27,打ち上げ
長くなりました( ՞ټ՞)
投稿してすぐ改稿致しました! 内容が少し変わっております!
「ウィンターカップお疲れ! 俺達は初出場にして準々決勝まで勝ち進んだ! これも新エース今宮のおかげだ! 今宮を称えて、かんぱーーい!」
「「「「かんぱーーい!」」」」
「え、ちょ、か、かんぱい!」
1つ遅れて声がしたが、皆は気にせずコップの音を鳴らす。
成宮高校バスケ部はウィンターカップのお祝いとお疲れを兼ねて、川田家が経営する飲食店で打ち上げ真っ只中である。
陽斗は部活で食事だなんて初めてなので、凄くワクワクしていた。青春だし!
「キャプテンの家がレストランって意外ですね!」
「それよく言われる。まあ、今日は存分に食べろ! 保護者様の奢りだ!」
「おおおお!」
「おっしゃー! 食うぞー!」
「ありがたやー!」
部員達は食事にがっつき、続々と注文する。
うわお、運動部すごいな。なんというか、勢いがすごい。男まさりだ。
陽斗はあまりの野生児のような有様に驚く。
だけど、部活でこういうの初めてだから最高! こんなのまさに青春じゃん! 俺もめっちゃ食べてやる!
陽斗も負けじと食べ漁る。
「川田家の食事美味しいから、皆遠慮したら駄目だよ!」
先輩のマネージャーの葵が部員の食べ様に笑いながら呼びかける。
「葵は小さい時からここで食べてるよな」
川田が懐かしむ。
「そうだね。私、ここの料理大好きだから! 将来はここで働きたい」
「あはは、それじゃあ料理教えてあげないとだな」
2人はお互い微笑み合う。まるで夫婦のようだ。
「くそう、羨ましい」
「もう結婚前提かよ」
部員達は桃色空間を作っている2人に羨望の目を向ける。
「よく俺達、ウィンターカップでベスト8までいったよな」
「それな! 全国で強い8校に入ってるんだぜ!?」
「やばいよな! こんな日が来るなんて思わなかったぜ」
2年の先輩達が涙ぐみながら語る。
「いや、お前ら試合に出てないだろ」
キャプテンの川田が感動している人達に突っ込む。
「ムッ! なんだその言い方は! 観客席にいましたけども!」
「偉そうに! 全国のムードに飲み込まれていたくせに! 俺はベンチだけども!」
「そうだよ! スリーポイントシュート52本中20本しか決めていなかったくせに! 俺はアップしたのに結局出なかったけども!」
「な、何で数えてんだよ!」
川田が少し焦ったようになる。
「まあ、キャプテン! 俺がリバウンドしましたから!」
市原が胸を張り、ドヤ顔をする。とても活躍しましたよと言わんばかりだ。
「ああ、すごい助かった」
川田は感謝する。
実際、チームの中で市原がリバウンドを得意としている。試合でもいい活躍をしていた。
「星野に負けていたけどな」
「それな、しかも転んでなかった?」
先輩達がこそこそと呟く。
「いや、あれと比べたらダメっすよ!」
市原は先輩にしょうがないとばかりに反論する。
「というか、1番活躍したといえば今宮くんだよね」
西島が優雅にローストビーフを食べながら言う。
「それな! 星野に負けてなかったよな!」
「お前にはまじ感謝しかない!」
「俺らのMVPだぜ!」
みんなが酔ったおっちゃんのようなノリで、陽斗の背中をバンバンと叩いたり、頭をくしゃくしゃとしたりする。
「ちょっとやめてくださいよー」
陽斗は困る。毎回こんな風にされる俺の身にもなってほしい。
「んじゃー、そんなお前に俺からコロッケを差し上げよう!」
「あ! じゃあ俺からはピッザ!」
「そんなら俺は唐揚げを!」
先輩や同級生が陽斗のお皿にどんどん食べ物をのせる。
「いや、もういいです!」
陽斗は叫ぶ。既に陽斗の前には10皿の料理がずらりと並んでいた。こんなに食べられないんだけど!
「遠慮すんなよ!」
皆は手を止めてくれない。
勘弁して! もうお腹いっぱいだってば!
結局、陽斗の前には色んな食べ物が乗ったお皿が合計15皿が並んだ。陽斗は残すのも悪いので、頑張って食べる。
「そういや、今宮の顔ちゃんと見たことないな」
先輩の1人が陽斗の顔をマジマジと見ながら呟く。
「確かに。今宮前髪長いし眼鏡もかけてるからよく顔分からないよな」
他の先輩も陽斗の顔をまじまじも見てくる。
「か、髪の毛切るのめんどくさいし、コンタクト高いじゃないですか」
陽斗は誤魔化して苦笑いをする。
そんな近くで見られるとバレるかもしれないから止めて、と心の中で祈る。
しかし、事態は悪い方向へと進む。
「せっかくだからさ、今宮くんよ、顔をさらけ出そう!」
それを聞いていた市原がニヤニヤしながら近寄ってくる。
これは無理やりにでも外して来そうだ!
陽斗はそう察してその場から逃げる。
「あ! 逃げんじゃねえ!」
市原が陽斗を追いかける。何故か先輩まで加わっている。
やばい! 眼鏡外されたらバレる!
陽斗は必死に逃げる。椅子を飛び越えたり、追いかけてくる人達の一瞬の隙をついて抜けたり。
「ちょ、ちょこまかと!」
「俺達、友達じゃないか!」
「友達なら追いかけないで!」
皆は中々諦めてくれない。
何でそんなに俺の顔見たいんだよ!
陽斗はウィンターカップの疲れもあって、もう体力が限界のため最終手段に出る事にした。
「林さん! 助けて!」
陽斗は成美の後ろに隠れる。
「え、今宮くん!?」
「おい! 女子の後ろに隠れるなんて卑怯だ!」
「男が情けないぞ!」
皆が口々に言ってくるがそんなの構わない。正体がばれれば自分の青春は崩れ落ちてしまう。それだけは死守せねば!
「成美さん! 今追いかけられてるんだ! 助けて!」
陽斗は必死の顔で成美に助けを求める。
「分かった! 私、いつも今宮くんに助けられてるから、今日は私が守るね!」
成美は覚悟を決めた顔をして、陽斗の前に立ち、守るように両手を横に広げる。
か、可愛い! 俺を守ってくれている! リスが大型犬を守ってくれているような、そんな感じだ!
「ちょ、林、申し訳ないががそこをどいて下さい!」
「嫌!」
「成美ちゃん、別に意地悪とかじゃないんだよ」
「駄目です!」
「ちょっと眼鏡を外して髪を上げてもらいたいだけなんだ!」
「え、そうなんですか?」
「ああ! 気にならない?」
「気になりますけど······、でも、無理矢理はいけません!」
アイドル的存在である成美に拒否られて、男達はダメージを受け、よろよろと席に戻る。
す、すごい! 巨人の男達をを追い払った!
「林さん、ごめんね、ありがとう! また貸しが出来てしまった」
陽斗は両手を顔の前で合わせて謝る。
「いやいや、大丈夫だよ! 今宮くんにはいつも世話になっているから!」
成美もなかなか全力で断る。
「林さんはウィンターカップの時、色々してくれたし! お礼がしたい!」
「今宮くんこそ凄い活躍だったよ! それにね、何でもかんでも奢りってなるのは、お金を使わせてしまうから申し訳ないの」
成美は顔を少し俯かせる。
陽斗はハッとした。良かれと思っていた事は、逆に気を使わせてしまっていたらしい。
「ごめん! 押し付けてばかりだった!」
「いいよ、今宮くんは優しいから。その代わり、今宮くんのバスケを見ていていたい」
「え? どういう事?」
「私、小学校から中学校までバスケをしていたの。でも怪我して出来なくなっちゃって。バスケを恨んだこともあったの。でもね、今宮くんのバスケを見ていて圧倒された。バスケは楽しいものなんだって改めて知った。それに、今宮くんみたいにバスケを魅せれる人、いないと思うの」
成美は真っ直ぐ陽斗を見る。本心でそう言ってくれている。
俺のバスケを見てそう思ってくれている人がいる。凄く嬉しい。
バスケを続けてきて良かったと思った。
陽斗はバスケを教えてくれた、あの大っ嫌いな人を今は許せる気持ちになった。
「分かった。俺はバスケを続ける。将来は細々とやることになると思うけど、それでもいいかな」
「うん、バスケをする時は呼んでね」
2人は微笑み合う。
「なあ、桃色空間が出来てんだけど」
「なに!? あいつだけいい思いしやがって!」
「ああ、懲らしめる必要があるようだ」
成美に追い払われた男達が再び陽斗を襲う。
何やかんやで、楽しい楽しい打ち上げは終わりを告げる。
陽斗は何とか成美のおかげで顔を死守することが出来たのだった。
食費はなんと10万越え。男の成長期は末恐ろしい。
保護者達は少しばかり後悔するのであった。
読んで下さり、ありがとうございます(๑´ㅂ`๑)




