29,学食
冬休みも終わり、3学期が始まった。
そんなある日、陽斗はお弁当を持ってこなかった。忘れたとかではなく、わざとである。
何故かって? それは青春という名の学食に行くためである!
というわけで、陽斗といつものメンバーは校舎の1階にある食堂に来ていた。成宮高校の学食は美味しいことで有名らしい。
陽斗はワクワクしていた。学校にレストランのような場所があるのだ。これを青春と言わずにすませるのか!? いや、無理である。
食堂は広く、綺麗だった。主に白が基調とされていて、多くの学生で賑わっていた。
陽斗は豊富なメニューをキラキラとした顔で見る。
「おおおお、沢山ある!」
「成宮高校の学食は沢山のメニューがある事で人気だしな」
市原が自慢げにする。
「あああ、ハンバーグもいいな、あ、オムライスもある! カレーに唐揚げもあるのか! 選べない······」
陽斗はメニューと睨めっこをしていた。どれも食べたいそうで、中々決めれていない。
「なら、おかず交換する? そしたら色んなの食べれるよ」
西島がそんな陽斗にニコッと笑いかける。
お······おかず交換! よく学生達がやるものだ! やりたい!
「やろう!」
陽斗はキラキラとした目で西島達を見る。
「お、おお、そんなにお腹すいてんのか。じゃあ皆で別のもの頼むか」
ということで、陽斗は唐揚げ定食、市原はトンカツ定食、高柳はハンバーグ定食、西島はカレーとなった。
「あ、おばちゃん、ライス大盛りで!」
高柳が元気よく頼み込む。
「男の子はよく食べるねぇ」
食堂のおばちゃんはお皿を優にはみだすんじゃないかっていうくらい盛ってくれた。太っ腹である。
「うおお、そんな事も出来るんだ」
陽斗はその光景をキラキラな目でジッと見ていた。
「そこの子も大盛りにする?」
「します!」
陽斗達は空いている席を探す。陽斗はお米が1粒もお皿から落ちないように、慎重に慎重に運ぶ。
「ねえねえ、あの人、確か冴木くんの友達じゃなかった?」
「え!? そうなの!?」
「確かバスケも凄く上手みたいだよ!」
歩いていた陽斗の近くにいる女子達が騒ぎ出す。
陽斗は嫌な予感がし、早めにその場を立ち去ろうとした。だが、それは遅すぎた。
「ねえ、冴木くんの連絡教えて!」
「亮くんと食事とか出来ない?」
女子達が一気に陽斗を囲む。
「いや、ちょ、無理です!」
早く食べたいのに! せっかくの唐揚げが冷めてしまう!
「あ、西島くんだ!」
ある女子生徒が今宮の隣にいた西島を指さす。西島は爽やか笑顔で対応する。
「キャー! かっこいい!」
「今度、遊びに行かない?」
西島も囲まれる。
「ねえ、あの人、高柳食品の長男じゃない?」
「うそ! すご! 将来有望じゃん!」
それを見ていたある女子生徒が西島の隣にいた高柳を指さす。
「あ、あのう、今度、お食事でもしませんかぁ?」
「次の日曜日空いてない?」
高柳にも女子が集まる。
「ぬはは、俺ってカッコイイからなぁ!」
なんて的外れなことを叫んでいるやつがいた。
「高柳くんの隣にいる人は誰かな? あの人も凄い人かな?」
「いや、違うよ。普通のバスケ部だよ」
「あ、そうなんだぁ」
市原は1人だけ取り残されていた。市原は1人とぼとぼと席に着く。
「あーー、もう疲れた」
陽斗達はやっと解放され、市原が1人で座っていた席の周りに座る。
「くそぉ、お前らぁ、許さねぇ。俺に恥をかかせやがって······」
と市原は1人でぼそぼそ呟いていた。凄く負のオーラーを纏っている。
「アハハ、俺の時代が来たぁ!」
高柳は凄い嬉しそうに笑っている。
「いや、それお金目当てでしょ」
西島が優雅にカレーを食べながら突っ込む。
「え!? そうなのか!?」
「そうだと思う」
「そうだろ、自意識過剰野郎」
陽斗と市原の2人もうんうんと頷く。
「嘘だと言ってくれーー!」
高柳は机に伏せって嘆き出した。
「おおおお、唐揚げサクサクだぁ~。美味しい~」
陽斗は初めての学食の唐揚げに感動していた。
「俺のトンカツも1つあげるよ」
「ハンバーグ一口あげたる!」
「カレー居る?」
美味しそうに食べる陽斗についあげたくなる3人。喜んでいる子供についつい甘くなる大人のようである。
「わぁー! ありがとう!」
陽斗は嬉しそうに貰うのだった。
「おい、今宮。デザートでパフェがあるぞ!」
「え!? うそ! デザートまであるの!?」
高柳の声に目を輝かせる陽斗。
「おお、日替わりデザートがあるんだよ」
市原が丁寧に教える。
「そうなんだ! 食べるー!」
高柳と陽斗はルンルンでパフェを買いに行く。
「おおおおー! 凄い! チョコアイスに生クリームに苺!」
陽斗はチョコレートパフェを凄く嬉しそうに食べる。
学食でパフェを食べれるとは思わなかった!
高柳はフルーツパフェを食べていた。
「くそお、俺は何で金欠なんだ······」
市原は羨ましそうに2つのパフェを見る。
「しょうがないなあ、俺様が一口やろうじゃないの!」
高柳がドヤ顔で市原にパフェを差し出す。
「おお、高柳様! ありがとうございます!」
市原は高柳のパフェから大きな一口をとる。
「待て! 一口でかすぎだろ! あ、バカ! もう食べんな!」
まだ食べようとする市原を高柳が必死に止め、取っ組み合いとなる。
陽斗は初めての学食で色んな種類の食べ物を食べれ、さらにデザートとも食べれて満足であった。
取っ組み合う2人を無視して、優雅に1人でパフェを食べながら、また近々行こうと決心したのであった。
読んで下さり、ありがとうございます!
私の高校には学食なかったから憧れです(✧_✧)
それと、ついに『芸能人、やめました。』を掲載し始めてちょうど1ヶ月が経ちました。読んでくださる皆様、本当にありがとうございます! これからもどうぞよろしくお願いします\( ˆoˆ )/




