38,後輩
陽斗達はついに高校2年生になった。ということは、新一年生が来たということである。
そう、後輩が出来たのだ。
中学の時は忙しすぎて後輩との関わりが薄かったので、高校は仲良くなりたいのだ。
今日は午前中入学式があり、午後は部活見学や体験である。ここ一週間は新入生が部活を決めるための期間である。
入学式で入場してくる高1は1個しか違わないが初々しい。中学から上がりたてだし、あどけなさが残る。
入学式では再び校長先生の長話が開催される。新入生は期待とワクワクした表情をみせる生徒が多いが、在校生は寝ている人が多い。
白石は屋上で寝るらしい。
隣に座る市原は激しくヘドバンをしていた。
入学式が終わった後、市原は首を痛めていた。
***
午後、バスケ部が活動する体育館には多くの見学者が集まっていた。数えて19人である。
2、3年生合わせて20人に対し、1年生19人。この1週間で増減はまだあるだろうけど、今年は結構多い。
それは、自己紹介を聞けば分かった。
「去年のウィンターカップを見て、憧れました!」
「試合の生中継を見て感動しました!」
「今宮先輩と一緒にプレーしたかったからです!」
後輩達がキラッキラとした目で見てくる。特に陽斗をである。
去年のウィンターカップは初出場にしてベスト8だった。スポーツ雑誌やテレビでは割と大きく取り上げられた。
ウィンターカップの余波がここまであるとは。
皆素直で可愛らしいなぁ。
陽斗は嬉しそうな顔で後輩達を見る。
「それじゃあ、大丈夫なやつは早速体験しよう! ウェアとかは貸すから。靴は俺達の体育館シューズとか前のでよければ」
キャプテンが入部希望者にキビキビと指示をする。さすが出来る人である。
1年生は半分以上が体験することになった。残りは端で見学である。帰りは自由である。
「「「「よろしくお願いします!」」」」
元気な1年生の挨拶と共に練習が始まった。
最初は簡単なストレッチやウォーミングアップから始まり、その後トレーニングをする。ジャンプ力を高めるものだったり、持久力を鍛えるものだったり、体幹系だったり、その日で変わる。
それが終わればドリブル練習。
初心者の人も2、3人いるようで、教えながら進めた。もちろん後輩と仲良くなりたい陽斗が率先して。
あまりのドリブルの技量は初心者から見ても明らかだ。1年生は驚き、尊敬する。
経験者は教えて貰っている初心者を羨ましそうに見る。
成宮高校の練習に、2、3年生は真面目に取り組む。誰も手を抜いてダラダラしている人はいない。
これも陽斗の熱心ぶりに感化されたり、ウィンターカップで全国のレベルを間近に感じたからである。
先輩達の練習の熱入りっぷりに、1年生も影響される。
「じゃあ、10分後速攻練習に入るからなー!」
川田が大声で指示する。
皆はマネージャーが用意してくれたドリンクを飲む。
1年生は成美の美貌に見惚れているものが多かったような。
休憩にも関わらず、1年生は陽斗にドリブルやシュートなどの教えを請う。
皆は星野レベルのエースである陽斗に直接関わり、習いたいのである。
陽斗は喜んで嬉しそうにしながら丁寧に教える。
バスケ部の面々は後輩が出来たのが嬉しいんだなと察し、暖かい目を向ける。
皆良い人達である。
「じゃあ、速攻練習すっぞー」
1年生を交えて再び練習が始まる。
白石のヤンキーな見た目に何人かはビビっていたが、それなりに上手いのと、段々悪い人でないと認識すると、挙動不審も無くなった。
バスケ初めてまだ2、3ヶ月なんだけどなぁ。
そして、陽斗は早速華麗なドリブルやシュートを魅せまくる。
次の試合形式の練習でも陽斗は1年生達を抜き去る。圧倒的なプレーに1年生達は羨望の目を向ける。
1年生が誰もついていけない中で1人、実力が飛び抜けている存在がいた。
身長は175くらいとそこまで高くはないものの、シュート率が半端ないし、ドリブルもキレッキレですばしっこい。
かなりの逸材が入って来た。
彼は乾 勇輝。
聞いたところによると、わざわざ他県から来たらしい。
なぜかと言うと、陽斗に憧れたから。
生でウィンターカップ本戦を見ていて感動したらしい。
陽斗が乾にアドバイスをすると、凄く嬉しそうに一言ももらさまいと聞いてくれる。
練習態度も人一倍真面目、熱心である。
犬のような可愛らしい子である。
練習が終わり、1年生は帰る。
2、3年生は自主練をしたり、ダラダラと話したり様々だ。
初心者であった1年生は、成宮高校の思ったよりも高いレベルに不安そうである。きっと、ついていけるのか心配しているのであろう。
「おい、1年」
陽斗が何かしら言おうとする前に白石が声をかける。
1年生は見た目が怖い先輩に声をかけられ、ビクッと肩を揺らす。なにかされるんじゃないかと青ざめている人もいる。
「俺はバスケ初めてまだ2ヶ月だ。成宮は効率がいいし、人もいいから心配しなくていい」
そんな白石の言葉に驚く。全く練習で目立たず、むしろ上手な方に入る人がまだバスケ歴数ヶ月だと!?と言いたげな顔だ。
初心者の1年生達はキラキラとした目で白石を見る。
これで1年生は大丈夫そうだ。
陽斗はほっとする。
しかし、白石くんがそんな事を言ってくれるなんて!と陽斗は嬉しくなった。
お陰様で1年生を勇気づけることが出来たし、白石を良く思ってくれる後輩もできた。
そんな白石を嬉しく思う他に、これからの後輩達との練習を楽しみに思うのだった。
読んで下さり、ありがとうございます(❃•ᗜ•)
ちなみに私はテニス部だったよ!
焼けすぎてめっちゃ黒かったな笑




