番外編 白石 廉
遅くなりましたー!<(_ _)>
自分はずっと孤独だった。友達もいないし、家族と呼べる人もいない。
家の事情は少し複雑である。両親が小さい頃離婚して、俺は母に付いて行った。
そして小学2年の時、新しい父がやって来た。最初は優しくて、俺は家族が大好きだった。しかし、段々義父はよく細かい事でも叱るようになり、ついには暴力まで振るってきた。
母は何も庇ってくれなかった。ただ俺が殴られているのを俯いて見ないふりをしていた。
母は俺よりも義父を愛していた。義父に嫌われないように頑張っているようだった。
俺は段々心を閉ざしていった。
好きな人に暴力を浴び続ける日々。
何度も助けを求めようとした。だが、他人に話せば殺すと脅され怖くて誰にも言えなかった。
帰りたくなくても、そうしないとと余計に次の日が激しくなる。そっちの方が何倍も辛くて苦しいから律儀に家に帰った。
心は冷えていき、次第には笑わなくなった。
すると、もっと暴力はエスカレートした。無愛想な息子には罰を与えるんだと。バットで叩かれ、煙草の火で炙られた。浴槽に顔を突っ込まれ、溺れかけたこともある。
身体中には様々な傷ができた。
中学生になって、何もかもが嫌になった。もう我慢できなくなったのだ。
このまま黙ったまま殴られるのなんて嫌だ。好きなように生きていたい。
そう思って、金髪にしてピアスも開けた。
強くなる為に。見た目から変えようと思った。
学校は面倒臭いからサボった。喧嘩は売られたから買った。家には次第に帰らなくなった。
そんなある日、遂に義父に抵抗して殴り返した。身長も俺の方が高いし、力も義父より強くなった。
義父は俺を恐れ、殴らなくなった。今やいないもの扱いするようになった。
毎日をふらふらと生きる日々。
なんというか、つまらない。
楽しいと思えることがない。
皆、俺を恐れた目で見てくる。皆、俺を避ける。
こんな見た目だから? 喧嘩が強いから? 無愛想だから?
ただただ孤独。
だが、そんな日々が続いた中3の時に強者を次々に倒す輩が現れた。そいつは俺を恐れなかった。だからその人のことが気になったのだが、2週間後どこかへ消えてしまった。
一応、高校には入った。何か楽しい事があるかもしれないと期待して。
だけど、何も変わらなかった。
俺が変わろうとしてないからかもしれないが。
だがある日、そんな日も突然に終わりが訪れる。
それはいつもの様にふらふらと街を彷徨い、喧嘩を買っている時のことだった。
俺は敵を殴り倒したと思って油断していた。
1人、立ち上がって俺を殴ろうとしてきた。横目で見えたが、咄嗟のことで体が動かない。久々に1発貰うと思った。
その時、どこからか飛んできたペットボトルが敵の頭に当たり、一瞬動きが止まった。俺は躊躇なく顔面を思いっきり殴り倒す。
危なかったと思いつつ、ペットボトルが飛んできた方に目を向けると、そこには男が1人いた。
長めの髪に眼鏡、気弱そうな雰囲気。地味な奴だ。
とりあえず俺は礼をした。実際、それがなかったら俺は殴られていたから。
すると、何故か地味男は俺をキラキラとした目で見てきたんだ。
俺は戸惑った。今までそんな目で見られた事はない。しかも、自分に全く臆しない。どこか新鮮に思った。そんな奴は初めてだった。
その男は今宮陽斗というらしい。同じ高校であった。しかも同い年。
俺は少しばかり興味をもった。
その後、今宮と色んな話をした。
すると、彼が目をギラギラとさせてバスケ部に誘ってきた。
運動は別に嫌いでもないし、暇を潰せるならいいかと思って了承した。
そして何故かそのまま今宮の家に行く事になった。
別にこの後どこにも行くとこないしそのまま俺は今宮に引っ張られた。
今宮は俺の事を"友達"と言った。
驚いた。こんな俺の事をそう呼ぶなんて。むずかゆかった。だが、悪くは無いと思った。
今宮の母も俺の事を全く嫌な目で見なかった。寧ろ優しく出迎えてくれた。
こんな夜遅いし、不良の友達にも関わらず。
今宮の母は俺の目を優しいと言ってくれた。驚いた。そんな事言われたのは初めてだ。皆、俺の事を嫌な目で見てくるのに。正直、嬉しかった。
今宮の母の料理は美味しかった。家で食べる暖かい食事だなんていつぶりだろうか。
俺は帰るまでたくさん話した。
今宮に泊まってもいいなんて言われたがそれはさすがに断った。そこまで迷惑かけさせられなかった。
2人はまた来てと笑顔で言ってくれた。
今日あったばかりのやつなのに、2人はお人好しすぎると思う。
こんなに暖かい場所は久しぶりだ。居心地が良かった。また行きたいと思った。
そして次の日、俺はバスケ部に入った。
バスケは半端なく面白かった。こんなに熱くなったのはいつぶりだろう。段々上達していくのが分かって凄く楽しい。
しかし、今宮には全く歯が立たなかった。次元が違うと思った。バスケをしているあいつは半端なくかっこよかった。
最初は怖がっていた皆とも次第に打ち解けていった。
帰りはほぼ毎日今宮の家に寄った。たまに泊まらせてもくれた。
また、今宮が部活後に公園で週3でバスケをしているのにも行った。
半端なく暑苦しくうるさい坊主がいた。そいつも生意気にもバスケがうまかった。そんな2人とバスケが出来て、負けばかりは辛いが半端なく楽しい。
俺の人生は著しく変わった。毎日が楽しい。
全ては今宮のおかげだ。あいつが俺に暖かい場所を与えてくれた。楽しい事を教えてくれた。
あいつがいいのなら、俺はずっとお前の友達でいたいと強く思う。
ずっと暗い道をさまよっていた俺に、優しく手を差し伸べて道を与えてくれた。
感謝してもしきれない。
もしもあいつが困っているのなら、いつでも助けにいこうと固く誓った。
俺もいつか、どこかの誰かに道を与えたい。
それが俺のなりたい人物であり、夢である。
読んで下さり、ありがとうございます( ᷇࿀ ᷆ )