽斗は感心する。割と演技の素質があったりして。
「そういう病気みたいなのあるだろ? な?」
白石が陽斗をじっと見て同意を求めてくる。はいと言えと謎の圧を感じる。
「う、うん。実はそうなんだよね······」
陽斗は目を伏せ、気まずそうな声を出す。その態度が、白石の発言を肯定する。
これくらいの演技ならお手の物。動揺したぐらいじゃ全然ブレない。役者の中には突然変なアドリブを入れてくる幼なじみや師匠がいるからね。
「そうだったんだ、今までごめんな!」
「そ、その、ご、ごめんなさい!」
「いや、いいよ······」
市原が今まで追いかけ回していたことに謝り、陽斗に"青羽 瞬"かを聞いてきた女子生徒が申し訳なさそうに謝る。
クラスの皆も陽斗にメガネを外すそうと迫ったことに反省しているようだ。
まさか、陽斗にそんなことがあるとは思わなかったのだ
そんな顔をされたら陽斗は余計に申し訳なくなる。青春のためとはいえ、嘘をついた事に心が痛い。
とはいえ、白石のおかげでなんとか乗り越えられた。とりあえずバレなくて良かった······。
陽斗は白石にありがとう、という感謝の表情を見せる。白石は薄く笑う。
そうして何とか朝を乗りきった陽斗は、昼休みでもたくさんの女子生徒が来て今宮に聞こうと近づこうとする人もいたが、周りの配慮のおかげで大丈夫だった。
部活でも市原や白石が気を利かせてくれた。今まで陽斗にメガネを外せと急かしていた人達は謝ってきた。
もうしわけない······。
陽斗は嘘をついた事に更に心がえぐられる気持ちがした。
それから、誰も陽斗にメガネを取れという事は全くなくなったのだった。
陽斗は白石に「ありがとう」とまじで感謝し、色んなものを上げようとしたり奢ろうとしたりした。しかし、白石は「当然の事だ」と言って何も受け取ろうとはしなかった。なんていい人なのだろう。
そうしてその日の夜、1つのTmitterのつぶやきが話題になった。
それは冴木が呟いたとある一言からだった。
『今、瞬の目撃情報あるけどそれ違う人じゃない? 今騒がれてる学校とは別だから』
それを見た人達は騒ぎ、リツイートし、あっという間に広まっていった。
会えると思っていた人達は落胆するが、芸能界から仲の良かった2人が今も関係を持っている事を知り、喜ぶ人もいた。
しかし、実際に見た人達は反論した。あれは絶対"青羽 瞬"だったと。
だが次の日のとある出来事で、冴木の呟きの信憑性が爆発的に高まった。
なんと、"青羽 瞬"が日江高校の近くの駅に出没したのだ。しかもその制服を着て。
更に日江高校の中へと入っていった。
当然、その駅や学校前は大勢の人でごった返した。
多くの人は「あのかっこいい人は誰!?」と騒ぎ、「"青羽 瞬"だ!」遅れて気づく。
陽斗は見た目が抜群にかっこいいしスタイルもいいので、いるだけで目立つのだ。
Tmitterではそんな"青羽 瞬"の写真や呟きが広まり、SNSも凄い騒ぎとなった。リツイートされ、拡散され、それを見た人達はどんどん駅や学校前へと集まる。
反論していた人達は認めざるを得なくなった。
引退してもなお、絶大な人気を保つ"青羽 瞬"。
警察が来るほどの騒ぎであった。
もちろんそれはLIMEニュースに載った。
陽斗はこの騒ぎに驚いていた。
この日江高校の制服は冴木から借りたものだ。
日江高校似通っていた冴木は校長と親しく、今回陽斗は許可を得てこういう事をしていた。
冴木に呟いてもらい、午前中にちょっと騒がれて帰るつもりだった。それがこんな騒ぎになるなんて。考えがちょっと甘かった。
それと、髪色も一日染めで茶色にした。
ちなみにこの日は午後から部活で、午前中に行っていた。サボりとかじゃないからね?
この後、陽斗はいつもの眼鏡をしてコソコソと裏口から出ていった。家に着き急いで髪色を落として自転車を爆走させてなんとか部活に間に合ったのだ。
既に部活内では"青羽 瞬"の話でもちきりだった。
情報回るの早いな、と陽斗は現代メディアに恐れた。
しかし、無事に誤魔化すことが出来たようだ。この出来事以降、陽斗が疑われることもパッタリなくなり、朝や昼休みは平穏になった。
「上手くいったな」と白石が少し安心したようにする。
助言をくれた白石と加担してくれた冴木には本当に感謝しかない。
白石にはたくさんの豪華な食事を与え、冴木にはイニシャル入りのネクタイをプレゼントした。
白石は今まで以上に今宮家に入り浸った。
冴木はスーツを着る度にこのネクタイを愛用した。テレビでスーツ姿の冴木を見る度に付けているのだ。
あまりにも付けすぎている為、それに気付いた人に「誰からのプレゼントですか?」と聞かれ、「大好きな人からです」と答え多くの人誤解を招いたという。
また、成美は実際に駅で"青羽 瞬"を見たらしい。それを嬉しそうに話すのだ。ファンだということがバレバレである。
陽斗は成美がファンだったという事実に驚きつつも、少し嬉しく感じた。
陽斗は無事にまったり青春生活を取り戻した。
しかし、陽斗がイケメンであることが広まり、学校内で陽斗が知らないところで騒がれているのだった。
陽斗の本当の顔が気になり、眼鏡を外したいという欲求がさらに一層ます人が増えた。
また、地味な姿の人が本当はイケメンだというギャップに萌える人達が続出していたのだった。
陽斗の知らないところで平穏な日々は崩れていた。
読んで下さり、ありがとうございます(੭ ᐕ)




